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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

ずっと続かない非日常

作者: 蔵餅

 ずっと夢だと思っていた

 他の人は理解してくれないんだから、自分がおかしいんだと思っていた

 だって私には、幽霊が見えているのだから―――――




 品川(しながわ) (まい)

 14歳

 今、私は年間最大行事、修学旅行に来ていた

 ···まあ、私は嫌われものなので、宿泊先の近くにある森で一人、顔にある傷を撫でながら、歩いていた

 嫌われものになったのはこの体質(と顔の傷)のせい

 私は小さい頃から、なぜか幽霊が見えるようになっていたのだ




 見えるようになったのは確か4~5歳ぐらいだった気がする

 私が幼かった頃、家族4人でハイキングに行くことになった

 そこで私は、“彼”と出会った

 いや、出会ってしまった

 山に上っている途中、同じくらいの年頃の男の子が目の前に現れ、「おいでおいで」と手を振ってきた

 私はそれについていってしまい、家族は慌てたという

 それは家族にも見えていたらしいので、幽霊ではなかったらしい

 結局私は彼についていってしまったらしい

 そこから先はあまり覚えてはいないが、その後、警察の人に救出され、何故か顔に大きな傷ができ、幽霊が見えるようになっていた

 家族の話によると、警察を出動させて、私を捜索していたらしい

 ちなみに私が救出されたとき、あの男の子はいなかったらしい

 私は直ぐ様病院で検査され、異常なしと判断された

 検査されている間、ものすごい視線の雨を受けていたことは、医者にも黙っていた

 一応3日程、異常が発生するかもしれない可能性も考慮されて、入院することになった

 このとき、はじめて自分の顔を見た

 衝撃だっただろう

 自分の顔に、大きな傷、左眉の上辺りから左ほほまで、曲線を描くようにつけられた傷があったのだから

 面会できた母も、この傷を見るなりハンカチを目に当てて泣いていた

 父はこの顔を見たくなかったのか、単に忙しかったのか、一度も面会には来てくれなかった

 でも、入院期間を終え家に帰ったとき、大声で泣きながら息苦しくなるぐらい強く、そして優しくぎゅっと抱き締めてくれた

 その暖かさはいまでも覚えていた



 とまあ、そんなわけで私はそのときから幽霊が見えるようになった

 あとなぜだか知らないが、その時から瞳の色が白くなっていた

 入学当初は生徒指導の先生に目をつけられて困ったものだった

 生まれつきですって行っても信じてはくれなかったし

 「おっ、ここにいたのか。探したぞ。そろそろ集合時刻だから、遅れるなよ?」

 森のなかを歩いていると、息なり狭山(さやま)先生が現れた

 そうか、もう集合時刻か

 そうとあらば、急いで帰ろうとしたとき、

 『おかえり』

 どこかで聞いたことのある声が聞こえた

 その声に私は気づかなかったのだが·····




 遅刻ギリギリと言うところで、なんとか間に合わなかった

 宿舎に入ったときには、みんな整列していた

 「遅いぞ、お前」

 「···すいません」

 狭山(さやま)先生が呆れたように注意した

 その言葉に私は、軽く頭を下げ、反省した

 「次はないぞ?まったく····とりあえず列に並べ」

 「っ、はい」

 列の方から、クスクスと笑い声が聞こえる

 まあ、いつもどうり無視でいいだろう

 私は余り身長は高くないので、前の方に横入りし、座った

 先生たちは全員揃ったのを確認すると、学年主任である大滝(おおたき)先生が、説明を始めた

 「今から、この近くの山‘魔拉山(まらちさん)’に向かいます。軍手とジャージはちゃんと着用したままで登山するようにしましょう。では解散!」

 簡単な説明だけ済ませると、後は自由行動だった

 勿論、友達もいない私は一人行動、だと思っていたら、

 「あ、品川。ちょっと来てもらっていいか?」

 出ていこうと思ったら、狭山(さやま)先生に呼び止められてしまった

 「なんですか?楽しい楽しい山登りにいく予定なんですが」

 若干嫌みたらしくいってやった

 すると、

 「あ、あの、よろしくおねがいします!!!」

 新任の愛馬(あいば)先生が見事な90度のお辞儀を披露してくれた

 「どういうことですか?」

