第五十八話 ハプニング
『あ、ゆい?今大丈夫?』
ジェイル達とのレベル上げも終わった後、クラーケン戦で力を借りる為に数人に声をかけていた。
『どうしたんだいスグル、君からコールするなんて珍しいね』
ボイスチャット越しだが、驚いた声が聞こえる。
『いや少し頼みたいことがあってな』
『……貴様さてはスグルの偽物だね?』
『どうしてそうなった!』
『いやだって、スグルが頼みごとなんてあり得ないじゃん。ちなみに聞いときたいんだけど、なに?』
結局は好奇心が勝ったのだろう、すぐにネタをやめて聞いてくる。
『俺最近初めて死んだんだわ。で、リベンジマッチしようと思ってるんだがさすがに1人じゃ無理な気がしてな。こうして数人に声をかけてる』
『スグルがしんだの?驚いたね。因みにそいつは何だったの?』
『クラーケンだよ』
『え?』
『だから、35メートルは軽く超えるクラーケンだよ。流石に1人は無理だった』
『いやいや、何怪獣戦やってんの?そんな面白そうなのもっと早く誘ってよ』
『だから今誘ってるじゃないか』
『わかったよやりたいやりたい。いつ?』
『まだ決まってないから決まったらまた連絡するわ。それまでレベル上げでもしといてくれ。そういえば今何処にいるんだ?』
ふとリィースで別れたままになってることに気づいた。
もし通りところまで行っていたら迎えに行くのが面倒だな、と感じる。
『今?今は始まりの町にいるよ』
『そうか、良かった。クラーケンは向こうのフィールドで出会ったからもし遠い所まで行ってたら迎えに行くのが大変だった』
『じゃあ、またレベル上げでもしてくるよ』
『おう』
ブツッと音がしてチャットが終了する。
その後、スグルは一旦自分のフィールドに移動した後、もう一度次元の扉で次はリィースに移動する。
一連の所要時間は2分と行ったところか。
次元の扉は一度自分が行ったことのある場所に何処にでも出すことができる。
とても小さく、この世界で初めての瞬間移動が為されたがそんなことは全く気にせずスグルはリーシェに会いに行く。
(今は……あそこか)
リーシェのいる場所を感知したので、また次元の扉で移動してリーシェの前に出る。
リーシェは顔に怒りマークを浮かべて言う。
「……少年何をやっているのかな?」
感知した場所は前に別れた領主の館の部屋。
ここならいける、と移動したまでは良かった。
目の前にいるリーシェの髪からは水滴が滴り落ち、所々に水滴が付着している。
彼女の身体を遮るものは何もなく、全てを扉から上半身だけ出したスグルに曝け出している。
(…………………えーっと。あれだな、取り敢えず)
「ありがとうございます!」
「そこに直れ少年!」
〜10分後〜
「まあ別に見られて減るもんじゃないし良いけどさ、そんな急に来られてもね。プライバシーって言葉知ってるかな?」
「言い返す言葉もないです、はい」
部屋の中央に正座で座って何度も同じことを聞かせられる。
ただあまりリーシェも怒る気がないのかそこまで実の入った叱り方じゃない。
スグルがじっと頭を下げているのを見てはぁ、とため息をつく。
「もういいよ。少年が狙ってきたわけじゃないってのも分かったし」
その言葉にようやく顔をあげて見るからにほっとした顔をしたのを見て、
「ただし、今度から移動してくるときはちゃんと事前に連絡を取ってから。いいね?」
有無を言わせぬ口調にスグルはコクコクと頷いた。
「で、今日は何の用なんだい?」
「ギルマス、クラーケンって知ってるか?」
「クラーケン?あのたこみたいな馬鹿でかいやつかな?」
最悪知らないかもと思っていたので、最初の一つはクリアだなと思う。
「最近クラーケンとやりあったんだが負けちまってな。ギルマスならあいつの攻略法とか知ってるんじゃないかと思って」
「聞きに来たらお風呂上がりの私がいたと。まあ、それは置いといたほうがいいかな?で、攻略法だっけ。そいつのレベルは?」
「たしか150いかないくらいだったと思う」
「まあ一般的な数値だね。で、攻略法ねえ。正直参考にならないと思うけど一応言おっか?」
「お願いします」
「とりあえず海から風魔法で引きあげます。そして風魔法を応用した雷魔法でまる焦げにします。以上」
リーシェは腰に手を当てて自慢げに上半身をそらす。
「……それだけ?」
「それだけ。だから言ったでしょ?参考にはならないって。まあ基本魔力が多い私はごり押しでどうにかなるからね。……どうせなら実演しよっか」
そう言ってリーシェは前に手を出す。
手のひらが淡く緑に光り、少し上空に30センチほどの緑色の塊が生まれた。
「ほい、これが大体1万くらいの魔力をつぎ込んで出来た風の球ね。で、これを例えば何処かに当てるとする。その場合軽くこの街の半分は吹き飛ぶかな」
「……マジで?」
「やってみるかい?」
「いやいやいやいや、やらなくて良いからと言うか早くそれどっかにやって!」
あまりにも軽くこの街を吹き飛ばせる魔法だと言う。
それにスグルは頭が痛くなりながらなおすように言った。
「ま、一般の魔法使いの魔力が100くらいだって考えるとかなりの量だからね。ね?ゴリ押しで行けない方が珍しいの」
「一般の魔力って100くらいなのか?」
「そうだよー。少年もそれなりに魔力はあるみたいだから魔法でも覚えたら?」
「そんな簡単に覚えられるものなのか?」
「うーん……正直感覚でやってるとこが多いんだよね。できるならすぐ出来る、出来ない人は全然出来ないって感じ。どうせなら今基本だけは教えよっか?」
「お願いします」
スグルは二の句を告げずに頷いた。




