第四十三話 神殿
部屋の中でうつらうつらとしながら目がさめる。
目に入ってくるのは勿論昨日の夜見たまんまの天井だ 。
そういえばパーティーの後すぐ寝たんだっけかと思い体を起こす。
すると頭に鈍く痛みが走った。
「うお、気持ち悪」
吐き気がこみ上げてきたのでトイレで用を済ます。
貴族のトイレだからか、水洗式の綺麗なトイレだった。
出すもの出して気分良くなったためスグルは部屋の中をよく見る。
そして初めて隣のベッドで、ぐーすかと寝ているミウを見つけた。
寝間着姿で布団は完全に蹴飛ばしている、寝相が悪い見本みたいな形だ。
まあ寝相は人それぞれだしとやかく言うつもりはない。
見ていて当分は起きなさそうだと思いながら窓を開ける。
丁度街のさらに向こうから太陽?が登ってきたのが見えた。
この世界は太陽は地球と同じであるが、夜になると空の風景は地球とは全く異なる。
一等星などそこらかしこに見えているし、月ほどの大きさで光っているのも2つある。
しばらくするとミウも起きてきたため一緒に部屋から出る。
そしてメイドさんに案内してもらって朝の食事を食べる。
今日はリーシェからも言われていたが自由の日だ。
ミウとリィースの街を案内してもらうことになっている。
「今日はよろしくね、お兄!」
「ああ、しっかり頼むぞミウ」
今日、ゆいは別行動を取っている。
いつも付いてくるし逆に珍しい。
門番さんに挨拶して領主の館から出た。
この館の周りは静かだけど下に降りていくにつれて騒がしくなっていき、10分ほどしたら屋台の端に着いた。
「で、今日はどこを紹介してくれるんだ?」
「そうだねー……お兄の場合武器なんかはアオイさん、だっけ?その人が用意してくれるんでしょ?」
ああ、と頷いておく。
「普通にアイテムなんかもリーシェさんのとこかダンテさんのとこで買えばいいし……最初は神殿いこっか?サブ職業も開放したいんでしょ?」
「そうだな、神殿まで案内してくれ」
ミウは大通りから少しそれた道を歩いていく。
屋台が並ぶ大通りは活気がよく、人で溢れていたからだ。
道をいくつも曲がって数分ほど歩いたらちょうど開いた場所に出た。
「後ちょっとだよ、あれが転職の神殿」
そう言って右手の方を指差す。
視線を右に向けていくと、白い大理石っぽいのでできた、いくつもの柱で外側が支えられているかなり大きな神殿が見えた。
「てかお兄ってもしかしてだけど神殿来たことすら無いんじゃない?」
神殿への短い階段を上りながらミウがそう聞いてくる。
「確かに。死んだことなんてないし、転職なんてするつもりなかったし」
「死んだことないって相変わらずだね。丁度いい機会だし神殿でできるいくつかのことを教えてあげるね!」
「いや、これまで使わなかったしこれで良いんだが……」
と、スグルの声は完全に無視して話し始める。
まず神殿だが、主な機能は4つある。
まずは、蘇生場所。
これはこの世界でプレイヤーが神の加護を受けていると言う設定だ。
じゃないとこの世界の理に反するとか公式でも書いてあった。
2つ目は今日のスグルの目的である転職。
転職では自分の才能に見合った職業を選ぶことができる。
ただ、一度決めると変更することができないので注意も必要だ。
そして3つ目は魔力開放。
これはプレイヤー、AI関係なく全ての人に平等に与えられる試練となっている。
人には誰でも魔力は体の中にあるが、それを使うには才能が必要。
ただ10人に一人程度の割合でしか魔力を扱える才能がなく、また、体の中にある魔力の量も人それぞれ。
この事以外にも先の転職の件だって個々の才能やら能力やらが重要視される世界、それがフォーチュンだ。
リリース当初の頃はこのことに対してかなりの批判が降り注いだが、株式会社フォーチュンは全く相手にすることなくそのまま続行した。
そのせいでゲームを辞める人も一定数はいたが、やはりこの世界の魅力に当てられてしまったのかかなり少ない人数だった。
話が逸れてしまったが4つ目は図書館だ。
各神殿ごとには莫大な量の本が内蔵されて、それが一般に公開されている。
もちろん秘匿されているものもあるようだが普通に生きる中では公開されているもので十分だ。
ただ使用料として自由意志のお布施があるが少しでも入れるのがマナーみたいなものだ。
「こんなものかなー!わかったお兄?」
「ああ、サンキューな。それにしても図書館があったなんてな」
「図書館は結構ミウも使ってるよ!と、次だね、お兄」
いつの間にか並んでいた列が消化されて、一番先頭に立っている。
丁度真ん中の受付が空いたのでそこに移動する。
「こんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付の人が聞いてくる。
受付なら女性が定番なのに何故か男性だ。
「レベルが50を超えたのでサブ職業を設定したい」
「了解しました。では、こちらの道を歩いて行きますと、奥に一つの扉がございますのでその中に入っていただきます。そこで転職をお願いします」
そう言って何か空中でしていると無数にある扉の中で真ん中にあった扉が開いた。
「あ、お兄は転職するのが初めてだからついていってもいいですか?」
「そうなのですか?サブ職業の設定と聞いていましたが、転職は初めてでしたか。わかりました、妹さんも通っていただいて結構です」
礼を言って中に入っていく。
通路はかなり狭く横幅1メートル少しくらいだ。
壁は白く輝いて、時折よくわからない紋様が浮かぶ。
少し歩いたら奥に見えていた扉に着いたので扉を開ける。
中に入ると、部屋の中央には水晶玉が浮いて、光を放っている。
周りは暗く水晶玉の光がなかったらすぐに闇に飲み込まれて行きそうなほどに漆黒だった。
「お兄、その水晶に手をかざしてー、そう。文字が浮かんできたでしょ?それで好きな職業に設定すればいいだけ!」
そう言われてスグルは文字をスライドさせていった。
中途半端なところで終わってしまってごめんなさいです。
更新ペースを週2〜3回に固定しようかなと思っています。まあ、今と対して変わらないですw