 「いやほら、一人で山登りするのは危険だろ?それにお前、小さい頃に山で遭難したって聞くし」

 狭山(さやま)先生に事情を聴くと嫌み返しのような台詞を言われた

 「お前ボッチだろ?可哀想だから先生と一緒に楽しんできな(笑)」

 心のなかでそう思われてるような気がした

 「えっと、じゃあ行きましょう!品川さん」

 「えっ!?ああ、はいわかりました。狭山(さやま)先生、あとで覚えておいてくださいね」

 すごい目で睨み付けると、

 「っお、おう」

 驚いたのか、ビビったのかおどついた返事が帰ってきた




 「あ、あの。大丈夫で、すか?やす、休みとか必要なら、いつ、いつでもいってくださ、下さいね」

 肩で息をして、疲れはてた表情で言ってきた

 「···」

 おかしいな

 この景色、どこかで見たことがあるような···

 「先生、少し休みましょうか」

 「え、ええ。そうですね」

 そこら辺にある岩に、愛馬(あいば)先生は腰掛け、ザックから小さい水筒を取り出していた

 その間舞は回りを見渡していた

 (あの石、あの川、やっぱりここを私は知っているんだ)

 しかしいつ知ったのだろうか

 彼女はそれを覚えていなかった

 すると、近くにいた一匹の霊が、愛馬先生に近づいていくのが見えた

 (水筒に興味でも示したのかな)

 霊は基本、人にも物にも干渉できない

 たまに、霊力が強く、それらに干渉できる霊がいるのだが、基本的に霊は人間に悪事は働かない

 あくまで、人間が勝手に決めつけているだけで、実際は悪霊などいないのだ

 悪霊と呼ばれる霊も、霊力が大きすぎて制御できず、意図せず人間に迷惑をかけてしまっているでけで、めちゃくちゃ優しいやつらばかりだ

 「ぷはー。さて、行きましょうか」

 水筒をザックにしまいつつ、愛馬先生は立ち上がっていた

 あの霊は、ザックの中に入り込んでいる

 それほど、水筒に興味を示したのだろう

 「はい、早く頂上を目指しましょう」

 そう言って山道を再び歩き出した



 

 二人が休憩している頃、舞と同じクラスの3人組の男子は山の中腹辺りを歩いていた

 「あーめんどくせーな、登山なんて」

 「お、この山降りたところにゲーセン有るらしいし、そこいくか?」

 「そうだな。よし、じゃあいくとしよーぜ」

 そう言って振り返ると、いつからいたのか小柄な少年が立っていた

 「···?どうした坊主、迷子か?」

 返事はなかった

 「どうする?この近くに教師の1人や2人いるとは思うけど」

 「取り敢えず、探して預かってもらうか」

 移動するため、手を繋いであげようとすると、振り払われ、

 「あなたたちの学校に品川 舞っていう生徒はいますか?」

 と聞かれた

 「えと、品川ならいるけど、あいつの知り合いか?」

 少年は何も言わず、コクンとうなずいた

 「ならここで待ってればその内会えるぞ」

 「そうなんですか、ありがとうございます」

 そういってお辞儀してきた

 「いや、別にいいって。それより、あいつにあってどうすんだ?」

 3人組のうちの一人が、興味本意で聞いてみると、少年はニヤリと笑って、

 「いえ、ちょっと貸してたものを返してもらいに来ただけです」

 と、説明してくれた

 「そうなのか、会えるといいな」

 「はい、ありがとうございました」

 そう言って3人組は下山し、少年は深い森の中へと消えていった




 

 山にはいってから何時間たっただろうか?

 どうやら、迷ったらしい

 「あ、先生気をつけて下さいね。ここ、苔があって滑りやすいですよ」

 「ああ、分かりまし、きゃ!」

 案の定先生はすっ転んだ

 しかもごつごつとした岩をバックにして

 「ちょっ」

 間一髪といったところで先生の手を握り、こっちへ引き寄せた

 危なかった

 あと少し遅れてたら大惨事になるところだった

 「すすすすいません!!!」

 またあの90度お辞儀が見られるとは思っていなかった

 「取り敢えず、ほんとに気をつけてくださいね?」 

 そう言うと、しょぼんとした様子で

 「はい....」

 と呟いた

 「さて、急ぎましょう。早くしないと晩までに宿舎に帰れませんよ?」

 「はい、分かりました。頑張りましょう!!」

 気合いも入ったところで、さっさと上りきってしまわないと

 「その前に、休憩にしましょうか」

 魂の抜けたような声が、舞の耳に届いた

   



