第二十三話 鈍色の銀剣と最終決戦
「へえ、どうやら鈍色の銀剣のメンバー達が集まってるらしいぞ」
朝六時、十分な休息をとったスグル達は山の上でのんびりしながら呟く。
『主君、その鈍色の銀剣とはなんだ?』
「ベータ時代からあった大規模コミュニティの一つだな。長はガウルって奴でまさに指揮官って感じのやつだな。たまに酒を一緒に飲んでた」
ルーにもたれかかりながら首を捻りながら答える。
「他にもゆいとか戦う料理人とかいうやつもいるらしい」
『これからどうするのだ?』
「どうすっかねー」
現状ではスグルがダントツの一位だ。
だがあと6時間もあるならばゆいなどには抜かされる可能性が高い。
また、他のランカーを狩りに行くとしてもどこにいるのかわからないため効率が良く無い。
「結局草原に行くしか無いな」
『その鈍色の銀剣とやらが草原に来るのは何時だ、主君』
「今日の10時らしい。掲示板を使って大々的に言ってるからな。最後の勝負に出るんだろ」
『ランキング上位者が来るかもわからんのにか?』
「まあ、確かにランキング上位は来ないかもしれないな。だが少なくともゆいは来るぞ。俺を抜かすためには銀剣をまとめて倒すぐらいしないといけないからな」
『成る程、はなからの狙いは一人のみか』
「まあ主に考えてるのはゆいへの再戦だろうな。ベータの時一回負けてるし。それに他にもプレイヤーが来るかもしれないぞ」
『人が集まるからか』
「まあ、このまま隠れててもつまらんままだしな。イベントらしいイベントってのにも参加したいじゃん?」
『理屈じゃないのだな』
「人間理屈ばっかじゃ生きてられねえっての」
時に人は本能のままに生きる必要もあるのだ。
「俺たちももちろんその戦いには参加するぞ。というわけで後3時間くらいはのんびりしようぜ」
そしてのんびりと過ごし、8時ごろに朝の弁当を食べスキル【食は大事!】の効果で身体能力を向上させる。
そうしている間に時間は刻一刻と迫っていた。
そして、時刻は10時、イベント終了まであと二時間といったところだ。
イベント内でも一大イベントをやるかの様に生き残っている中で沢山のプレイヤーが草原に集まっていた。
見た感じでは1000人ほどはいると思われる。
血気盛んな者は周りのプレイヤーに攻撃を仕掛けたりもしたが直ぐに『鈍色の銀剣』が鎮圧していた。
何やら10時までは攻撃を禁止するという暗黙の了解ができていたようだ。
スグルも攻撃を仕掛けようかと思ったが流石にここで敵に回すのは得ではないと考え今は動かずにいた。
すると、銀剣が固まっていたメンバーの中から、一人の見るからに武人の面をした無精髭の漢が出てきた。
「さて、10時にもなったし参加者ギャラリーも増えた。コレはイベント内での小さな戦争だ!何もいうことはねえ。最後に生き残った奴が勝つ、単純なゲームだ!さあ、自分の力を見せてやれ!」
その漢、コミュニティ『鈍色の銀剣』の長、ガウルが声を張り上げる。
それに合わせて周りから剣と剣がぶつかり合い、魔法が各場所で弾ける音が鳴った。
「さて、俺らも行くか?」
『当然』
どうやら周りの奴らは俺と戦うことを避けるためか、一定以上の範囲には近づいては来なかった。
たまに突っ込んで来るやつもいたが一刀で斬り捨てる。
暫くただ作業のように斬っていると、
「私は鵜月と申します。スグル殿と見受けますが勝負、請けていただきたい」
と礼儀正しく勝負を申し込んできた人もいた。
「いいぞ?どっからでも来い」
「では!」
相手が剣を頭上に掲げ走って来る。それを見たスグルは鍔に手をかけ、腰を沈める。そして、
キンッ
と軽い音が鳴り響いた。
そして鵜月と名乗った女性の後ろで、カチャという音が響く。
そして自分の周りに温かい風が過ぎ去っていったのを感じた。
「スグル殿、これはいった…い?」
身体に異常がないと感じたのか、後ろを振り向きスグルに問う。しかしその答えはすぐに、自分の身体に帰ってきた。
「俺が現実リアルの方で習ってた刀術の一つさ。今のが見えてないなら修練が足りないぜ」
「いや、今のは明らかに速度の限界を超えていた…」
「まあここはゲームの世界だからな。レベル上げたんだよ」
そう言って鵜月は宙に舞う沢山のポリゴンの一つとなった。
そしてスグルは内心では別のことを考えていた。
(なんだよ今の動き!あんな速く動けるとかマジでやべえ!食事の効果にしても速すぎだろ。今のを見えないとか当たり前だわ。……もしかして今の俺って速すぎるんじゃね?)
そう思ったらすぐ行動しよう。
相手が気づかない間に銀剣に突っ込みに行くぞ。
「銀剣の本陣に一気に突っ込むぞ!」
『承知した』
そして、一つの風が戦場を吹き抜けた。
先日気づいたのですが、オンリーセンスオンラインの美羽と名前が被ってしまっていました。誠に申し訳有りません。
また、変更する気はございませんのでよろしくお願いします。




