第20話:喫茶店・ローズ
「ここが情報屋?」
椿から教えて貰った住所へと辿り着いた疾風達の目の前に建っているのは、一軒の喫茶店。見た目は、極普通の街中にある喫茶店。
店の扉の前には黒板があり、そこには本日のランチと書かれている。
「喫茶店、ローズ。間違いありませんね。表向きは喫茶店でその裏では情報屋ですか、まぁ堂々と情報屋なんて商売するわけありませんし」
「それもそうか…………。でもさぁ、だとしたらどうやって表の客と裏の客を見分けるんだろう?」
「相手は、プロです。見分けるくらい簡単でしょう。とにかく、ここに突っ立っていても仕方ないですし中に入りましょう」
「ああ」
扉を開けて中に入るとそこは、外見とは裏腹に重厚でシックな内装で若い自分達には場違いな雰囲気の店だった。
「いらっしゃいませ」
そう言って現れたのは、メイド服姿の店員。よくテレビや雑誌で見るようなミニスカートではなく、足首までのロング丈のワンピースの本職のメイドという感じの女性で店に入ってきた疾風達を愛想よく迎えてくれる。
「あっ、あの、俺達…………」
「いらっしゃいませ。オーナーは、只今他のお客様と商談中ですので、こちらの喫茶スペースでお待ち下さい」
疾風が用件を切り出そうとした瞬間、女性はその言葉を遮ると疾風達をテーブルへと案内する。
「何になさいますか?」
そして席に着いたとたんメニューを手渡された。メニューの中身をさっと目を通すとその金額に思わず引く。若い自分達には、あまり馴染みのない値段設定の数々。仕方がないのでとりあえず、一番無難な物を選ぶことにする。
「コーヒーを2つお願いします」
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
そう言い残して女性は、店の奥へと消えて行く。その後姿を目で追いながら、疾風は思わず首を捻る。
自分達が何かを言い出す前にあの女性は、すぐに情報屋としての客だということを判断している。そんな事が可能なのだろうか。
「なぁ、晶。どういう事だろう?」
自分と同じように女性の一連の行動を注視していた晶に話を振る。
「さぁ?としか言いようがないです。僕達の場合は、椿さんから話が言っているから事前に調べていた。ですかね」
「そうだよな…………」
果たしてこんな不思議な店のオーナーとは一体どういう人物なのか、少々不安に駆られる疾風だった。