第二十七話 勝機の予見
ジジジーー……。
ジーー……。
『「ボンド……」』
不安そうにリナがボンドの手を強く握った。
『「大丈夫。きっと、大丈夫だ」』
その小さな手を。
ボンドも強く握り返すのだった。
ジジジーー……。
ジー……。
二人は山の斜面を奔り降りて行った。
『っきゃ! ボンド‼』
揺さぶれるバーチャル初号のサト江が。
ボンドに抗議をしょうにも。
彼自身も必死で。
それどころでもない。
『「ボンドッッ?!」』
『舌噛みてぇのかよ! 黙って降りろよ‼」』
手を握ったまま。
山頂から降りて行く。
『「!?」』
真っ暗闇に慣れたリナの視界に。
赤い四つの目が見えた。
刹那。
リナは手を離し。
『「っだ、りゃアァアアアッッ‼」』
シャベルで蜘蛛へと立ち向かった。
振り払われてしまったボンドにリナも言う、が。
『「先に! 行ってって‼」』
『「んなこと出来るかよ! リナッッ‼」』
太い幹を掴み、ボンドは。
『「……絶対に居るからな‼ 俺ぁ‼」』
リナを見ていた。
『「聞き分けがないなァッッ! もォ♪」』
声を弾ませながら。
リナは蜘蛛をシャベルで裂いていく。
ぐっしゃああァアアッッ‼
ジジジーー……。
ジー……。
蜘蛛を殺った後から、後から。
救援部隊さながらに蜘蛛が向かって来た。
『「っく! むむむ゛ッ!」』
『「もう行くぞ! リナ、来い!」』
今にもシャベル片手に向かおうとするリナの腕を。
ボンドが掴み、蜘蛛の隙間をすり抜けて行く。
器用にも。
ただ、それはボンド自身も思いかけず。
驚きでもあった。
『「なぁ! サト江よォ?!」』
『何? ボンド??』
『「ぁ、ああ…そのよぉ」』
言い難そうに。
ボンドはリナの横顔を見た。
それに彼女も気づいたのか。
『「……--光圀島に」』
小さな唇が。
残酷な質問をした。
それはリナ自身をも傷つける--諸刃の刃でもある。
『「生存島民は、他に居るの?」』
『ボンド。リナの顔を見たいわ』
『「……ん。だとよ」』
速度はそのままに。
二人は斜面を降りて行く。
ボンドの目は夜行性で。
どんな闇の中でも、見渡すことが出来る。
だから、どんな障害物も。
彼女に触れさせることはない。
ジジジーー……。
ジーー……。
『居ないわ。現生存はーー間宮リナ。君だけよ』
ジジジーー……。
ジーー……。
屈託のないバーチャル初号のサト江の言葉に。
言い返すこともなく。
無言で斜面を下って行く。
『「--一人か。私で」』
ぽつりと漏れた言葉に。
『「みたい、だな」』
ボンドも、ぽつりと言い返した。
『「でも。お前は一人なんかじゃねぇからな?」』
『「止めてよ。俺が居るぜ! みたいな。キモイ!」』
『「!? きも? キモイ、のか??」』
思わずな言い分に。
ボンドの手も緩んでしまう。
その手に。
『「人間一人なら? 一人?? そうよ!」』
リナが力を込めた。
ギュっと。
皮膚に爪をのめり込ませて。
『「一人だわ! 私で‼」』
喜々として。
ボンドを見た。
ジジジーー……。
ジーー……。




