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第25話:訪問

 「事件かぁ。…………そうだ! 警察に相談するのはどうだ?」

 「警察に? えぇ〜、でもそれっていいのかしら?」

 「確かに。どうも一族と警察は犬猿の仲みたいですし。我々がお願いしたところでどうにかしてくれるとは思えない」


 疾風の提案に晶と雪は難色を示す。


 「俺らだって一般市民であることには変わらない。そんな俺達が捜索願いを出したところで何ら問題はないはず。何なら、水葵の名前で出せばいい。彼女がうちの一族の人間とはまだ知られてないだろうし」

 「そうね。警察なら都内で起こる事件を把握しているはずだろうし。だったら、私と水葵さんの二人行ってくるわ。疾風と晶君の顔は、そろそろあちらでも把握されてるしね」

 「だったら、この間の刑事さん達に相談したらどうだ? あの九重さんは、俺らと年齢が近そうだしさぁ。それに俺らを送ってくれた人は、いい人そうだったし」


 自分達を取り調べした女性刑事と送ってくれた人の良さそうな青年を思い出した雪は、「そうね」と相槌を打った。


 「もしかして、この間情報屋でお会いした方ですか?」

 「そうそう。すげぇよな、あの若さで刑事って」

 「若すぎる気もしますけどね。だけど、この土地ならありですか」


 この東京という特殊な社会環境を思うと少しでも能力があるものが治安を担うのは仕方ないことなのかもしれない。本来なら、一族が担わなければいけないのだがあいにく戦力をさく余裕がないのだ、情けないことだが。


 「じゃあ、明日にでも行ってみるわ。何か分かるといいけど」

 「とにかく、俺らで打てる手は打っておかないといけないな」

 「同感です」


 翌日、雪と水葵は警察署へと向かった。もちろん、二人だけでは不安なので涯が姿を隠して着いて来ている。

 建物内に入った雪は、辺りを見渡す。近くに受付らしきものはあるが人の姿は、無い。


 「確か、二階だったわよね。階段があるだけど、大丈夫?」

 「うん。手摺があるなら問題ないわ」

 「じゃあ、行きましょう」


 水葵を階段まで誘導すると、彼女の右手を手摺に置き、杖を預かる。そして反対側の手を自分の腕に掛けさせるとゆっくり階段を進んだ。

 すると、二階に着くと同時に廊下の奥から足音が聞こえて来る。それは、ヒールが床を打つ音に似ていた。


 「人が来るね。ちょうど良かった」


 しばらく二人で待っているとそこに現れたのは、妙齢の女性。


 「あら? めずらしい、お客様?」

 「あの、以前九重刑事と男性刑事にお世話になった者です。お二人にご相談があるんですが…………」


 その言葉を聞くなり女性は、じっと雪のことを見てきた。その視線と表情は、何かを思い出そうとしている時の感じに似ていた。しばらくすると、何か思い当ったのか「あぁ」と大きな声を上げた。


 「確か、あの一族のお嬢さんよね。一度だけ、うちに来た。それにしても、あの一族の方がうちに相談?」


 心底不思議そうな顔をする女性に雪は、苦笑いを浮かべながら説明する。


 「実は、この子の連れが行方不明になってしまって。それも、何か事件に巻き込まれたみたいなので、相談に乗ってい頂けないかと」


 自分の隣に立つ、水葵を紹介する。すると女性は、「こちらに、どうぞ」と言って二人を奥の部屋へと案内してくれたのだった。



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