第八十五話 攻略は中断します
案内されてきた場所はスーの家だった。
森の中で全て自分で作ったんですよ〜と自慢げに言う。
確かにこんな森の中で開いた空間に広がった花畑を見たら自慢したくなるのも納得がいくが、スーの身体はとても小さい。
なので当たり前のように家の方も小さく、スグルたちは切り株に腰かけた。
「ここにはなんの用事できたんだ?」
休憩がてらに水を飲みながらそう聞く。
「ここで育てていた種を持っていこうと思いまして〜。少々お待ちください〜」
スーはふらふらと木の上にある小さな家の中に入っていく。そして小さな実を持ってきた。
「暇でしょうからそれでも食べといて下さい〜。甘くて美味しいですよ〜」
貰ったそれを噛みながら降りてくるのを待つ。
少しして袋を持ってスーは出てきた。
「お待たせしました〜」
「そんだけで良いのか?めっちゃ軽そうだけど」
「種だけなのでそこまでですね〜。これで私の用事は済んだのですが今からどうしますか〜?」
「そりゃ時間かけるのも手間だからさっさと21階層に降りるさ。むしろフロアってので一気に行けるから手間が省けた」
「そりゃこのフロアのモンスターでしたら相手にならないでしょうからね〜。わたしも次のフロアに行くのは賛成ですが船は持ってるんですか〜?」
「船?持ってないが」
スーの攻略に必要という口調で船を言ってくるので、よく分からず聞き返す。
「ありゃ〜?21階層のフロアのことを知らないんですか〜?なら仕方ないですね〜」
「21階層もフロアなのか。でなんで船が必要なんだ?」
「まぁまぁ。見て貰った方が早いと思うのでさっさと行きましょう〜」
「釈然としないがまあいい。さっさと行くぞ」
スーの家という寄り道はしたが、その後の攻略スピードも落ちる訳なく、3時間後には大樹のところに着いた。
「はぁ疲れた。まだ4時か。今日中に20層まで行けるなんて結構幸先はいいんじゃないか?」
「お試し区間なのを置いてもだいぶ速いですね〜。ルーさんも鋭化で走り抜けたらもっと速そうですが〜」
『我は確かに1時間程度で森は抜けられたな。もっともモンスターなど相手にせんかった場合だが』
「そりゃ凄いな。っとここが階段か」
木の側面を歩いて行くと、あるところで大樹の樹皮に巨大な穴が開いていた。
そこから下を覗くと階段が続いている。
スグルたちは取り敢えず様子を見に行くということで階段を降りて行った。
10分ほどの長い間、暗い階段を降りて行くとようやく出口の光が見えた。
出口に立つと、強烈な風が身体中を襲ってきた。
それを振り切り出口から出る。
目の前に広がっていたのは茶色。
砂の海がどこまでも続いていそうなほどに広がっていた。
「ここは21階層から30階層までのフロア、砂漠フロアなのです〜さっき言っていた意味がわかりましたか〜?」
「ああ……船が必要なんだったな。でもなんで船なんだ?徒歩じゃ無理なのか?」
「一歩でも踏み出せば沈んで行きますがそれでも良ければ試して見たらどうですか〜?」
スーの辛辣な言葉に口をつぐむ。
しかも眼下の砂の海をよく見れば砂の中で何やら動いているのがいるらしい。背ビレが砂からチョコンと出ているのが見える。
しかもこの階層に入った途端凄く体が熱い。
おそらく擬似の青空でサンサンと輝いている太陽が原因だろうが、どうしようもないため今度ダンテに相談しようと心に決める。
「で、攻略はできないと思いますがどうしますか〜?」
「分かってるだろ……撤退だな。ポータルってので帰還してみるか」
「それならこっちですよ〜」
出口の横にポータルが置かれていたため、それに乗って帰還する。
ログアウトするような、淡いポリゴンに包まれていく。
「なんだぁ、もう戻ってきたのか?」
ダンジョンの前に帰還したスグルたちにダンジョンの前で座っていたビーズがそう聞いてくる。
折角なのでゴブリンたちがオーガを主体に氾濫していたこと、スーを仲間にしたこと、21層まで潜ってみたことなんかを語った。
「お前、もう20層かよ。随分速いんだな。そっちのスーって奴もだがやっぱ持ってるやつは違うのかねぇ?」
「俺からすれば普通だけどな」
「ユニーク2人連れてるだけで普通じゃねえよ。それにしても氾濫か。念のため調べる部隊も検討するか……今日のことはダンテの旦那に報告しとこうと思うんだが、大丈夫か?」
「そりゃ勿論だ。今度ダンテのとこ行くからそれも言っといてくれ」
「おう、わかった」
こうしてスグルの初めての攻略は終了した。
煮え切らない幕になったかもしれません。
今日から新学年かぁ……リアルも大変だな




