第2話:悩み
天牙衆としての初任務から二ヵ月。
疾風、晶、雪の面々は、日々任務に追われていた。
「痛ってー」
「疾風、動かないで」
任務を終え、疾風達は本部との引き継ぎを済ますと自宅へと戻った。そして戻るなり、雪は疾風と晶の傷の手当を行う。
「はい、これで終わり」
最後の個所に絆創膏を貼ると雪は、まじまじと疾風を見つめる。
「何だよ。何、じろじろ見てんだよ」
「日に日に傷が増えていくなって」
「まぁ、仕方ねぇよ」
疾風は、何でもないように言うが体のいたるところに絆創膏や包帯をつけている姿は見ていてかなり痛々しい。
「すみません。僕の力での攻撃は街中では難しいですから、疾風に負担をかけてしまって」
晶が暗い顔で心底申し訳なさそうな顔をするのを見て、疾風と雪はそれぞれ頭を振る。
「晶は悪くねぇよ。悪いのは俺だよ」
「そうだよ、晶君のサポートがなきゃもっとひどいことになっているもの」
そんな二人の言葉に晶は更に落ち込んで行く。
(まずい、ますます落ち込んでる)
疾風はそんな気まずい雰囲気をどうにかしようと雪にめくばせをする。その意図を双子のかんで悟った雪は、若干わざとらしく大きな声を上げる。
「そうだ! 本部からの帰りにね、おいしそうなお菓子を買ってきたの。皆で食べましょう? お茶をいれるから、疾風達は、薫さん達を呼んで?」
「ああ。薫!」
「………涯!」
疾風達がそれぞれ名を呼ぶと二人の青年が姿を表す。
「おう、呼んだか」
「…………」
そう言って現れたのは、長身の男達。愛想よく笑って現れたのは、青嵐の一族に伝わる宝剣・嵐に宿る精霊・薫。
そして無言で現れたのが、地涯の一族に伝わる宝剣・不動に宿る精霊・涯。どちらも疾風達より頭一つ分は高い長身で、薫は背の半ばまである薄茶色の髪を束ねた緑の瞳を持つ男。そして涯は、浅黒い肌の黒髪短髪でその瞳の色は琥珀色。普段は着物を着ているがこちらに来る時は、二人ともジーンズ姿だ。
「雪がお茶しようだってさ」
「そうか」
「…………どうした、晶?」
己の主である晶を見て、無口な涯も口を開く。
「いえ、自分の無力さに腹が立つだけです」
落ち込む晶と疾風達の様子を見て、その理由をさっした薫は苦笑する。
「気にするな、晶。本来なら任務はそれぞれの一族の者がチームとなって行うものだ。青嵐と地涯だけじゃバランスが悪すぎるんだ、お前らの場合、あとは最低でも水鏡の者が一人でも入らないとな」
薫の説明に涯も頷く。
「…………お前達はよくやっている。あせるな」
「はい」
二人のおかげで晶の顔にひかえめながらも笑みがよみがえる。それを見て疾風と雪は安心した。
「さぁ、お茶がはいったわ。一息いれましょう」
「おっ、うまそうじゃん。なぁ、晶?」
「はい。ありがとう、雪」
晶の力で攻撃の術を使うとまず確実に周囲の建物に被害がおよびます。
何せ扱うのが地精ですから。
大地震再び?になりかねないので、攻撃は自粛中。