第五十四話 敵の存在
【祝】
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扉を開けようと力を強く込める。
すると見掛け倒しのように、手をかけたそばから扉が崩れ始めた。
既に限界が来ていたのか、扉としての最後の役目を果たして地面に扉の残骸として崩れていく。
(チッ。これじゃ奇襲なんて出来ないか。相手もこっちに気づいたみたいだしな)
ちょうどその時、頭の中に何処かで聞いたような声が響いた。
《試練が開始されます》
急に響く声にびっくりして声を上げる。
ルーが訝しげに見て来たからどうやら聞こえたのはスグルだけのようだ。
(それにしても試練って何だよ。中にいる敵がそうなのか?)
いつまでも気にしていては進まないと判断して中の空間に目を向ける。
しかし、予想していないほどにその空間は真っ暗で、【鷹の目】を使ってさえ満足に見ることもできない。
そして中の敵もこちらには気づいているのだろうが、動こうとはしていなかった。
「ちょうどいい。敵はこっちには興味ないみたいだ。取り敢えず明かりを投げるぞ」
スグルの【空間把握】でさえ満足にその部屋の大きさを測ることができない。
中が暗闇で尚更だ。
手に持っていた松明を部屋の端に投げる。
しかしそれでは焼け石に水といった感じで部屋全体を見渡すはおろか、10メートル先でさえ見る事は出来なかった。
「くそっ、こんな光じゃダメだ。しかしこれは暗いな。せめて光るコケなんかがあればだいぶ違ったんだが」
『一度撤退するか?』
「いや、【空間把握】もあるしこのまま行く。さっきも言ったが逃げる準備はしとけよ」
そしてスグルは腰にさした刀を抜き、
ブシュブシュッ!
と一番近くにあった敵の一部に斬りつけた。
以外とその肉体?は柔らかく、簡単に斬り裂ける。
それに少しはこたえたのか、
ブゥオオオォォ!!
と低い音が部屋全体を大きく木霊する。
同時にスグルの体を今自分が斬りつけた棒のような物が大きくしなって打ち付けた。
「ぐうっ…!」
そのまま大きく吹き飛ばされる。一気に敵が【空間把握】から消えるほど吹き飛んだ。
背中にとてつもない衝撃が襲いかかる。
「グッ……はぁ、はぁ」
部屋の壁に打ち付けられたらしい。
一撃でかなりのダメージが襲って来た。
それよりもだ。
(俺が反応に出遅れた!?こんな巨体のくせになんてスピードだよ!)
直径50センチはありそうな先ほど斬りつけた棒、いやしなりかたからして触手だろうか。
その直撃を直に受け身も取らずに受けてしまった。
既に腹に着込んでいた服は破けている。
(相手は触手一本動かしただけで全く動いてねえ!なめんのも大概にしろよ!)
このような事些事だとばかりに一本の触手だけがうねうねと動いている。
それが何よりスグルの琴線に触った。
『主君、大丈夫か!?』
ルーが念話を飛ばしてくる。
その声はかなり心配しているようだ。
「ああ、大丈夫だ。ただ正直これは無理だな」
『では……』
「ああ、予定通りお前は逃げとけ。あとで迎えに行く」
『……承知』
悔しげな声とともに入り口からルーの反応が消える。
恐らく外に出て言ったのだろう。
「さて随分舐めてくれたなぁ。せめて一つだけでも傷は作ってやる」
こちらをじっと見つめてくる暗闇に浮かぶ二つの赤い目を見てそう言った。
「行くぞ……」
初っ端からトップスピードで相手の全体に近づく。
先ほどまで敵の一部しかわからなかったが遂に敵の全貌を、いや前半分だけだが把握できた。
巨大な頭部と短い胴体。
そして下には8本の足がそれぞれ分かれて付いている。
そして決めつけは【鑑定】による敵の正体。
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種名:クラーケン(Lv.147)
【スキル】
不明
【ユニークスキル】
不明
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フォレストタイガーの時もそうだったが鑑定のレベルが低い為か敵の名前とレベルしかわからない。
しかし、今知る限り最も強い敵というのだけが分かる。
正直、今のスグルなら最初に出会ったフォレストタイガーにだって勝てると踏んでいる。
レベル差はもちろんあるがそれでもあの頃とは違い、ユニークスキルも手に入れたし装備も違う。
しかし、これには全く勝てる気がしなかった。
身体は柔らかく、簡単に切りつけることができる。
しかし、それくらいなんだと言わんばかりに巨体をしならせ、相手を打ち付ける。
(……あ。そういえば今日の朝飯食ってなかったじゃん。ユニークスキル使ってねぇ…)
そこまで考えて初めて気づいた。
そりゃ万全の体勢じゃないんだから倒す以前の問題だわ、と自嘲してクラーケンに斬りつける。
ぐわん、と先程は簡単に切り裂いた足は簡単にスグルの刀を打ち付けた。
クラーケンの足が自分の身体に纏わりつくのを感じる。
「ぐっ……舐めんなよクラーケン。次は絶対てめえを殺してやる」
そして最後にその部屋にはクラーケンを照らす、青白いポリゴンが散っていった。
4/11)封印を試練に変更しました。