 また先生はお茶を飲んで休んでいる

 その間に、霊と話でもしておこう

 見た目からして70代くらいだろうか

 「あの、すいません」

 『む?もしやお主、儂が見えるのか』

 「はい、ちょっと道を教えていただきたいのですが」

 『なあに、そんなのお安いご用だ。もしよければ案内してやるが』

 「ほんとうですか?ありがとうございます」

 『よいよい、それぐらい』

 霊との交渉をつけると、先生の休憩が終わるまで、周囲の探索をしたのだった




 「よし、じゃあ行きましょうか先生」

 「わかった」

 「よろしくお願いします」

 『うむ、分かったぞ』

 そう言ってもらうと、霊の言う通りの近道を進んでいった

 



 「ついたー!!」

 出発して2時間30分

 やっと頂上へと到着した

 「後は帰るだけですね」

 『おお、もう帰ってしまうのか。まあいい、もしまた会うことがあらんことをな』

 「はい、ここまでありがとうございました」

 お礼を言うと、霊はどこかへ飛んでいってしまった

 そして、さあ帰ろうと振り返った瞬間、

 「あ、舞ちゃん。久しぶり(····)

 見たことがない少年がいた

 「えっと、品川さんの知り合いですか?」

 「いえ、知りません」

 「知らないってひどいじゃないか舞ちゃん。さあ、返してもらうよ。僕の眼を」

 そう言った瞬間、辺りは闇に包まれた

 そして舞は思い出した

 彼の正体を

 「まさか、貴方は···」

 するとどこからか声が聞こえてきた

 「やっと思い出してくれたんだね。そうだよ、僕は···」

 そうきこえると、目の前にあの少年が現れた

 「神様さ」

 彼の名は魔拉山

 この山の神様だった




 なぜこの山が魔拉山と呼ばれているか

 それは、この山には魔が住んでいるとされているからだそうだ

 昔のあるとき

 大人数の失踪事件が起きたらしい

 その人物のすべてが、「山へ行ってくる」と言っていたらしい

 結局、警察が捜査しても、なんの証拠も出なかったらしい

 その結果、魔が人をさらい、食っていたのではないか

 そういう伝説が作られたかららしい

 実は私の時も、そう考えられていたらしい

 しかし、現実は違った

 実際は、神様が起こした神隠し(じけん)だった

 神様は人間を求めていた

 自分の存在を認識させるために

 だから人を拐いまくったのだろう

 そして彼は私も拐った

 自分をアピールする道具として




 「で、その神様がわたしになんのようですか?」

 「いっただろ?眼を返してもらいに来ただけさ」

 「眼っていったい·····」

 分からない

 眼とはなんなのだ

 「だからその眼だよその眼。その“霊現の瞳眼”を返してほしいんだって」

 「“霊現の、瞳眼”····っ!」

 思い出した

 いや、思い出したくなかった

 あの記憶は思い出したくはなかった




 暗闇の中で、少女は泣いていた

 「暗いよ···怖いよ···お父さん、お母さん、誰か助けて·····」

 どれだけ願っても、足が動くことも、腕が動くこともなかった

 そもそもの腕や足がなくなっていたのだから

 しかし不思議と痛くはなかった

 何故なら少女はそれを見ることができなかったからだ

 少女は、崖から滑り落ち、手を足を、そして、目をも失っていた

 気づかなかったからこそ、痛むを感じなかった

 その暗闇の中で、言葉が聞こえてきた

 「お前、助かりたいか?」

 どこか聞いたことのある声

 勿論、質問の意味を少女はわかっていなかった

 だから、

 「お父さんと、お母さんに、会いたいよぅ」

 そう、弱々しく叫んだ

 「···そうか。その願い、この俺、魔拉山が引き受けた」

 その声が聞こえると同時に、暖かい光に包まれている感覚がした

 「げ、目もやられてんのか。しょーがない、取り敢えずこれをもとにして、10年もたてば義眼も馴染んで元の目と同じものになるだろ」

 手術が終わった頃、舞は寝てしまっていた

