第四十二話 立食パーティと閣下
夜、会談から数時間後小さなものではあるが立食パーティが催された。
参加したのは館の人間や、始まりの町の兵士たちだったが当然、スグルやゆいも混じっていた。
最初は始まりの町側とヘルネ王国側の人間でそれぞれ固まっていたが、リースティアとリーシェ、シルクとルージュが率先して会話をしていたので兵士たちも警戒をといて相手側の人間とも話すようになった。
ミウやゆいは誰それ構わず一緒に楽しんでいた。
パーティといっても男が殆どだったため容姿も相まってパーティの花になっている。
スグルは皿に食事を盛った後は壁の端に寄って一人でいた。
社交性がないと言えばそこまでだが余りうるさいのは好きじゃない。
皿の上に乗せた料理を口に入れる。
(おっ、この料理もイケるな。全体的にかなり味が洗練されてる。とってぃに二歩及ばないほどか。でもこれほどうまいならさっき見た目で辞めたゲテモノっぽい料理も美味しいのか?)
そう思ってスグルは取りに行こうとすると、目の前に影がさした。
上を見上げると見知らぬ金髪の男性が立っている。
「おう、リーシェ殿の秘蔵っ子じゃないか。どうしたこんな端で一人なんてよ」
相手はスグルのことを知っているような口ぶりで話す。
どこかで会ったかと疑問に思っていると相手は納得したように、ああ、と言う。
「そういえば素顔で会うのは初めてか。俺はあれだ、昼頃リースティアの嬢ちゃんの横に護衛で立ってた金属鎧だ。俺はライアン。気軽にライって呼んでくれて良いぜ?」
「そうか?じゃあ遠慮なく呼ばせてもらう。で、ライ。俺はあの料理を取ってきたいんだが」
スグルは片手に持った空の皿を見て言う。
「おお、すまん。じゃあ待ってるから取ってきてくれて良いぞ」
(誰も一緒になんていってないんだが……逃げられそうに無いしせめて美味しそうなの取って戻るとするか)
そう思って料理が並んだ棚から美味しかったものを取る。
ゲテモノ料理はやはり殆ど残っていたので少し取ってライアンのところに戻った。
「うお、そのゲテモノ食べるのかよ!それ美味しいのか?」
ライアンが驚きの声を上げる。
やはりこの世界の住人でもこの料理は好き好んで食べるものでは無いようだ。
「人生何事も挑戦だぜ?」
そういってスグルは口の中にそれを入れる。
一口で食べれるサイズのそれは口の中に入れた瞬間に弾けた。
(うおっ、なんだこれ。見た目は完全に明るいオレンジやらピンクだったけどそれは薄い膜で中には……これは透明のクリームか。いや、微妙に味が薄いか。で、中に入っていた黒いカスみたいなのはタコみたいな食感だ。でも噛むたびに甘みが飛び出してくる)
「ライ、これかなり美味しいぞ。どっちかと言ったらデザート向けだ」
「マジでか!?じゃあ俺も一個取ってくるか」
「俺の分も追加で頼むわ」
会って数分でパシリに使うスグルだが、ライアンは、おう、と快く数個のその料理を取って戻ってくる。
そして恐る恐る口に運ぶとスグル同様感嘆の声をあげた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「それで、俺に何か用か?流石に何もなく話しかけてきた訳じゃないんだろ?」
しばらくしてスグルはそう聞く。
それを聞いてライアンは首をかしげる。
「うんにゃ?ああ、急に俺が来たからなんかあるって思ったのか。いや、確かにリースティアの嬢ちゃんはスグルに気が向いてたけど俺の方は特になんも。せめて言うなら好奇心、ってやつか」
「好奇心?」
「そ、好奇心だ。あの伝説のリーシェ殿にシルク殿。彼らとは異質。いや、あちらの方が異質なんだがな。そんな人から何かしらの興味を持たれている存在。気にならないはずがないだろ?」
スグルに向かってフォークで指す。
「スグルは自分のことをもう少し知るべきだ。でないとすぐに喰われちまうぜ?リースティアの嬢ちゃんは興味あることには突っ切るタイプだか……」
途中で言葉が止まる。
不思議に思って視線を皿からライアンに向けると顔が青く、少しばかり汗が垂れていた。
「おい、どうしたライ」
「……いやはや。ワシのことを嬢ちゃん呼ばわりかのライアン。いつまで経ってもその頭では理解できんのか?」
後ろから凛とした声が響く。
思わず後ろを向くとそこにはパーティー用にドレスに着替えたリースティアの姿があった。
やはり耳はピクピクと動いているのが可愛らしい。
「いやいや、つい口が滑っただけじゃないか。て訳で俺は退散!」
「これっ、逃げるでないライアン!」
ライアンは知らぬ間に遠くまで逃げていく。
どうやら嬢ちゃん、というのは禁止用語らしい。
パーティー会場と言っても走ると目立つため、リースティアは声で注意するにとどめた。
そしてため息をつくとスグルの方に向き直る。
「うむ、ワシの部下が迷惑をかけなかったか?あやつ腕は良いのじゃが性格に多少難ありでの。根は良い奴じゃ」
「いえいえ、こちらこそ楽しませていただいております。食事も美味しいし、このようなパーティーに招いて下さりありがとうございます、リースティア様」
「……お主は別にワシの国の貴族でもなんでもないのじゃ。それほど固く喋らんでも良い。そうだ、近づきの印にリースと呼んで構わんぞ?それ程歳の差もなさそうじゃしの。こちらはスグル、と呼ばせてもらうぞ。スグルは何歳じゃ?」
「ではお言葉に甘えて。……俺は今年で20歳になるな」
その言葉にリースティアが驚く。
「なんと、ワシよりも年上じゃったか。ワシは19歳じゃからの」
その言葉を聞いて逆にスグルは驚いた。
第一人称もワシだし、言葉もとても綺麗で正しくしゃべっている。
絶対見た目詐欺でまた200歳とか言ってるんじゃないかと思っていた。
「まあ、そういう訳じゃ。今日のところはワシもお暇しておこう。また話そう、スグルよ」
少しするとそう言ってリースティアは元のグループの方に戻っていった。
しばらくしてパーティーも終わりを迎えた。
文章の起伏が少なくて…物足りねぇ




