第15話:白の領域・2
少し間が空きましたが何とか更新出来ました。
しかし、携帯で読むには文字数が多過ぎたかもしれません。
ごめんなさい。
「ふざけるな! お前は今の状況が分かっているのか? 一族は腐敗しその責を負うのは若い疾風達だ。その上闇珠の件もある。せめて焔だけでも立て直すべきだろう」
「小姫には小姫の事情がある。それにそれこそ若い小姫に全ての責を負えと言っているだけだろう。そんな身勝手な事を言える立場にはないぞ、私もお前も」
「十年前の一件は光輝の暴走だろう。それを止める責任はお前と光輝の当主だ」
薫の叱責に光炎は、軽く俯き拳を強く握りしめ、感情を一切排した声で返す。
「そうだ、あの件は私の失態だ。だが、言わせてもらえばお前達にも責任はある。当主が亡くなり、焔への制裁が加えられるまでの僅かな時間にお前達は何をしていた? あの状況でまだ子供の聖が全ての決定権を持っていないことなど、誰にでも分かる。しかし、青嵐や地涯、それに水鏡の当主達は何をしていた? ただ傍観していただけだろう、次に起きる覇権争いを見こしてな」
「他の一族の内政に干渉する権利など我等に派生するはずない。ああいう時だからこそ、自分達の一族を纏めることに力を注ぐのが当主の責務だ。それに正式な契約者のいない俺や涯がこちらに来ることがないことぐらい知っているはずだ。緊急事態が起きているなら俺達に教えるくらい出来なかったのか?」
「それについては謝罪する。十年前の混乱の中、華炎達から要請があったのだ。何も話すなと」
「仲間である俺達にもか?」
光炎が黙って首を縦に振るのを見て薫は、苦虫を潰したような顔をしながら自分の頭をかく。
「分かった、小姫の一件はとりあえず後だ。実はまたやっかいな事が起きた」
「あぁ、水鏡の姫を拾ったらしいな」
「知っていたのか?」
「もちろん。水鏡のお家騒動は仕組まれたものだろう、彼等に」
「彼等?」
光炎の意味深な言葉に薫は眉をひそめる。
(もしかしたら、今回の件は単なるお家騒動ではなくもっと大きなものが裏に隠されているのかもしれない)
そんな事を考えつつも薫は、顎をしゃくり無言で続きを光炎に促した。
「ああ、十年前の一件も裏には彼等が居たはずだ。扉を開き全てを無に帰そうとうする一派だ。前当主夫妻が殺害されたのは自分達の動きに気づいた二人の口を封じる為」
そのあまりに予想の反中を超えた光炎の言葉に薫は瞠目し、言葉を失う。それでも薫は動揺する心を必死に抑えつけると絞り出すようにして何とか言葉を返した。
「そんな者がいるのか?」
「いる。そしてその首謀者は、一族の幹部にいるはず。聖も探ってはいるようだが、成果は上がっていない。そしてかなりの能力者達がそれに参加している。異界に干渉してくる程の力の持ち主達がな」
「今の疾風達にそいつらを止めることなど出来ないぞ」
「分かっているさ。だからこそ、表の天牙衆の仕事をお前達に任せて、我等は裏で動いているんだ。残念なことに成果は上がってはいないが」
肩をすくめ、どこか疲れた様な顔を見せる光炎を見て薫は、反省する。いくら、正式な契約者がいなかったとは言え自分達は外の事に無関心すぎた。
「すまなかったな。お前達ばかりに負担をかけてしまって」
突然の薫の謝罪の弁に光炎は苦笑する。薫が意外にこういう事を気にする性格だということを忘れていた。それに薫達は悪くない、隠していた自分達が悪いのだ。
「気にするな。始めは光輝の内輪の事だと思っていたから話さなかっただけだ。だが、彼等の影は次第に大きくなり扉の一族全体を覆い始めた。その影を祓う為にも彼等を探しださなければならない」
「そういう事なら協力するぞ」
「いや、今の状況で若い彼等に話すのは危険だ、誰が敵かも分からない現状では。何も知らないほうが彼等の安全を守れる上にこちらが動くのに都合がいい。時期が来たのなら全て話そう。それまでは内密に頼みたい」
「分かった。とりあえずは、水鏡のお家騒動を鎮めるしかないな。まぁ、幸い彼女は契約者だからそう難しいことはないだろう」
「…………そう簡単にいけばいいが、今のあの姫では駄目かもしれない。彼女は優しくあまりに清い心を持っている、そしてその心が問題でもある。普通の立場の娘であれば問題はないが、総領という立場の彼女には今一つ足りない物がある」
その言葉が意味することを薫は察して溜息をつく。
「確かに今のあの娘では無理だな。だが、今回の件を乗り越えれば化けるかもしれない」
「そう願いたい」