第四十八話 正体
今日は短いです。
決闘を終え、刀を腰に戻す。
それにしても、やはりユニークスキルというのは格が違うと言えるだろう。
(他にもユニークスキルはあるだろうしできればもっと集めたいな)
満足げに頷いた後、スグルはサミュエルに目を向ける。
「で、結局あんた誰なんだ?」
「まあまあ、酒でもどうだい?負けたし一杯おごるよ」
奢られるのに悪い気はしないので元の酒場に戻る。
先程の女の子は特に嫌な顔せず、むしろ嬉しそうにサミュエルと話す。
その様子にスグルは自分の予想は外れてなさそうだと思った。
「さっきはあんたが誰か聞いたが先に俺から答えを出しておこうか」
「んー?」
「まず朝出る時から誰かがつけているのは分かってた。神殿からここに来るまでもな。で、さっきの女の子への態度からしたらあんたは嫌われても良いはずだ。でも女の子はあんたに好意的な態度を取ってる。そこからあんたは普段は人気ある人なんだろ。あと、これも恐らくだがあんたのさっきの態度は俺がどう対応するかというのを調べるため。その証拠にあんたは俺が声をかけてからは女の子に見向きもしなかった。で、最後にあんたの戦闘中の態度。これもさっきのチャラ男っぽい感じはかけらも無かったしおれのことを測ってるってことも推測できる目つきだった」
手に持ったグラスをググッと傾ける。
「で、そんなオレはお前から見てどんな人物なんだ?」
「これは完全な推測だが、俺のことを調べてこいって依頼もしくは命令を受けた人物だ。さらに付け加えるなら俺を調べてこいって依頼をする人物としては候補は三人。一人はさっき神殿で俺の魔力が高いと知った神殿側の誰かだろう。だが、これは余りにも時間が短すぎるしなにより、朝からの尾行の正体がそれこそわからなくなる。そこでこれは除外だ」
「ふむふむ」
「で、次に挙げられるのがこのリィースの領主だ。あの人も昨日の会談では馬鹿みたいに振る舞ってたが腐ってもこの町の領主だ。この町の顔を見たら少なくとも愚鈍でないことはわかる。それに一応客人としての俺たちが街に出るんだ。護衛もつけたくなるだろう。しかし、それならあんたがつっかけて来た理由がなくなる。だからこの人は可能性が無いわけじゃないが低いだろうな」
サミュエルは目を瞑ったまま次を促す。
「で、君の中では最後の人物が一番有力ってわけだ」
「ああ。言いたくはないがな。恐らくはヘルネ王国総統リースティア閣下だ。理由としてはさっき言った護衛に加えて会談でうちの馬鹿ギルマスが俺に付加価値を付けやがったからな。それの調査ってとこだろ」
しばらく黙っていたが遂に両手を叩いた。
「負けだね。大負けだ。ここでシラ切っても良かったけどここまで頑張った君にそれをするのは野暮だし、どうせ調べれば分かるだろうからね。うん、君が言ったのはほとんど正解だと思う。まあオレは依頼主の思惑は知らないってだけだけどね。じゃあちゃんと名乗ろうか。オレは『軽風』のサミュエル。ヘルネ王国専属冒険者だ」
「…………で?」
二人はだからなんだ、という顔をする。
「いやいや、専属冒険者って凄えんだぜ?」
「ああ。こっちから話振っといて悪いんだが正直俺らからしたらおっさんが誰とかどうでも良いんだわ。まあ後でリィースティア閣下に釘刺すくらいか」
「お兄、迷惑料でふんだくれるんじゃない?」
「それ良いな。500万くらい即金で渡せるんじゃね?てわけで俺らちょっとあんたの主人んとこ行ってくるからまたな」
そう言って席を立つ。
サミュエルは一瞬唖然とした顔で出て行く二人を見送ったがハッとなって直ぐに追いかけた。
いや、しようとした。
「お代、5000ゴールドになります♪」
サミュエルの腕を掴んでニコリと女の子が笑う。
そして机の上に散乱する空の皿と店で一番高かった筈の空になってる酒瓶を見て今度は完全に頭の線が一本イった。
「あんの糞ガキィ!」




