第四十五話 魔力と属性
今回は会話文が殆どになっちゃいました
「では次に魔力の属性について調べましょうか」
オルグは爆発があった後とは思えないほど普通に話す。
そして部屋に置いてあった棚から新しく水晶玉を置いた。
「いや、こっちは壊してしまったんだが。弁償とかは無いのか?」
「別にそれ程高いものでも無いですし、魔力開放の受付時に貰った料金で十分です。さ、そんなことよりこの上にさっきと同じように手を置いて下さい」
何か釈然としないまま誘導されまた先ほどと同じように手を置く。
すると微かにだが、何かが吸い取られる感覚がした。
「今スグルさんの魔力を吸い出してます。あ、もう大丈夫ですよ」
1分ほど経ったらそう言われたので手を離した。
水晶の中で微かに光が揺れ動いている。
「属性の検査は5分ほどかかるので、もしよろしければ魔力について少しお話でもしておきましょうか?」
折角なので聞いてみることにした。
「魔力というものはそもそも、この世界のどこ、だれ、何にでも存在するものです。もちろんそこの椅子にだって内在してます。ただ内在する量、質には違いがあります。そして自身の魔力を行使すること、これが魔法です」
「魔力を私たち人間やドワーフ、エルフなどが行使するためには体内の魔力回路を開放する必要があります。先程の魔力開放というのは魔力があるかどうかを測定すると同時に魔力回路をこじ開けました。なので今、そこの水晶に魔力を流すことができたわけです」
「魔力を行使するといっても人にはそれぞれ得手不得手の属性が存在します。あ、属性というのは魔法の属性のことです。火、水、土、風、光、闇、そして無。この7つが魔法の属性となっております。昔は他にも属性があったとされていますが今では眉唾な話ですね」
「何故魔法の属性で得手不得手があるのかですが、そもそも魔力は全て同じものではありません。例えば僕の魔力とスグルさんの魔力でも質、量、何を取っても同じではありません。当然自分の魔力と相性が良い悪いも出て来ます」
「ちなみにですが、火、水、風、土の四属性の中で一つの属性に適性がある人のことを『シングル』、二つで『デュオ』、三つなら『トリプル』、四つで『カルテット』と呼ぶことが多いです。ただデュオの人で千人に一人、トリプルなら十万に一人いつかどうかの世界です。カルテットなどは見たことすらないですね。また、当然ですが光や闇の人もいますね」
「無属性は特別で、自身の魔力をそのまま使う形となります。なのでこれは適性、というより魔力がきちんとある時点で使える属性なので適性とは言えないですかね」
「そういえばですが、簡単に属性ごとのコンセプトを教えておきましょうか。火は破壊を、水は再生を、風は自由を、土は防御を主としてますね。ただ勿論これはあくまで戦闘面での話なので普通にいろいろな使い方があります」
「適正についてですが、適正がなくても一応その属性の魔法は使うことができます。しかし期待はしてはいけません。適性があるのとないのとでは100倍はその魔法の性能に差があると思って下さい。それほどに適性というのは大きな壁なんです」
「ちなみに種族ですが僕やスグルさん、ミウさんたち人間は可もなく不可もなく。魔力の行使は十分に可能です。ドワーフも私たちと同じ部類に入りますね。そして魔力の行使がダントツで上手なのはエルフですね。逆に獣人は魔力を行使すること自体が難しいです」
「とまあ、こんな感じですがどうですか?」
かれこれ10分はしゃべり続けていたオルグだったがひと段落ついたのか確認して来た。
どうやらオルグは好きなことには夢中になるタイプだ、とスグルの中で完全にオルグの印象が固定化された。
「ああ、分かりやすくて助かったよ」
「そうですか、それは何よりです。では水晶で適性を確認しましょうか」
そう言って水晶玉の方を向く。
最初はただ白い光が揺らめいていたが今は中で緑と青がそれぞれゆらゆらと蠢いている。
また、水晶の一番下では黒いモヤがかかっているように見えた。
「おお、すごいですね!スグルさんの適性は水属性と風属性に闇属性ですか。一応闇属性は四大属性とは違う括りに分類されるんでスグルさんはデュオの魔力の持ち主ということに成ります」
「そうなのか。そういえばミウは何の属性だったんだ?」
後ろを向いてミウに聞いてみる。
「ミウ?ミウは風と光だったよ!風はお兄と一緒だね!」
「風は一緒か。今度やり方教えてくれよ」
「良いよー!」
「さて、魔力開放も終わったことだしそろそろお昼ご飯食べに行くか?」
「いこいこ〜!お腹減ったよぉ」
「はは、待ってくれてたし今日は奢ってやるよ。て訳で今日はありがとな、オルグさん」
「いえいえ、これが僕の仕事なので。また何かわからないことがあったらお尋ねください。大抵のことなら答えられますので」
オルグは神殿の入り口まで見送ってくれた。
丁度上に昇った陽の光を手で遮りながらスグル達は神殿を後にした。




