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第二話 島民 間宮リナ

「あの光りはなんだったんだ?」


 急降下をしながらボンドも首を傾げた。

 そして、徐々に自身の違和感にも襲われてしまう。


「!? ぅ、嘘だろ??」


 箒を奔らせる魔力の制御が効かない。

 素直でいい子が悪戯っ子になってしまったかのように我が儘にボンドの言うことを聞かなくなってしまった。突然のことにボンドも頭が混乱をしてしまい、何をどうしたらいいかも考えられずに、頭の中も真っ白と叫ぶことしか出来なくなってしまっていた。


「っこ、のォオオオぅううっっ!!」


 速度(スピード)を抑えることも出来ず、勢いよく島のコンクリートの路に落下してしまう。


 ず、っしゃあああァアアっ! とボンドも咄嗟に獣人化をして衝撃を和らいだが、出来たのはそこまで。


「ってぇええ~~!」


 全身が痛む。

 しかし、寝たままともいかずに上半身を起こしたところで、信じられない局面に出くわしてしまった。非常事態といっても過言ではない。


「!?」


 シャアアアァアアアッッ!! と巨大な蜘蛛が大きく口を開けてボンドの正面に立っていた。


「く、蜘蛛??」


 暗がりの中。月明かりでボンドが巨大な蜘蛛を確認して正体に言葉にしたことで獣人化も驚きで解けてしまった。辺りは森で樹が茂っていて路も、今、ボンドがいる細い道だけで、巨大な蜘蛛から急いで逃げる他の路は見当たらない。生身の身体に戻って全身も硬直と身震いも止まらなかった。こんな巨大生物が、どうしてここに自身の目の前にいるのか、と疑問も尽きない。


「こんにゃ、っろぉうぅうう!」


 しかし、こんな場所で死んではいられないと唇を噛み締めて、支給された初心者用の魔法使いの杖を胸元から取り出し構えた。


「《人円類(ウロボロタルト)》の能力(チカラ)を見せてやるよっ!」


 威勢よく構えたのだが、全く魔力が発生しない。

 しないどころかーー兆しがない。


「!? っな、何でだよ!?」

 勢いよく力任せに杖を上下に振る。

「お、っかしいだろォおっ!」


 ガッキン! と金属の音が鳴り響いた。


「!?」


 すると目の前にいた蜘蛛が動きを止めたかと思えば、巨体を地面へと崩れた。何が起こったのか理解出来ないまま、視界の下へと崩れ落ちた蜘蛛を見ていた。一体、何が何やらと惚けていた時にボンドに少女が声をかけた。


「ねぇ。大丈夫なの?!」


 蜘蛛の背後から声がした。

 だが、肝心の少女の姿が見えない。

 しかし、ここで返事をしない訳にも行かないとボンドも、強がった声で答えた。


「あ、ああ。おかげさんで」


「そっか!」


 ぐしゃ。ぐしゃ。と、少女は蜘蛛の身体の上を歩いて、ボンドの方に歩いて行った。


「よ、っと! あれぇ? あんた」


 手には金属製のシャベルが握られていた。

 少女の身長以上にある《凶器》だ。

 色素の薄い亜麻色の髪は肩まであり、左右を赤いリボンで軽く結んでいた。服装は薄く淡いオレンジ色のワンピースで中に短い丈のジンズを掃いているのが風が吹いて見えた。足は赤いクロックスだった為、紫の巨大な蜘蛛の血が付着して汚しているのが分かる。


「? あんた。この島の人じゃなくない?」

「……ああ。島民じゃない」

「ふぅん。じゃあねー」


 にこやかに手を振り去ろうとする少女にボンドも慌てた。


「おい! 待てって!」


 ボンドの剣幕に少女も首を傾げてコンクリートに金属製のシャベルを突き刺して柄に顔を傾げてボンドを見た。顔も、よく見れば巨大な蜘蛛らしい血が付着をしている。


「何よ?」

「何? じゃねぇよ!」

「だから、何よ」

 少女も苛立った声を上げる。

「助けたんだから、後は自分でどうにかしなよ」

 行こうとする少女の前にボンドが先回りして、少女の前を塞ぐ。


「邪魔なんですけどぉ~~?」

「ぉおお、俺はっ、魔法使い見習いの剣ボンドだ! 空の上から島の異常が見えたからこうして来たんだ! それなのにっ!」

「あんた。頭打ったの? 魔法使い見習いとかウケる。web小説の読み過ぎじゃないの? 馬鹿みたい」


 カカカ! と頬が熱くなるのを感じた。

 確かに、自己紹介でしくじってしまった感が否めない。


 もっと、何か言いようはなかっただろうか、と思ってもすでに後の祭りだ。

 押し黙ってしまったボンドに、少女もようやくここで自己紹介をした。


「私は光圀島(ここ)の島民で、生存者の間宮リナよ」

「リナ、……って、生存者???」

 まじまじ、と少女(リナ)を視る。

「じゃあね。ボンド」


「いやいやいや! っちょっと待ってっての! リナぁっ!」


 ボンドの声を無視して走り出すリナに、舌打ちをしてボンドも箒を片手について行く。


「この島に何が起こっているんだよ!」

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