第七十七話 事情
「ダンジョンか。そう言えばすっかり忘れてたな。玉鋼の採掘場としてしか見てなかった」
『あそこならモンスターを倒しても勝手に湧いて来るからな。鍛錬には最適なのだ』
以前に見つけた超級ダンジョン。
そこは玉鋼でできた壁が傷つけられてもすぐに再生するため、国の特産にすらなるものだった。
現在は超級ダンジョン付近まで道が作られ、そこで採掘に勤しむダンテのところの従業員もいるらしい。
ダンジョンの周りには簡素だが村のような環境を整えているとも聞いている。
「だが俺ら2人だけって言うのもな。罠とか見分けられないぞ」
以前、玉鋼を見つけた以外にも罠があるか神経を張り巡らせながら進んだため、精神的に疲れた記憶がある。
今回のメンバーでもまた同じことが起こると言えるだろう。
『知らぬのか?既にダンジョンに罠はない、少なくとも20層付近まではないと言うのは調べられているようだ』
「そうなのか?」
『ダンジョンにいた人に聞いたので間違いない。我も罠にかかったことなどないしな』
ルーが自信げに言うので、取り敢えず行ってみることにする。
ある程度ダンジョンがある方向へ進むと、突然草原の中にタイルが敷き詰められた道に出た。
まだ作るのは半ばのようで途中からはただ草が刈られた砂地の道になっている。
その道を辿って森の中に入っていくと、広がった空間に出た。
以前、不自然にダンジョンの周りに広がっていた何もなかった広場には複数の木製建物が建設されており、二重に作られた柵が広場全体をグルッと囲んでいる。
そして広場の真ん中には地中に続くダンジョンの姿があった。
柵の中では忙しそうに人がダンジョンの入り口から行き来している。
入り口で指揮をしていた人物が中に入ったスグルたちに気づき、近づいてきた。
「よ、ルー。今日も探索に行くのか?で、そっちはスグルだな」
「俺のこと知ってるのか?」
「オレらはプレイヤーだから当たり前さ。ルーもよくダンジョンに潜ってたしな。おっと、オレはビーズってんだ。ここで玉鋼採掘部門の監督をしてる」
そう言って握手を求めてきたので手を差し出す。
青に少し緑が入ったような髪で、顎に髭を生やした平たい顔のその男は朗らかに笑った。
「まあここに来たってんなら目的はダンジョンだろ?オレは大抵ここに居るからよ、もし居なくてもここの従業員の誰かに声かけてくれ。あ、もしマップ作れるなら下の階はまだまだ未踏破だから高く買うぜ。これはプレゼントだ」
そう言って腰から一つの束になった巻物を投げて来る。
「それは20階層までの地図さ。11層は多分驚くぜ。それに少しは役に立つだろ?」
「ああ、サンキュー。ついでに採掘の様子でも見ていってもいいか?」
「あん?勿論いいぞ。オレが案内してやるよ。と言ってもダンジョン入る通り道だけどな。ガッハッハ」
笑いながら中に入って行くのに慌ててついて行く。
ダンジョンの中は以前と変わらずぼんやりとした明かりが照らされている。
そして右側の壁では数人が力強く槌のとんがった方を壁に思い切り叩きつけている。
「ま、簡単なもんだろ?何せ勝手に再生するから場所を移動する必要もないんだ。むしろ脚が怠くなるって文句言われるくらいだ」
「確かに効率的だが、ゲーム内でも仕事とか不満はないのか?」
以前から思っていたことを現場の人に聞いてみる。
「あん?確かにゲームだから仕事なんてって考えもわかるがな。ここで生きるにも金がいるのさ。そしてダンテの旦那のとこで働くとめっちゃ給料いいんだよ。そりゃみんな頑張るわ。不満があったら直ぐに改善してくれるからな、あの人は」
「そうか。ならいいんだ」
ビーズは一瞬難しそうな顔を浮かべたが、直ぐに真面目な顔で答える。
「ま、スグルの気持ちも分からんでもないがな。働かざるもの食うべからずだ。さ、もうここはダンジョンだ。さっさと行くなら行ってきな?」
「おう、行って来るわ」
軽く手を挙げ、スグルたちはダンジョンを進んで行った。
最近早朝ランニング始めました。
朝起きるの眠いです
4/2)15層→20層に変更しました。




