第三十九話 リィース到着
今日でテスト2日目。
ペース落ちてごめんなさい〜
モンスターの襲撃から1日半が経った。
「うお、あれがリィースの街か」
「あそっか。地味にお兄はじまりの町から出たことなかったね。じゃあお兄案内したげるよ!」
「おう、サンキュー」
「君たち、一応使節ってことで来てるんだからね〜」
「分かってますよ」
それぞれがリィースの外壁を見た感想を言う。
ここからまだ1キロ以上は離れているだろうが既にリィースの街の外壁がはっきりと横に広がっているのが見える。
少なくともはじまりの町より広く見える。
のんびりした空気の中リィースの街に近づいていく。
そしてもう目と鼻の先に来た時スグルはふと疑問に思った。
「そういえばギルマス、リィースの街に使節で行くって伝えてんのか?」
「伝えてないよ?」
リーシェは、ん?と首をかしげる
「いや、言っとかないとダメだろ!?」
「大丈夫!強襲ゴーだよ〜」
「強襲って襲わないからな!?というか言っとくの強襲以前に常識だろ!」
「だがその常識を覆す!」
「だからダメだって言ってんだろうがこのバカギルマス!」
どーん、と胸をそらすリーシェに大声をあげる。
いつの間にか門間近まで来てる。
周りにはまばらに人が居るがそれでも完全に荷馬車で列をなして進んでいるスグル達は完全に浮いている。
「とまあ冗談は置いといて、だ。勿論打診はしておいたよ。その証拠にほら」
そう言って門の方に目をやる。
門の方から門番ぽい人がこっちに出て来ているのが見えた。
「ようこそリィースの街へ。私はリィースの警邏部門長を務めております、アクセラと申します。連絡にあったはじまりの町闇ギルド長リーシェ・エル・グリモワール様で間違いないでしょうか?」
馬車の隣まで歩いてくると、その門番はこちらの馬車を覗きながらそう尋ねてきた。
兜をかぶっているので顔は見えないが高い声と名前からして女性だろう。
「ああ、そうだよ。後ろの3台に積んでいる荷物はそちらの辺境伯殿への手土産さ」
「了解しました。こちらは出来ればでよろしいのですが何か身元を証明できるものなど提示することは可能でしょうか?」
身元証明と言っても提示できるのはギルドカードぐらい。
ステータスで名前だけ表示とかできたらいいんだが。
「ギルマス、ギルドのカードで大丈夫か?」
「うちは外のギルドとは違って単体で存在しているんだけど大元は同じだからいけるはずさ」
そう言われたので銀色のカードを取り出す。
鈍色に光るそのカードには名前と所属ギルドのみが記されている。
裏側には冒険者ギルドならランクが表示されるが、闇ギルド(うち)にはそんなものがないのでなにも表示されていない。
「おお、ギルドカードですか。拝見させていただきます。……確認完了しました。皆様方この街に入っていただいて問題ありません。このまま直ぐに辺境伯様のお館に行かれますか?」
「出来ればそうしたいね。この後ろの荷物も渡したいし何より挨拶をしておかなくちゃ」
「わかりました。ではこのまま私が先導させて頂きたいと思います。他のものに門を任せてくるので少々お待ちを」
そう言ってアクセラは門のところに戻る。
そして近くにいたもう一人の門番にひと二言喋った後馬に乗ってこちらに戻ってきた。
「お待たせしました。どうぞ、お通り下さい。ただですね、そちらのウルフは従魔でしょうか?」
「そうだよ」
「申し訳ありませんが、この街にいる間はこの銀輪を身体の何処かにつけていただく必要があるのですが……」
申し訳なさそうにアクセラが言う。
「だってさ少年」
『ルー、聞いてた通りだ。すまんが付けてくれないか?』
『良いだろう。右前脚に頼む』
「いいってさ。でも、その輪っか大きくない?」
直径30センチはありそうなその輪っかをそのまま付けるとすぐに落ちそうだ。
ああ、とアクセラが納得したように言う。
「従魔の銀輪は初めてですか?こちらは魔道具で伸縮自在なので、付けていただきましたら自動的に大きさは調整されます」
そう言われて納得したスグルはルーの右前脚に取り付ける。
言われた通り収縮して足にぴったりとはまった。
「ご協力感謝いたします。そちらの銀輪はおかえりの際に門番の方に返却下さい。それでは、ご案内いたします」
アクセラに続いて開いた門を通り抜ける。
「見た目はあんまり始まりの町と変わらないのな」
スグルはリィースに入ってそう思った。
門をくぐると広がっていたのはレンガ造りの家や店。
目の前には横幅が大体25メートルほどで先が見えないほどに大通りが続いている。
その大通りの端側にははじまりの町と同じで屋台やら食物店やらが乱立している。
さして言うなら人の数がはじまりの町よりずっと多い。
こちらは馬車だから動くのも一苦労だ。
アクセラが引導してくれているから多少はましだが良個人で行ったら動けなかった可能性が高い。
「今通っているのがこの町の大通りでして見ての通り周りにはたくさんの屋台が並んでおります。その中でもこの町でおすすめなのがエアバードの串焼きですね。屋台の中にもちらほらその名前が書いてあるでしょう?」
左右の屋台を見るとエアバード串1本20ゴルドで売っている。
時間があったら買ってみるのも良いか。
「そういえば人が随分と多いですね。これが普段なんですか?」
町の様子を眺めていたリーシェがそう聞いた。
「ああ、すみません。さすがに普段からこれほど多いわけじゃないんですが、実は2日ほど前にこの国の女王陛下であるリースティア閣下がこちらにお越しになられたのです。その姿を一目見ようとこの数にまで膨らんだのかと」
「なんだって?すると今から向かう辺境伯の館には女王陛下がいるのか?」
「はい、どうやらリースティア閣下が来られたのはそちらの町へ行こうと思ってのことだそうです」
「すれ違いにならなかったことに感謝すべきか枠外の出会いに悲しむべきか」
(いきなり会う人が辺境伯から女王様に変わったのかよ!て言うか女王なのに閣下なのか?閣下って確か軍人系の人が就く役職だったはずだけど……)
「あ、そろそろ門が見えて来ましたよ」
そう言われてスグル達は前の方を見やる。
すると中央に見えていた大きな館が意外と近くまで来ており、その前に鉄格子の門が見えていた。
「門の奥に見えているのが今向かっている辺境伯のご自宅となっております。まあ近くなって来たと言っても門をくぐって更に少し行かなければならないのですがそこは貴族の見栄ってやつでしょうかね」
顔が少し強張っていたからだろう。
アクセラが冗談を言って来た。
「と、もう門に着きましたね。話は先ほど通しておきましたので直ぐに行けると思います。少々お待ちください」
そう言ってアクセラが門の側に立っている兵士に何か告げに行く。
ひと二言話したかと思えば直ぐに鉄格子の門が開いた。
「さあ、こちらでございます」




