第八話 なくなった路
螺旋階段を降りて行くと熱センサーなのか、灯りが一斉に点いた。
「スゴイわね」
「ああ。魔法みたいだ」
「……科学よ」
完璧な人狼の姿になっているボンドも。
二本足で階段を降り進んで行く。
「もう戻っても大丈夫じゃやないの?」
リナがボンドに言う。
「馬鹿じゃねェのか? この姿の方が嗅覚が何倍もーー」
「私は動物アレルギーなの」
くっしゅん!
くっしゅうん!
「ぅ、んんん! あ゛ー~~‼」
リナが鼻を抑えながら。
低く唸り。
「戻りなさい! 戻れ‼」
その気迫にボンドも、元の姿に戻る他なく。
「分かったよ。ったく!」
ブツブツ、と漏らす。
しかし、そこで。
ようやく、階段の終わりが視えた。
「? やっと、階段が終わっーー……」
だが。
「った! ちょっとー急に止まらない……で、よ……」
急に立ち止まったボンドの背中に。
顔をぶつけたリナの目に映ったのは。
階段のすぐ前にあるーー巨大な穴。
その穴の先に。
通路があった。
「っこ、こんなーー罠が……」
「余程。見られたくない研究だったみたいだな」
「--そんな研究に。父さんも、母さんも手伝うはずがないわ!」
頬を膨らませながらリナが言う。
それを横目に、ボンドが目を宙に仰ぐ。
(まいったなーどうすりゃあ、いいんだよ~~)
この先には。
守りたいものがあるのは明らかだ。
そして。
元凶である鬼灯トント博士も居る。
だが。
行く術が分からない。
ジャリーー……。
「! 砂???」
足を動かすと。
階段の下には白い砂があった。
「なんで、砂なんかが?」
「やっぱり。この地下には何もないのよ! 二階を調べよう!」
「おい。馬鹿なのか? お前は」
思わず、ボンドもツッコんでしまう。
「何よ! 路がないのよ?? なら、ここにいつまでも居たって!」
「待て。昔見た映画で。こんな状況のものがあった、な」
「……映画ぁ??」
「ああ。洋画だ」
なくなったーー《地面》
足元にあるーー《白い砂》
「っと~~なんだったかなぁ‼」
思い出せないボンドが、頭を抱えてしまう。
「何よ。思い出せないの??」
「本ッッッッ当に! 昔の洋画なんだよ!」
ヒョオオぅうう!
穴から。
冷たい風が吹く。
「外と穴が繋がっているみたいね」
「くっそー~~! 喉まで、出てってのによぉ!」
サァアアーー……。
目の前の砂が風に煽られ。
穴へと向かった。
全体的に拭きかかった。
するとどうだろうか。
ある一か所に、砂が乗ったのだ。
真っ暗な穴の上にーー見えない何かの上に。
「そうだ! 砂だ! 砂ッッ‼」
「??? 砂? 周りに沢山あるわよ?」
っざ!
リナが砂をつま先で蹴飛ばした。
ボンドが身体を下げて、膝を曲げる。
そして、砂を掴んだ。
「ーーこれしかない!」




