第7話:水葵の正体は?・2
「水葵! 大丈夫か?」
部屋に入るなり疾風は、水葵の側に駆け寄る。すると所在なさ気にベッドに腰かけていた水葵がその声に反応してか、俯かせていた顔を上げ視線を彷徨わせた。
「俺は、ここだ」
そう言って疾風がそっと水葵の手を握ると戸惑いつつも、その手を強く握り返してきた。この場で唯一の知り合いである疾風が来たせいか強張った水葵の体から力が抜けたのが目に見えて分かる。
どうやら、かなり緊張していたらしい。
そんな様子を見た疾風は、水葵の不安を少しでも解消しようと説明を始める。
「ここは、俺と妹が住んでる部屋。水葵の手当をしたのは、妹」
「妹の雪です。よろしくね?」
反対の手を優しく握ると、水葵は頭を下げた。
「ありがとうございます」
「怪我が軽くて何よりでした」
新たに聞こえた声に水葵は、首を傾げる。
「俺の幼馴染で晶。同じマンションに住んでるんだ」
「今回は、疾風がご迷惑をかけたようですみません」
その言葉に水葵は、強く首を振り晶の言葉を否定した。
「いえ迷惑をかけたのは、私のほうだと思います」
「いや、もっと上手くやんなきゃいけなかったんだ。俺が未熟だから、水葵に怪我までさせて…………」
唇を強く噛み、固い声で自嘲する疾風に水葵は笑った。
「そんなことない。多分、疾風がいなきゃ私は死んでいたもの。ありがとう、疾風」
「その事でお聞きしたいことがいくつかあるのですが」
「ごめんなさい。家の事情とだけしか今は言えません」
「何やら事情があるみたいですね。それならせめて貴女のお連れの妹さんの連絡先だけでも教えてもらえませんか?」
「?」
晶の言葉に困惑の表情を浮かべる水葵を見て、疾風は慌てて説明する。
「流衣さんに電話をしたんだけど、何か向こうでもあったらしくて自分じゃなくて妹さんに連絡して欲しいって頼まれたんだ。でも、連絡先を聞く前に……」
「連絡が途切れてしまったのね?」
「あっ、ああ」
水葵は、それまでとは一転して厳しい顔をすると黙りこむ。
数十秒の沈黙の後、水葵は何かを決意したように厳しい声で言った。
「電話を貸して頂けますか? その結果によっては天牙衆である貴方方に全てをお話しなければなりません」