第七十九話 試し斬り
久しぶりの連日投稿です。
そういきり立ったはいいが、下の階層に降りるまでゴブリンは一匹も現れなかった。
いくらダンジョンと言えども、ここまで出ないものなのかと思い、普段ここに来ていたというルーに尋ねた。
『いや、我も偶に潜るだけだがこれほど出ないのは初めてだ。大抵は集団で行動するが先程も一匹だけであったしゴブリンは何処かに移動したのかも知れん』
ルーもおかしいと感じているようだ。
スグル達は結局ゴブリン達に出会わないまま3層、4層と足を進めた。
4層に降りた瞬間、途方も無い量の殺気が階段から出て来たスグル達に突き刺さった。
「……っ、下がるぞ!」
声をあげ、一瞬で後方の階段にジャンプする。
すると、先程スグル達が降り立った場所には矢の雨が降り注いだ。
地面まで深く刺さった矢の数を見て冷や汗が横顔に垂れる。
「危ねえ。【空間把握】のギリギリ外から狙って来やがったな。大体30メートルってとこか?何にせよようやくゴブリンとの対面だ」
『向こうは降りた瞬間に狙った場所に矢を打つ技量のあるゴブリンだ。行けるのか?我の【鋭化】なら矢も弾けるだろうがどうする』
念のため、と行った感じでルーがそう聞いてくる。
スグルはふっ、と笑った。
「愚問だな。というか入ったときちらっと見たけどこっから先は結構ウジャウジャと居そうだった。こいつの試し斬りはここの奴らを斬ることで良しとするか。というわけでここはひとつ競争にするか」
『競争?』
「どっちが多くゴブリンを倒すかだ。どうせこれまでの階層に居なかったのはここに集まってたからだろ。そう考えたら勝負になるだけの数は居るはずだ」
疑問をあげたルーにそう説明する。
ルーも乗り気になったようで、既に脚に力を入れている。
「勝負はそうだな……親玉が居たらそいつを倒すまでって事で。もし居なかったら……この階層の敵が居なくなるまでって事でどうだ?」
『異論はない』
「じゃ、そういう訳で。勝負スタート!」
そう言った後一人と一匹は同時に走りだす。
ルーは【鋭化】で降り注ぐ矢を物ともせず、一直線に進んでいった。
「おーおー張り切ってるね。っと」
ゴブリンが遠くで空中に待っているのを見る。
近くで、再度矢が飛んで来たが今度は余裕を持ってかわした。
矢を射ってきているゴブリンのいる場所には岩が出ている場所で、侵入者を阻む簡易なバリケードのようにもなっている。
「もしかしてここが拠点になってたのか?とするとビーズの方に向かう前に倒しといたほうがいいかもな。取り敢えず、まずは魔刀の威力を見せてもらうかね」
スグルは夜鳴を鞘から抜く。
柄に手を添えると、手のひらから魔力が吸われていく。
「吸ってる分は仕事しろよ〜」
魔刀について教えられた通り、風と念じると切っ先から波紋にブゥーン、と音がなり、高密度で薄緑色になっている風がまとわりついているのが見える。
「おお、なんか凄そうだな。んじゃ早速っ」
襲いかかってくる矢をかわしながら一番近くの岩の陰に隠れているゴブリンの元に走る。
ゴブリンも矢で限界があると悟ったのか、弓を投げ捨て腰にぶら下げて居たナイフを構えて突貫してきた。
スグルからすればお粗末なものだったが、関係なく飛びかかってきたゴブリンに向かって斬りあげる。
カッ
と短い音がし、夜鳴はゴブリンの体を何の詰まりもなく通過した。
さらに、振り上げた直線上に向かって薄緑色の見れる風が吹き荒れる。
「うおっ、聞いてたけどすっげー」
とスグルも思わずそれが通った跡を見る。
風の直線上にいたゴブリン達も岩も纏めて切り刻まれており、満足に立っているものはいなかった。
「これでMPは……20消費か。で、1秒に1ずつ減ってってるからまだいけるけど無理は禁物だな。なるべく早く片付けるか」
ステータスで減ったMPを確認する。
一撃で他の弓ゴブリン達も倒してしまったが、まだまだ他に獲物はいるだろう、と先に進んだ。
明日は自習会……何で春休みなのに宿題あるんだ




