第8話:水葵の正体は?・3
リビングへと移動した後、水葵の要望に答え疾風は、電話の子機を手に取り教えられた番号を押すと水葵に子機を手渡す。
雪は、人数分のお茶を用意すると黙ってそれぞれの前に置いて行く。晶は礼を言うとお茶を飲みつつ、水葵の反応を窺っている。そして、まだ水葵の正体が分からないせいか、薫や涯は姿を消していた。
「…………駄目だわ。疾風、ありがとう」
相手が出ないのか、小さく水葵は溜息をついた。
「大丈夫か?」
疾風が気遣うと水葵は、コクリと頷いた。
「水葵さん、そろそろ話して頂けますか?」
「分かりました。皆さんは、もうお分かりかと思いますが私は水鏡の一族の者です」
「やはりそうでしたか。それで貴女は、どういった立場の人間なのですか? 見たところ能力は持っていない無能力者のようですが」
「無能力というわけではありません」
水葵の答えに晶は、首を捻る。
能力を持つ自分達から見れば彼女の力が無いのは一目瞭然というものだ。それなのに水葵は、自分を無能力者ではないと言う。
そんな晶達の反応に水葵は、苦笑しつつ答えた。
「ある事情で私の能力は、全て封じられているのです」
「だから、襲撃者に対して抵抗出来なかったのか」
「それもあるけれど、私は実戦的に能力を使用した事もそれを前提として修業したこともないから、封じがなくても抵抗出来たかは分からない」
「確かに盲目である貴女に、実戦は難しいでしょう。なら、何故彼らは貴女を襲ったか分かりますか?」
晶のストレートな質問に答えることに水葵は迷ったのか、言葉を濁してしまう。多分、自分達を全面的に信用していいか、迷っているのだろう。
それに水葵が、水鏡の一族ならつまりこれは、一族内の内紛ということになる。それを他の一族の人間に悟られるということは、自分達の弱みを曝してしまうということ。迷うのも当然のことだった。
しかし、覚悟を決めたのか水葵は、口を開いた。
「彼等は、跡継ぎである私を排して違う人間をその座に就かせたいのです」