第五十五話 初めての死
「はぁぁ」
クラーケン戦後、始まりの町の神殿で目を覚ましたスグルはため息をついた。
何気に初めての「死」だし、こんな神殿で復活するなんてのも初めてだったが。
死ぬ前の行動の無駄が多過ぎることに憂鬱になった。
(マジで俺なに躍起になってんだよ。普通万全に準備してから挑むだろ。というか何まともに最後向かってってんだよ。俺はどっちかと行ったら速さで相手を翻弄するタイプだろうが。ったく、思い返せば返すほどさっきの行動に腹が立ってくる)
「あん?スグルじゃねえか!」
復活したベッドの上でそのまま先程の戦いの反省をしていると、前の方から声がかけられる。
そっちを向くと、丁度同じくジェイルがベッドに腰掛けていた。
「ああ、ジェイルか」
「スグルが死ぬなんてどうしたんだ?というかお前死んだ事あったのか」
「今回が初めてだな。お前の仲間はどうしたんだ?」
見た所ジェイルのパーティーメンバーが周りにいない。
そのことを指摘すると、
「俺らもみんな死んだんだけどな。若干のタイムラグみたいなもんが有るんだよ。ほれ、噂をすればだ」
ジェイルの隣のベッドが光り輝いていき、青色のポリゴンが収縮していく。
そしてやがてそれは人型となり、ポリゴンが砕け散った。
ベッドの中からねこも出てくる。
「ふにゃ。今回はやられたにゃー。まさかゴブリンがあんなにいるなんて思いもしなかったにゃ」
「ねこさんか。てか復活ってこんな感じなのな」
「にゃにゃ?にゃんでスグルがこんな所にいるのにゃ」
獣人猫族の目を見開いてスグルの方を見る。
「ああ、俺も死んだんだよ。てかお前らゴブリンにやられたのか?」
ジェイル達の実力はバトルロワイアルで戦ったこともあってよく知っている。
それだけにゴブリン如きにやられるなんて信じられなかった。
「ああ、リィースの近くの森で探索してたらウサギを担いだゴブリンを見つけてな。どこかに向かってる様子だったからつけてったら知らない谷に出たんだよ」
「そんなとこがあったのか」
「それで俺らはそのゴブリンが降りてった道を辿ったらよ、谷の下にえらいでかい集落があったのよ。どうすっかなって言い争ってたんだがな」
「そこでリーダーが行ってみたいなんて言わなかったら死ななかったでしょうに。反省してくださいまし」
「そうだね。リーダーは反省すべきだ」
話している途中で復活したのだろう。
修道服を着たユーリと黒尽くめのナイが後ろから突っ込んだ。
それにジェイルはバツが悪そうに頭を掻く。
「いやだってよ、折角なんだぜ?」
「何が折角です。大した準備もしていなかったのにいきなり突っ込んでいったリーダーに何か言えますことで?」
「……すまんユーリ」
かなり怒っているユーリに叱られシュン、となる。
そんなジェイルは放っておいてスグルの方を向いた。
「お久しぶりですスグルさん。そちらも死んだのですよね?何で死んだのですか?」
死んだ原因を話すなら向こうのフィールドのことも教えないといけない。
今の段階でそれを言って良いものか……と考えて、ピコン、と良い考えが思い浮かんだ。
「ああ、もちろん無理にとは言いませんわ。少し気になっただけですので」
少し悩む間があったからだろう。
ユーリは慌てて手を横に振る。
「いや。どうせならお前らも巻き込んでやろう」
「リーダー。何かそこはかとなく嫌な気がするんですが」
「おいスグル、その顔やめろ。怖いから」
(全く失敬な。折角良い考えが思い浮かんだのに)
「ところで、お前らまだ鉄装備かよ。玉鋼はどうした?」
「おま!玉鋼なんて今の値段知ってて言ってんのか!?鉄の50倍は高いんだぞ!」
「そうですよ!ただでさえ金欠なのにそんな高価なもの買えません!」
それを聞いて驚く。
いくら希少価値があるからってそこまで高く設定したのか。
たぶん最初だけで出回るほど安くしていくんだろう。
「じゃあお前ら、俺が少し依頼したいことがあるんだがよ。それの報酬が玉鋼製の装備一式ってのでどうよ?」




