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第19話:弱さ

 「残るのは、失望…………。何でだ?」


 凛の言葉に納得がいかない疾風は、持っていたグラスを強く握りしめる。

 仲間を助けたい、そう思い行動することの何がいけないのか分からない。


 「疾風! グラスが割れます」


 その言葉にハッとした疾風は、手の力を緩める。そして、グラスが割れていないか調べると、慎重にテーブルに置く。晶の素早い指摘のおかげで割らずにすんだようだ。


 「確かに彼女の言葉に一理あります。それに僕の目にも彼女は危うく映ります」

 「それは、目が見えないからじゃないのか」


 健康な自分達とは違い、生まれながらにしてハンデを持った水葵。その上、あの気性では、自分達が手をかさなければと思うのが普通だ。


 「僕が言っている危うさは、身体的なことではありません。一族の中にはその血の濃さ故にハンデを持って生まれる人間はたくさんいます。それでも彼等は彼等なりに自分で出来る事をし、自立している。一族だって、彼等を強くバックアップしています。だから、盲目とは言え、彼女が総領として役目を背負い生きていくのに問題はない。しかし、彼女は危うすぎます。もし、このままなら凛の言った通りの未来が訪れる。だから、彼女は変わらなければいけない」


 そう、彼女は甘えている。自分の今の環境に。


 「誰だって弱さを持ってるのが普通だ」


 視線を床に落とし、疾風はポツリと呟く。

 何も彼女ばかりが弱い訳じゃない。

 膝に置いた右手がかすかに震えるのを見て疾風はそう思った。

 そんな疾風の葛藤を感じとったのか、更に晶は続ける。


 「何も弱さを否定してる訳じゃありません。ただ、僕達は総領と呼ばれる立場に生まれました。そんな僕達には責任があります。一族の者を守り導くという責任が。それを果たすのに一番必要なものが何か疾風なら分かるでしょう?」

 「何時いかなる場合でも、自らが率先して動くこと。そして、自らの中に迷いがあったとしても決してその迷いを悟られないこと。その言葉と行動に責任を持つこと…………」


 疾風の口からは、すらすらとそれらの言葉が出てくる。この言葉は、総領としての教育を受け始めた時から、言い聞かされてきたこと。


 「だから、水葵さんは自らの行動で示さなければいけないんです。自分が彼等を率いる総領だということを。その為にもまずは、彼女の力の封印を解くことを考えましょう。そして彼女が行動を起こす時に助けが必要と言うなら最低限のバックアップをしてあげればいいんです。僕達は同じ天牙衆の人間なのだから」

 「………………分かった」

 「じゃあ、まずは情報屋です、と言いたいところですが、その前に腹ごしらえをしますか?」

 「そうだな。凛のおかげで飯を食いそびれるとこだったぜ」


 晶の提案に疾風は、頷くと立ち上がり店のカウンターへと向かった。


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