 「おいおい。ま、俺のせいでもあるからな。まさか手を上下させる動作が「あっちにいけ」じゃなくて「こっちおいで」に解釈するとは···」 

 そう愚痴りながら、見た目5才児ぐらいの彼は、舞を抱いていた





 「全部思い出した、か」

 その言葉で、意識が現実へと戻ってきた

 「ええ、まさか私が貴方に助けられていたとはね。驚きだわ」

 「そうか。どちらにせよ、もう義眼は馴染んだだろ。さっさとそれ返せ」

 そういって片手を差し出してきた

 「その前に聞きたいこと聞いてもいい?」

 「いいが···」

 「何で、彼らを殺したの?」

 度直球で、疑問をぶつけてやった

 その質問に対し彼は、

 「そうだな、ただ一言助けたかったとしか言えないな」

 「?」

 頭の中でハテナがぐるぐると回っている

 「いったい、どういうこと?」

 聞いてみると、アッサリと

 「自殺したんだよ」

 といいはなった

 「じ、さつ!?」 

 「ああ、そうさ」

 「ならなんでわざわざ死体を隠したりなんか·····」

 そう言うと、悲しそうな表情で、

 「そいつの家族が、悲しむからな」

 「······」

 何も言えないかった

 その後も、沈黙が続いた




 「で、私はどうすればいいの?」

 「おう、その事か。別にお前はなにもしなくていいし、肩の力は抜いとけ」

 「わかった」

 そういうと、かおの傷を撫で始めた

 「ねぇ、この傷もあの時ついたものなの?」

 「そうだが、嫌なら消すことはできるぞ?」

 「いいよ、これが証拠になると思うし」

 「証拠?何のだよ」

 そう問うと舞はニカッっと笑って、

 「神様(あんた)がいた証拠に、ね?」

 「·····よし、準備終わったぞ」

 「あ、そういえば言うの忘れてた。ありがとね、私を助けてくれて」

 「なんだその事か別にあんなのただの気まぐれだ。それよりほら、ここにたつ!!」

 「はぁ~い」

 そういって、何かの記号?が集まった図形の上にたたされた

 「深く息を吸って、吐け」

 言われた通り、深呼吸を始めた

 「よし、ちょっと痛いけど我慢しろよ」

 そう言うと何やら呪文のようなものを唱え始めた

 すると急に右目に痛みが走った

 慌てて右目を押さえると、そこから血がポタポタと床の図形に垂れていた

 思わず吐きそうになるが、それも痛みに掻き消されていく

 すると今度は左目もいたくなってきた

 目の前が真っ暗になり、痛みが襲いかかり、発狂しそうになる

 それでも、呪文のようなものを唱え続ける彼の声を聞いていると、なぜか安心できた·····

 




 「大丈夫ですか?品川さん、品川さん?」

 揺すられる感覚と共に意識が覚醒した

 目の前にいるのは、愛馬先生か

 「あれ、私どうしたんでしたっけ」

 「帰ってる途中に歩いてたら急に倒れた(· · · · ·)んですよ。もー無理はダメだって行ったじゃないですか」 「あ、そうでしたね。すいません、私のせいで」

 「いえ、良いですよ。今日私は貴女に頼りっきりだったので、少しぐらい教師面させてください」

 その言葉を聞いて、二人で笑いあった

 その時、知らない男の子(ひと)が脳内に写し出された

 その瞬間、頭に強烈な痛みが走った 

 「くっ!?」

 「ちょっと、舞ちゃん!?だいじょうぶ?!」

 (貴方は、誰?)

 その思考を最後に、彼女はまた意識を失った





 目が覚めると、そこは病院だった

 どうやら私は、1ヵ月以上眠っていたらしい

 何だか前にもこんなことがあった気がする

 ずっとずーっと前に

 今回も起きたとき、劇的な変化があった

 霊が見えなかった

 何でだろう

 こんなこと一度もなかった

 そう言えば他に何か違和感があった

 そう思い鏡を見てみると、

 「治ってる····」

 なぜだかビックリ、顔の傷(証拠)が消え失せていた


 こうして、4才から続いた私しか知らない非日常は、なぜか突然幕を閉じたのだった

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