第七十二話 交渉
シンステ本当に楽しかったです。
「ところで、俺たちの現状はご存知でしょうか?」
ラザレフは鷹揚に頷いて答える。
「ふむ、俺たちというのがまた漠然としておりますが建国中の事ですかねー?それならある程度は存じておりますよ。僅か数ヵ月でこれ程大きな街を作るとは、中々良いツテをお持ちのようで?」
「はは、ありがとうございます。建国というものに関わらず、何かを行動するときには資金がかかりますよね」
確認するように問う。
「そうですねー。ワタシもいっぱしの商人でありますのでカネの動きには特に敏感だと自負しております。特に、大きなカネが動く際にはそれに伴い何かが存在しますねぇ」
「ええ、そして実は、この建国は半年も経っていない内に計画され、実行されたのですよ。まあ現状で民衆はこの街の半分に入る程ですが」
全員この世界の住人だけどな、と心の中で付け加える。
まあどちらにしよ街自体が完成したらプレイヤーにも公表するつもりであるし人員は直ぐに集まるだろうと思っている。
「なんと!?それはまた、凄いことですねー。ツテもさることながら多量の財もお持ちのようで羨ましい限りですな」
「はは、実はその財に秘密がありましてですね。俺たちはこの世界に出回ってない、ある鉱石を発掘したのですよ」
「ほう、新しい鉱石ですか?」
ラザレフが興味深そうに目を細めたのを見て、釣れたと思った。
「ええ、その鉱石はこの世界で一般に出回っている鉄、アイアンの性能を大幅に超えてます。と、口で言うよりも見ていただいた方が早いですね。ちょうど来たようですし」
後ろで扉が開いてダンテが入って来る。
かなり急いで貰ったようで、肩で息をしている。
「ハァ、ハァ。スグル、これでええんか?」
「ああ、サンキューダンテ」
手渡された二本の剣を机の上に置く。
「それは?」
「こちらはアイアンブレード。まあ、広く普及している鉄製の剣ですね。そしてこちらが件の鉱石、玉鋼で作り上げた剣です。勿論、鑑定していただいて構いませんよ」
「では失礼して……成る程。確かに新たな鉱石で間違い内容ですな」
「ええ。あとは性能の面ですが、少し失礼しますよ」
断りを入れてから先にアイアンブレードを持つ。
そして玉鋼製の剣をダンテに手渡す。
「ダンテ、しっかり持っといてくれよ」
頷いて腕を伸ばし、きちんと構えたのをみてアイアンブレードを一気に振り抜いた。
キンッ
と軽い音がして弾かれる。
鉄製の方には数ミリの刃こぼれができたのに対し、玉鋼の方には軽く、傷がついた程度。
「次は逆の持ち手でやってみましょう」
剣を交換し、同じことを繰り返す。
しかし、結果は鉄製の剣が真っ二つになるという、先程とはまるで違った結果になった。
再び二本の剣を机の上に戻す。
「とまあ、見ていただいた通りです。鉄製で玉鋼製に傷をつけることは殆ど出来ずに逆に刃こぼれを作る結果になりましたが、玉鋼製でなら容易く斬鉄も可能です」
「いやはや、確かにそうなのでしょうがスグル殿の剣技あってのこの結果でしょうなぁ。あれほどブレない剣が観れるとは、感激です。実はワタシ、幼い頃は剣士に憧れたものでしてなー。ま、スジが悪いっちゅうことと親の反対もあって直ぐに辞めたんですけどね、やはり良いものですな」
ラザレフが珍しく目を光らせるようにして語る。
「ありがとうございます。それでですね、ひとつ提案がありましてね」
「ほほー?一体なんでございましょうか?」
「現在俺たちが国を作れているのは、このブランドの玉鋼があるからです。そこで一つ、玉鋼を船の修復に使いませんか?」
「成る程、確かにこの玉鋼でコーティングされた船ならば鉄硬魚すら恐れるに足らぬ存在でしょう。しかし、残念ながらワタシ達は漂流中の身、対価にお渡しできるものが無いのもまた事実」
「それは勿論承知の上です。しかし、俺たちが持ち合わせていないものでそちらが持っているものがあります。それを対価の代わりとして頂きたい」
「……して、それはなんでしょうか?」
「船の、貿易船の設計を依頼したい」
ーーー
【貿易船】
レア度 ☆6
種別 船
状態 破損
設計 ラザレフ
ーーー
書き貯めが尽きた……




