閑話6
ヘルネ王国、リースティア城内の一室。
それなりの大きさの薄暗い部屋で中央には円卓が設置されており、円卓上のランプを中心に5人の男女が座っていた。
そのうちの一人、小柄な少女が口を開く。
「まず、皆が集まってくれたことに感謝する」
「いいってことよ。それで、今回は一体何の要件なんだ?俺ら全員集められるってことは相当な何かが出たか?」
「スタンビートは今現状で起きる場所はなかったでしょうし」
「前置きは横に置いておくとするかの。今日の議題じゃが、リィースの辺境に"天の霧衣"があるのはもちろん知っておるじゃろう。そこの霧が何やら晴れたようじゃ」
「なっ……」
「これがリィース辺境伯から送られてきた書簡じゃ」
そう言って一人一人に紙が配られた。
それぞれが紙を凝視して流し読む。
「……確かあそこは何故か霧の中を突っ切っても元の場所に戻っちまうんだったよな」
「私たちも通ることはできなかったわね」
「しかもそこの霧はそこにずっと存在し消えることなどなかった。そして中から出てきた者によると霧の向こう側には"始まりの町"があるとのことです」
誰ともなく息が詰まり、喉が乾く。
「ともかく。"天の霧衣"が消えたのはワシの情報からも確かじゃ。それに聞くところによると最近霧がまだかかっていた頃から出てくる人が一気に増えたという。これも霧が消えた要因の一つなのやもしれん」
「で、俺たちはどう動くんだ?」
「勿論、挨拶に伺うとしよう。これまでの交流を遮っていたものはないのじゃ。あの頃より時代は変化した。この使節にはワシ自ら出向こうと思っておる。大将軍並びに宮廷魔導師長にはついて来てもらう」
「「御意に」」
「財務大臣はこれらの費用並びに品々を7日で算出しておくように」
「わかりました」
「さて、向こう側には叛逆の英雄、リーシェ・エル・グリモワールがおる。生半可な心では喰われるだろう。ヘルネ王国総統閣下リースティア・ヘルネ・デ・ファルシの名において命ずる。此度の件は極秘で行われるものとし、一切の口外を禁ずる。また全力でことに当たるよう肝に命じておくが良い」
「「「閣下の仰せのままに」」」
各々が部屋を退出していく。
そしてレオン一人になった時、独り言のように呟いた。
「さて、突いたら何が出て来るであろうか。ドラゴンの尻尾か、或いは……」
静かに、しかし確実な光を持ってヘルネ王国は動き出した。




