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第29話:期待と不安

 椿から聞いた流衣の居場所は、近所にある警察病院だった。ローズからの報告では、都内で起きた爆発事故に巻き込まれたらしい。本来なら民間の病院に入院するはずだったが、事故による記憶喪失で身元が分からず、警察病院での保護ということになったようだ。


 電話を終えた疾風は、水葵を連れて早速病院まで来た。何故2人だけかと言うと、晶が爆発事故について調べると言い出した為である。事故として処理されているが、一族が関わっているに違いないと晶は睨んでいて、そこから水葵を狙っている奴らを調べられればベストだと考えているのだ。


 「ここにいるのね」

 「あぁ。でも、記憶がないらしいから」


 流衣が発見されたという報を受けてからの水葵は、目に見えて活力を取り戻したように思える。だが、あまり期待できるとは思えないというのが疾風の本音だ。


 「もちろん、分かっているわ。正直、会ってみないことには分からない。だけど、安否だけでも確認出来ればこれから取る道がある程度見えるはずだから」


 これまでにない彼女の意思の強さを秘めた声音に疾風は、安堵する。これなら、流衣と相対して取り乱すことはないだろうと。


 「じゃあ、行くか」

 「はい」


 疾風と水葵は、病院の中へ足を踏み入れるとそのまま受付へと向かった。彼らは、探し人が見つかった事で、知らず知らずのうちに気分が高揚していた。そのせいで、気がつかなかった。自分達を物影から覗き監視している人間の存在に。


 一方、マンションに残っていた晶と雪は、それぞれの一族の情報網を使用して事故について調べていた。

 新聞やニュースでも報道されていたせいか、事故の詳細についても段々と分かってきている。


 「廃ビルの漏電が原因による火災が爆発を招いた事故か。雪、そちらはどうです?」

 「ほとんど同じ。でも、これって…………」

 「雪も気が付きましたか?」

 「うん。これって一族が良く使うもみ消し手段と一緒だよね?」

 「そうです。この地は、焔の管轄ですからもみ消しを行ったとしたら椿さんですか」

 「うーん、椿さんが指示したならすぐに流衣さんの居場所は、分かったはずだけど」


 雪の指摘に晶も同意見だった。当主代理である彼女が指示したのなら、すぐにでも気が付いたはずだ。事故に巻き込まれた女性が流衣である可能性に。


 「まぁ、全ての決済を彼女一人で行っているわけではないですからね。下からの報告がまだ彼女の元に届いていない可能性もありますし」

 「そうよね。それにこれが水葵を狙ったものだとしたらもみ消しを行ったのは、焔じゃないだろうし」

 「だとしたら、水鏡の支部にも探りを入れたほうが早いかもしれません」

 「それだったら、うちの支部の人間に探りを入れさせるわ」

 「いいんですか? もしばれたら面倒な事になりますよ」

 「この程度の事も行えない人間はうちにはいないわよ。もしいたとしたら。ね?」


 にっこりと微笑む雪を見て晶は、それ以上言葉を重ねるのは止める。そして、思った。さすがあの青嵐の奥方の娘だと。

 どうやら支部の惨状に腹を立てているのは、疾風だけではないらしい。もし、この任務に失敗したら、支部の人間はどうなってしまうのだろうかと部外者ながら晶は、心配になってくるのだった。


 

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