第三話 ユニークジョブ
side.ミウ
わたしは本人確認を終え、無事に始まりの町に転送された。
少しずつ人が増えていく町の広場でお兄の姿が確認できなかったから手短にメールを打ってスグルに送信しておく。
そして、メールボックスの中に一通のフォーチュン運営委員会からのメールがあるのに気づく。
それをこれから人が増えて混むであろう転職の神殿に向かいながら確認した。
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from.フォーチュン運営委員会
このたびはバックワールドオンラインに再びお越しいただき誠にありがとうございます。
前回行われたベータテストの攻略貢献度ランキング5位のミウ様には特典としてユニークジョブを用意させていただきました。転職の神殿にてご確認ください。
これからもバックワールドオンライン並びに弊社をどうぞよろしくお願いします。
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メールを読み終えたわたしは歩みを止めて、再度メールを読みなおす。
そして次には全速で走り出した。向かっている先はもちろん転職の神殿だ。
(ユニークジョブとか運営さんマジあり!それにしても5位でユニークジョブってことはお兄は何もらったんだろ)
そう思いながらも、最短ルートを最速で走ってきたから、まだ転職の神殿はプレイヤーがまばらにしかいなかった。
そこで見知った顔を見つけたわたしは走ってきた勢いを殺さないままその人に向かって飛びかかる。
「ダンテさーん!」
ダンテさんは、わたしの突進を軽く体をひねって避けた。
そのせいでわたしは勢いを殺しきれずに向こうの壁に思いきりぶつかった。
ドシーン!!
と大きな音が広がる。
わたしは抗議の声をあげた。
「なんでダンテさんよけるの!」
「そりゃあ、あんさんの突撃受けたら逆にわいが吹っ飛んでしまいまんがな。かんにんや」
緑色の髪をして、殆ど線目のまま軽く笑ってダンテさんはわたしを見下ろしてくる。
「久しぶりやの、ミウ。あんさんの兄貴のスグルはんはおらんのか?」
「いっしょにこっちに来たんだけど近くにはいなかったから先に神殿に来といたんだ。どうせすぐ混むでしょこの神殿」
「最初に神殿に来-へんかったらいつまでも職業が旅人のままやからなぁ。スキルも変なもんしか覚えられへんし。旅人のままフォーチュンにおるんはスグルはんぐらいのもの好きやちゃいまっか」
わたしはダンテの服装を見ながら頷いた。
「まあそうだろうね。それにしても【魔王】のダンテさんはまた商売人やるのかな?」
「わいから商売とったら何が残るっちゅうねん。ま、また最初は見習いからのスタートやけどな。そういうミウちゃんはまた盗賊スタートか?」
「ふっふっふ。今回のわたしは一味違うんだよ!」
そう言いながらわたしのメールウィンドウをダンテさんに見せる。
ダンテさんは珍しく細目を見開いて声を出した。
「ユニークジョブてあんさん凄いやないか!これまでは未確認やったけどやっぱあったんやな」
「運営様々でしょ!わたしは5位だったけどダンテさんは確か3位だよね。何もらったの?」
「ま、あんさんにはユニークジョブの情報ももらったしまあええか。わいは商会やな。そこの大通りのど真ん中に構えとる豪勢な建物や。まあスタッフも商品もあらへんから今は宿代わりにしか使えへんけどな」
「そっちも十分にすごいじゃん!今度おじゃまするね!」
「それまでには商品並べられるように頑張るわ。そろそろ転職に行った方がええんちゃいまっか?」
確かに話し込んでる間に周りにどんどんプレイヤーが増えてきている。
「そうだね!じゃあまた後でね」
さすがに混んできていたので、わたしとダンテさんはフレンドになって別れた。
転職の神殿に入ると、中はすでに結構な数のプレイヤーが受付に並んでいた。
そんな中でわたしは近くにいた初老の神官さんに声をかけた。
「転職したくて来ました!」
「おお、あなたもそうですか。いやはや、今日は希望の人が多くてですねえ、この老骨にはきついもんがある。ささ、こちらの部屋で御座いますよ」
(ごめんね、多分これからもっと混むと思うけど頑張って!)
そう心の中で謝り、歩き出す神官さんについていく。
「そう言えば、あなたがたの名前はなんというのですかな?」
「ミウだよ」
「ほほう、ミウどのですか。私はマルティンと申します。以後お見知り置きを」
この人もNPCなんだよね。
正直同じ人にしか見えないよ。
マルティンさんの名前をしっかり覚えたところで部屋の前にたどり着いた。
「転職の説明は要りますかな?」
「わかってるから大丈夫だよ!」
「ほっほっほ。これも仕事ですからな。良いジョブが取れると良いですのう。では、転職が終わりましたら勝手に外に出ていただいて大丈夫ですので、私はこれで」
「ありがとう、マルティンさん!」
そう声をあげながらわたしは部屋の中に入った。
中は10メートル四方程度の大きさで真ん中に透き通った水晶玉が浮かんでいる。
その風景はベータテストの時から変わっていなかった。
(さーて、ユニークジョブってなんだろ!選べるのは戦闘系が剣士、闘士、魔術師、付与術師、狩人、盗賊、召喚士で生産系が建築家、裁縫師、木工師、鍛冶屋、錬金術師、細工師とかだよね。個人的には戦うの好きだから戦闘系のが良いんだけどっと)
わたしは手を水晶玉にかざす。すると、目の前に文字が浮かび上がってきた。上から順に先ほど挙げた見習いクラスの職業。そしてスクロールしていくと一番下に
『双舞子』
と書いているジョブがあった。
これがユニークだと確信しながらそのジョブの詳細をタップする。
『双舞子 (ユニーク)』
二対の剣を手に舞うように敵を翻弄する動きを得意とするスピード型のジョブ。神速の二筋は敵を切り刻むだろう。
(やばっ、とってもカッコ良いじゃん!しかも双剣って前の盗賊が活きてくるよ!これ一択に決定!)
迷わずに双舞子を選ぶ。
すると水晶玉がまぶしいぐらいに光を放ち、わたしの体を包み込んだ。その光はすぐに消える。
これでジョブの変更は完了だ。
ステータスを開いたらジョブの欄には確かに双舞子の文字が記されていた。
「やったね」
わたしは上機嫌で転職の神殿を後にする。
するとちょうどお兄からのメールがきた。
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from.スグル
スマンスマン、なんかベータの2位の特典でフィールド一つもらってそこに最初から飛ばされたのよ。今は旅人のレベ上げ込みで探索してる。今日はここで過ごす予定だから夜あたり落ち合おうぜ
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(相変わらずお兄はマイペースだね。それにフィールド一つ貰うとか運営張り切りすぎでしょ!)
お兄に双舞子の事と今日の夜、ダンテさんの商館で落ち合うことをメールで伝えて昼過ぎに会う約束をしていた鍛冶師の所に走って向かった。
やっぱり評価得るのって難しいよね
感想だけでもくれたら嬉しい♪
(改稿済み)