第六話 商館へ、そしてパーティー
見た目は完全に悪魔の門な次元の門を使ってスグルは街の裏路地に出た。
現状で人目に見られたらまずいだろうと思ったからだ。
裏路地から出ると大通りに出た。
大通りには、露店なんかが一列にずらりと並んでおり、祭りの風景なんかを思い出す。
待ち合わせの場所に指定された、ダンテの商館を探しながら移動する。
ちょうどその商館も大通りにあるらしい。
「美味しい焼き鳥だよ!一本20ゴルド!」
「うちの美味しいパンはいかがー!どれでも一つ30ゴルドだよ!」
「掘り出し物はここだよ。わしもどんなものなのか知らんがね!」
(活気というか熱気が凄いな。というか最後の卸し文句は絶対にダメだろ)
そう思いながら周りを見ると、少しの人数だが既に露店を出しているプレイヤーもいた。
スグルやミウなど、人が動いているのをプレイヤー。
元から設定され、AIが搭載されたキャラをノンプレイヤーキャラクター、通称NPC。両者の区別はこのゲームではそれぞれの人を見たらわかるようになっている。
プレイヤーは頭の上に緑のカーソルが、ノンプレイヤーは黄色のカーソルが表示されているのだ。
もちろんNPCには見えていないしプレイヤーも設定で消すこともできる。
(もしかしなくてもあれかね?)
見つけた商館は周りの露店や建物と比べてもでかい大きさだった。
だいたい家10軒分以上はあるだろうか?そして、その建物の入り口にはテープと、大きな紙に
【休業中や!まだ開いとらんから立ち入り禁止!】
と書いてあった。
(あいつらしい書き方だな)
ここに来たのはフィールドをどう使うか相談に乗ってもらうためだ。
正直、1人で使い切るのは到底無理だろうし、それならダンテを巻き込んだ方が楽でいい。
そう思ってスグルは中に入った。
すると、中から怒声が響き渡る。
「おんどりゃ!入り口に貼っとったテープが読めんのかい!......って、スグルはんか。久しぶりやのお、どうしたんや」
店の中から出てきた3ヶ月前から変わっていないダンテの姿があった。
「おう、久しぶりだなダンテ。ミウがここを集合場所にしたって言ってきたんで。ついでに相談に乗ってもらおうと思ってな」
「あんのアホ、そんなこと一つも聞いとらへんで。まあ来て追い返すんもなんやし、どっか適当なとこ座っとき。出すもんもなんもないけどな」
「おう、サンキュ。それにしてもでっけえ商館だな。羨ましい」
「何言うとるねん。そっちもフィールドひとつもらったんやろ?どうやったんや?」
ダンテは目の底を光らせてこちらを見てくる。
「まあ、俺もそのことで相談したかったし丁度いいか。今日はひたすらに歩いて草原と浅くだが森を探索してきた。現状モンスターにはウサギとゴブしか出会ってないがモーションは追加されてたな。草原は今の所弱いモンスターしかいなさそうだった。ただ、ちょくちょくレア素材やらが落ちてたな」
「こっちもモーションの追加はあったで。レア素材ちゅうのはええ響きやのお。それにしてもフィールドまるまる一つかいな。流石に今すぐどうこうちゅうのはできへんけど...今度そのフィールド見に行ってもええか?」
「ま、見てもらわねえと使い道も思いつかんだろうからな。明日にでも見に行くか」
と、2人を包んでいた真剣な空気が霧散する。
「さて、真面目な話はそろそろ終わるとするか。時間的にもミウが来る「お兄いるーー?!」...来たな」
「ぴったりやな」
入り口のテープは役目を終えたかのようにはらりと地面に落ちた。
そしてミウが先頭で他にもずらずらと人が入ってくる。
「おう、遅かったなミウ。で、後ろの連中はなんだ?」
「いろいろ準備してたんだよお兄!」
「準備ってなんのや」
「そりゃもちろん!パーティーだよ!」
スグルはミウが言った言葉に首を傾げた。
「パーティー?」
「そう!パーティーだよお兄!だってせっかくのBSOリリース初日だよっ。祝わないとね!」
「で、後ろに引き連れてるのは......」
商館の外にはぱっと見でもかなりの人数がいるのが見えた。
その中にはベータの時に知り合った面々も混じっている。
すると、ミウの後ろからスグルにとってよく知っているプレイヤーが出てきた。
「スグル、久しぶりだね。元気にしてたかい?」
「ゲッ」
「むっ、ゲッとはなんだ。ゆい姉さんがせっかく来たというのに。ミウとばったり会ったからついでにこのパーティもさっき考えたのも私なのさ」
「主犯はあんたか......」
人懐っこい顔をしてゆい姉さんと名乗った女性がこっちに来る。
この人の名前はゆい。
ベータで圧倒的なチカラを見せ、スグルを抜いて攻略貢献度1位の栄光に輝いたプレイヤーだ。
普段から何かとスグルによく絡んできていた。
「ふふっ、スグルは相変わらずのんびり屋さんだね」
出てきたもう一人も声をかける。
「久しぶりだね、スグル」
「お前も参加してたのか、とってぃ」
「あーっ、そんなめんどくさそうな顔してたらボク、ご飯作ってあげないよ?」
「すみません許してください。そして飯くれ」
スグルは一瞬で見事に土下座を決める。
「ふふっ、冗談だよ」
水色のショートカットの髪をしている子供はとってぃ。
見た目は完全に子供だが、自称二十歳のボクっ娘コックさんだ。
作る料理はなんでもめちゃくちゃ美味しく、一度食べたら絶対に胃袋をつかまされるといってもいい程の腕。
地味に料理を作っているというだけで攻略貢献度8位にランクインしたという事実からもその腕が分かるだろう。
スグルはミウに向き直る。
「で、ミウ。パーティーはどこでやるんだ?」
「もちろん、このダンテさんの商館だよ!」
「ちょっと待てやミウ。そんな急にアポもなしで来られても使われへんわ」
「え?昼前に今度お邪魔するねって言ったじゃん!」
「今度って今日かいな...早すぎやろ」
「大丈夫!みんなで素材も取ってきたし料理はとってぃが作ってくれるよ!」
(おお、それはかなり嬉しい。流石はミウだな)
「しゃあない、見たところ100人は超えとらんようやしな。まあ外歩いとったら参加したくなって増える気もするが...そん時は外にも出せば大丈夫か。おっしゃ、じゃあいっちょ、パーティやったろか!」
「さっすがダンテさん!わかってるね!」
と、完全に成り行きでだがパーティーが開催されることになった。
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(改稿済み)