第27話:待ち望んだ電話
「僕達が考えているより、ここの治安は悪いみたいですね」
「うん。まさか、誘拐が日常茶飯事だとは思ってもみなかったわ」
「藤田さんの助言通りに近所の警察署にでも届けを出しておいたほうがいいか。早めに水葵の力を取り戻しておいたほうがよさそうだし」
「明日にでも行ってくるわ。その前に情報屋さんからの報告があればいいけど、そう簡単に事は進まないだろうから」
警察から帰ってきた雪達と共に疾風らは、マンション内にある打ち合わせ用のスペースに来ていた。ここには、一族の支部と繋がっている情報探索用のパソコンが設置されているのだ。
「結局、あの情報屋からの報告待ちかよ」
「本当に疾風と相性が悪いのね、その情報屋のオーナーって」
会話に情報屋がからんでくると苛立つ兄を見て雪は、めずらしいこともあるものだと苦笑する。晶も、諌めるのは諦めたようで肩をすくめた。水葵も最初は戸惑っていたが今では慣れたようで雪と同じように苦笑している。
「椿さんからも連絡ねぇから、まだなんじゃねぇ?」
「そうだと困るんですけどね、こっちは」
ーーーーピピピピピピピ。
突然鳴りだした携帯の着信音に疾風達は、自分達の携帯を取りだし確かめる。鳴っていたのは、疾風の携帯で相手は椿のようだった。
「もしもし、椿さん?」
「はい。ローズから連絡がありました。とりあえず、流衣さんの安否が分かったと」
「本当ですか? おい、流衣さんの安否が分かったって!」
椿からの一報に晶達は、声を上げて喜ぶ。雪と水葵は、手を取り合ってはしゃぎ、晶はそんな2人を見てホッとした顔をしている。
「あの、疾風さん」
「?」
「流衣さんを発見できたのは、とても喜ばしいのですが1つ、残念なお知らせが」
「まさか?」
椿の言いように嫌な予感がした疾風だったが、それを察知した椿がそれを否定する。
「いいえ、いくつか骨にヒビがあったそうですが今はお元気です。しかし……」
「しかし?」
「頭を強く打たれたせいで、記憶を失っておられます」
「え?」
「ですので、水葵様のお力を解放する術も覚えておられません」
「………うわっ、まじかよ…………」