第五十九話 魔力とお使い
今回予想以上に短かったので、前のと合わせました。
それと、ブックマークが遂に1000件突破しました!!
本当にありがとうございます(*^◯^*)
この評価を下げることのないようより頑張っていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。
「それじゃあ、まずは魔力を感知してみようか」
「前に神殿でなんか魔力を水晶に出したらしいんだけどそれは違うのか?」
「あれは体の中に魔力の通り道ができて水晶に吸い取られたってのが正しいね」
そういってスグルの手に指を立てる。
そして手のひらを軽く押すと、何かが抜けていく感じとともに、青い煙みたいなものが流れ出てくる。
それは色々と形を変えて、球体になった。
「これはスグルの魔力だよ。水の魔力を出したんだ」
「触ってもいいか?」
「もちろん」
恐る恐る触ると、それはふわふわと煙のように指が突き抜けた。
「これはまだただの魔力。どんな形にも、どんな物にも変化させることができる。ま、それ相応の魔力が使われるんだけどね」
「どうやったら変化させられるんだ?」
「もちろんイメージだよ。魔法ってのは極端に言ったらイメージの力。そして魔力の流れを感じること。例えばこの水の魔力にそうだね……手をかざしながら氷になるようにイメージしてみて?」
言われた通りに手をかざしながら、目を瞑り頭の中で凍らせていく様子を想像する。
パキパキ、と音がしたので目を開けるとカチコチに凍った先ほどと同じ大きさの氷の玉が宙にふわふわと浮いていた。
「おお、少年はスジが良いね」
「そうなのか?」
「もちろん。出来ない人は理論が分かっててもなかなか出来ないんだよ」
そう言われて少しだけ得意げになる。
「で、次は魔力の流れを考えることかな」
「流れ?」
「もちろん、このままじゃ何も出来ないからね。原因と結果だけを求めるんじゃなくて、魔法はむしろその過程が重要なんだよ」
これは見えるようにやるね、とリーシェは指先から赤い、紐のようなものを出す。
それはスルスルと伸びていき、部屋の壁際にある机の上のろうそくの紐まで続くと、ろうそくにポッと火がついた。
「今の紐みたいなのが魔力の流れ。これは魔法の最終的な目標を達成するためにどんなことが必要か考えたら自然と出来るから。まあ言われるよりやって見るほうがいいかな?あのろうそくの火を消して見てよ」
リーシェはいきなりそう言ってくる。
スグルは頭の中で火を消す行程を想像する。
(火を消すなら単純にあの火の上で水を作ればいいんだろ?じゃあさっきの流れと同じように作るだけ…)
人差し指に魔力がこもっていくのをイメージする。
すると、指先の方が熱く感じて来たので、それを流れを作るイメージで火の上に水を作った。
「おー、やっぱり少年はスジが良いね」
「でも発動に時間がかかるんだな。もっと練習しないと戦闘には使えそうにないか……」
「そりゃ一朝一夕で身につくものじゃないからね。剣なんかもそれと一緒でしょ?」
「確かに」
単純にクラーケン戦でのバリエーションが増えたら良いな、と思っていただけに少しショックだった。
「ま、基本は今教えたことで全てだよ。あとは練習あるのみ」
「俺の方でもちょくちょくやって見るわ。ギルマスありがとな」
「礼を言うなら一つ頼まれてくれない?」
そう言ってリーシェは手に一つの小さな小包を出す。
「これをアオイちゃんに届けてあげて欲しいんだよね」
「別に良いけど、これなんだ?」
「お菓子だよ。あるだけ置いて来たんだけど予想以上に長い滞在だったから多分お腹減ってると思うんだよね。あの子私以上にニートだから買いに行くとは思えないし」
「……ニートなのか?まあわかった。で、アオイちゃんは何処にいるんだ?」
「ギルドホームにいるはずだよ。じゃあよろしくね」
リーシェにシッシッと部屋を追い出されたので、仕方なく次元の扉の中に入った。
用事は早めに済ませようとギルドホームに移動する。
「さてさて、アオイちゃんはっと」
「何か用??」
「のわっ」
アオイちゃんを探そうとすると、後ろから声がかかった。
「すみません、変な気配がしたのでつい」
アオイは悪そうに小さく頭を下げてくる。
「いやいや、急に来た俺が悪かったし。これ、ギルマスに渡すように頼まれたんだけど」
「?」
そう言って渡された包みを渡す。
アオイは手に持った瞬間、目の色を変えてひったくるようにそれを奪うと中身を口の中に流し込んだ。
「……え?」
目の前で起こった光景にスグルは呆然とする。
口周りをぺろりと舌で舐めると、
「美味しかった」
とアオイは満足そうに言った。
「……もう食べたの?」
「はい。おかわりは無い?」
「残念ながら渡されたのはそれだけだ」
「残念……」
スグルがそう告げると悲しそうに一瞬で空になった袋の中をのぞいている。
スグルはその様子を見て可哀想に思ったので、
「これ、前に俺の友達が作ってくれたお菓子なんだけど食べるか?」
前にとってぃから貰ったパンケーキをアイテムボックスから取り出した。
それを見てアオイの目に再び色が灯る。
「……良い?」
「いいよ、食べる機会あまりなかったし」
「じゃあ貰う。ありがとう」
そう言ってパンケーキはまた一瞬で口の中に吸い込まれていった。
「……美味しい」
「そりゃ良かった。ところでアオイちゃん、一つ見て欲しい鉱石があるんだけど」
「なに?」
リィースに滞在中にダンテから送られて来たメッセージの中に添付されていた鉱石。
どうやら鉱山で取れたものらしいが、【鑑定】でも???で分からなかったらしい。
アイテムボックスからその鉱石を取り出す。
手に持つと、とても軽くて黒い鉱石だ。
ただ所々に紫の線が走っている。
「これ……魔鋼。かなり珍しい」
「魔鋼ってなに?」
「正直よくわかってないけど……魔力を抵抗なく通せる鉱石です。普通の武器に……魔力を通すとガタが来る。魔鋼で作ったものならいくら魔力をながしても大丈夫。普通に使うとしても……硬いから。前に持って来た玉鋼……?それよりも強い」
「これで武器とか作ってくれたりできる?」
「作るの……1ヶ月見て。ただこの量ではたいしたものは出来ないです」
「じゃあ今度また持ってくるからその時お願いしてもいい?」
「良いよ。あと、依頼料の代わりにお菓子でも可」
「ハハ……了解」




