第三十二話 成り立ち
どうやら進行はリーシェさんが担当するようだ。
他の二人は何も言わずに口を閉ざしている。
「まず、そっちの三人にはある程度情報を渡しておくとしよう。少年から聞いているかもしれないけど今回は始まりの街、そして付近の草原や鉱山を覆っていた霧が消えてしまったため、急遽対策が立てられるようになった」
「早速質問や。スグルが言うには500年の間、霧がこの町やそれに類するもの、草原や鉱山なんかを覆っていたちゅうことらしいな。確かに急に普段のものが壊れたら驚くやろ。でも、なんで霧が晴れた程度でそんな対策をせんとあかん?と言うより、あんさんの言葉からするとその霧は何か重要な役割があったんとちゃうか?そして、それは確実に狙われると言っていた前のあんたの言葉と関係があるんか?そしてもう一つ。確かに事の一端にはスグルにも原因が有るやろうけど、せやかてスグルはこの町に所属しとるわけでもないし、こんな会議開いてまで使節団として連れていくちゅうのもおかしな話や。これについても納得いく説明をしてもらおか」
「いきなり沢山の質問だね……わかったよ。今日は話すつもりで来たし答えて行こうか」
早速ダンテが弾丸トークを始めたな。
この状態のダンテは完全に商売モードだ。
それぐらい本気で臨んでるって事か。
「まず最初の霧が晴れた程度で、って事だけどね。それを説明するためにはまずこの町の成り立ちを知ってもらおうかな」
「成り立ち?」
「そ。少し長くなるけど聞いててね。昔、それこそ何百年も前の話だけどね、世界には人間をはじめとした複数の種族たちが作った国々が一つずつあった。彼らはある時をきっかけにお互いがお互いを敵と思うようになった。しかし、それに不満を持つ者が現れた。曰く、自分たちの世界だけで終わるのはゴメンだ。他の人種とも交わり、様々な交流を行いたいと。その人物は同じ意見を持つ数人を集め、各国に訴えた。しかしその申請が通ることはなく、更に異端者として国から追われる身となった。そして彼らは各国に勝負を仕掛けた。トップがダメなら自分たちでその枷を外してやろうと。しかし、そう簡単にいくはずもなく彼らは敗れ去った。そして、血を吐く思いをしながらこの場所にたどり着いた。そこは誰もが入ることが出来なかった、霧の中。その頃から霧は存在したんだけど誰も霧を突破できることはなかった。しかし、彼らは通り抜けることが出来た。これには各国の追っ手も困ったらしいね。なにせ自分たちは通ることが出来ないんだから」
そこで一旦リーシェさんは口に水を含むとまた語り始めた。
「そして彼らは町を作った。この世界で認められないなら、自分たちがそんな環境を作り出せば良い。そう思ってね」
「……成る程」
「もう分かったかな。そうして作られた町がこの始まりの町。またの名を反逆者の住まう巣窟。そして、当時彼らの頭目をしていたのが私、リーシェ・エル・グリモワールだよ」
マジかよ。
聞いてすぐには言葉が出なかった。
道理でギルマスはあんなに強いわけだ。
「つまり、その、なんや。リーシェはんは昔種族を超えた関係を目指した集団のリーダーやったちゅう事やんな」
「そういう事になるね」
「で、外の世界では反逆者なんか呼ばれとって今まで交流を遮っとった霧が消えたちゅうことはこの町はヤバイんちゃうんか?」
「うーん、どうやら500年以上経って昔のことって割り切ってる国もあるらしいよ。外の世界でも異種族の交流が行われる土地も増えたっていう報告もある。ただ今でも自己種族が最上って考えてる国もあるらしいからそこら辺は分からないかな」
いち早く混乱から回復したらしいダンテが早速質問をしている。
「そういえば一ついい?」
「なにかな〜?」
会議が始まってゆいが初めて口を開いた。
「場合によっては戦争もある可能性があると考えてもいいのかな?」
「そうだね、今でも思想の違いが対立を生み戦争を引き起こす事に変わりはないだろうから」
「でも、少なくともリーシェにそこの二人は私よりも強いよね。それで戦争を恐れるってことはあるのかな?」
「恐れる?戦争を?」
どうやら戦争の心配をしたらしいゆいだったけどなにやら別の琴線に触れたらしい。
「私は、私たちは戦争を恐れるなんてことはないよ。全ては忌々しい存在をどうにかするためにこんな何百年もかけて生きて来たのさ」
忌々しい存在?
そいつが種族の壁を作り出したのだろうか。
話しているとどんどん謎が増えていく。
「そもそもなんで昔は種族間の交流が無かったんだと思う?」
「おい、リーシェ。そこは言わなくても良いんじゃないのか?」
途中でシルさんがリーシェに注意する。
彼らにも言えない何かは抱えているらしい。
しかし、リーシェは気にすることなく続けた。
「大丈夫だよ。別に知られて困ることは無いからね。で、話を元の戻すけど今のこの始まりの町をどう思う?」
「普通にいい町だなと」
「ありがとう。この始まりの町に沢山の種族がいることは知ってるよね。そんな状況で確かの最初は種族の壁もあったけど大きな問題は最近はめっきり聞かなくなっていたよ。その理由の一つはそれぞれの種族ある分野に突出した能力があったからなんだ」
「突出した能力?」
「そう。例えばドワーフは鍛治建築が得意だけど戦闘は苦手。私たちエルフは魔法と弓は得意だけど肉体労働は無理。そして獣人は魔法が使えない代わりに身体能力はどの種族よりも高い。それぞれの長所を伸ばしていたからこそ他の種族の短所を補って生きて来た。言ってみれば共生しているってことだね」
そして、とリーシェさんは話を続ける。
「共生する事が一番素晴らしい。実利を伴うしね。でも、そんなことは普通に考えたら分かるはずなんだよ。でも結果として、実際は交流が栄えるなんてことはなかった。それは使徒が介入して来たからなんだ」
何故だ。どんどんシリアス展開になってるんじゃ...
いつの間にか70話目。100話まで行ったらくっつけ作業もしますかね〜




