第七十三話 結論
4500ポイント突破、ありがとうございます♪
「貿易船、ですかな?」
「ええ。あの貿易船を作ったのはラザレフさん、貴方ですよね?」
ラザレフは頷く。
「しかし、なぜ船なのですかな?それこそそちらの人脈を使えば容易くできるのでは無いですか?」
「俺たちの近くに造船技術を持った人物はいません。勿論、これから研究していくには可能ですが一朝一夕で作れるものじゃない。しかし、これからの移動手段に陸路のみというのは味がない」
「確かに、風に乗った船と表面上は障害物のない海があればより速い行動が可能でしょう。しかし海には海の危険性があります」
「勿論知っています。大潮、渦巻き、座礁、嵐、それにモンスター。これらは確かに危険なものですが、それを抜いてなお余りある価値が船にはあると思います」
じっとスグルの方を見つめていたラザレフだったが、
「……分かりました。此方としては有り難い取引ですし、そちらにも考えがあるでしょう。口を挟むのは野暮ってもんです。その取引、喜んでお引き受けさせて頂きましょう」
「ありがとうございます」
どうなる事かと内心冷や汗だったが、すぐに引いてくれた事に感謝する。
「それでですね、ついでと言ったらなんなのですが。ワタシのアイテムボックスにしまってある交易品とこの玉鋼を取引してもらえませんかな?向こうに帰ったらこの国の存在と、航路の解放を手土産に一儲けしたいので」
「成る程、そちらと定期的な交易も出来たら喜ばしい事ですね。ダンテ、大丈夫か?」
玉鋼の取引という事で全て任せているダンテに相談する。
「勿論や。まあ交易品が何かにもよるけどな。そっちの大陸にもこの建国中の国を広めてくれるっちゅうなら出血大サービスで取引するわ」
「だ、そうです」
「有り難い。なにも手土産なく帰ったらそれこそ議席から外されかねませんからな。では早速ですが、ワタシは船の設計をしていきましょう。取り敢えず出来たらお呼びしますので、フレンド登録をお願いします」
その場でフレンド登録を済ますと、簡単に挨拶をして別れた。
ラザレフはすぐにでも作業に入るようで、食器を横に退けながらペンと紙を広げていた。
「で、結局なんで俺にあんな商人もどきみたいな真似させたんだ?」
このスグル主体の一連の流れはダンテの提案によるものだった。
ダンテはコツコツと歩く音を立てながら答える。
「なんでちゅうてもな。わいはこれでも商業ギルドのギルドマスターでもある訳でやな。将来的にはこの国の宰相てことも分かっとるけど、兼任ちゅうことになる。そん時のために取り敢えず頭の回転も早いスグルを少しでも対他国用に鍛えることも考えとった」
「それでもこの話がおじゃんになったらラザレフの大陸との繋がりもなくなるじゃないか。そんな大きなことやらせて良かったのか?」
「首尾は上々。わいの考えとは違ったけどかなり上手い話まで持ってったと思うで。それにもしおじゃんになってたとしっても。わいらには元から想定してなかったチャンスや。なかったもんとして考えたらそこまで大きな話やない。船も時間はかかるやろけどプレイヤー総動員すればなんとかなった思うで。ま、現状で船全体に使うほどの玉鋼を使えんのはウチぐらいやろけどな。鉄硬魚の存在はデカイなぁ。鉄で包んだ船がヤられるのは玉鋼の価値が上がるで」
成る程そこまで考えてたのか、とダンテを見る。
「ま、あとはあのとってつけたような敬語は何とかして貰わなあかんけどなぁ」
「うっせえ!」
思い切り後ろから蹴飛ばした。




