第八十三話 変異種
「ふわぁ〜疲れたのです〜」
オーガが砕け散ったのを見てスーはふらふらとスグルの肩に戻った。
「おう、お疲れさん。ルーもお疲れ」
同じように近寄って毛をさすり付けてくるルーを撫でながら今回の戦果を確認する。
(ゴブリンの素材は無駄に数があるけどほとんど使えないからいらないな。オーガの素材は……確かに硬かったけどオーガの皮自体が硬かったわけじゃないからこれも微妙か?角は何かに使えそうだな。よくラノベとかで素材になってるし。金は……まぁある訳ないか。あーなんか微妙だな〜とほほ)
若干がっかりしながら、戦果のログを閉じた。
しばらくここで休憩しようということで、少し早いが昼食を取ることにする。
「さっきのオーガだけどあんなのが普段いるのか?」
タルタルソースがついた魚のフライを口に運びながら、確認程度に聞く。
『いや、見るのすら初めてだ。これまで潜った時はゴブリンが徒党を組むなどと言うこともなくただ群れていただけだった。まあ主犯は今のオーガであろうが』
「だよな。流石にあれが通常だったら結構疲れる」
「大丈夫〜。あれは変異種なんですよ〜」
「『変異種?』」
スーの知っているような口ぶりに二人は首をかしげる。
「ダンジョンには各階層ごとに大体モンスターのレベルが決まってるんですが〜偶にですね〜適正レベルより大幅に強いモンスターが生まれることがあるんですよ〜」
「それが変異種か」
「ですよ〜。無駄に強いのでボスモンスターすら倒してしまうことがあるんでこっちからすればいい迷惑なのですよ〜」
やれやれ、と手を振りながらそう言う仕草には自分も捕まえられた、と言う実体験がこもっているからだろう。かなり刺々しい印象を受けた。
しかし、それよりもまた新しく興味が出てくるワードがスーの言葉の中にあった。
「ボスモンスター?そんなのも居るのか」
「そりゃダンジョンですから〜。10層ごとにボスモンスターは居るはずなのですよ〜。ただ10層のボスは確かゴブリンキングだったと思うのでま、オーガからすればかなり弱い部類ですね〜」
『我からしてもただの肥えた巨体であるから簡単に仕留められたな』
「ま、そんなもんか。ゴブリンキングなら前も戦ったことあるし大したことないもんな」
謎がどんどん解消されてきたところで、とスグルは更にご飯をかきこみながら聞く。
「お前ら、知り合いだったんだよな?どこで知り合ったんだ?」
「何処でと言われましても〜?ダンジョンの中でしかないですよ〜」
『うむ。まあ簡単に言うと我が11層に入って特訓していた時に偶々出会ったのだ。我としても意思疎通のできるモンスターは久し振りだったので殺すことはなかった』
「ひぇ〜。意思疎通できてなかったら殺されてたんですか〜。ちゃんと話せて良かったのです〜。それとわたしはモンスターじゃなくて精霊ですよ〜」
『大して変わらないだろう』
「変わるんです〜」
二人は穏やかに喧嘩をして居る。
まあ、話から大体の経緯はわかったので十分だ。
「さて、馴れ合うのもいいがそろそろ攻略を再開するぞ。今日中に11層は見ときたいから」
『承知した』
「わかりましたよ〜」
スグルが弁当を片付け立ち上がる。
そして1時間ほど経過した頃、軽く10層のボスのゴブリンキングを倒し11層に足を進めた。
今回は少し短かったなー。もうすぐ新学年……ガクガクブルブル




