第二十二話 ルーの能力
レイを斬り捨てポリゴンとなり散っていくのを見届けた後、スグルは凍りついた相棒のルーの方に向かった。
氷の中で固まっているルーから既に外に向かってポリゴンが浮き出て行っていた。
その姿を見ながら呟く。
「すまん、俺がもう少し早く気づいてたら対処も出来たんだろうが」
せめて、と思いルーの氷にも上級ポーションをかける。
ルーの周りにあった氷も先ほどと同じように溶けていく。
少しすると氷の上に横たわるルーの姿があった。
「ん?」
変だな、と思いもう一度ルーを見る。
確かにポリゴンは散っているがルーの身体自体は何も変わっていない。
普通プレイヤーが死んだなら直ぐに身体もポリゴンになるはずだ。
そう見ていると、散って行ったポリゴンがまたルーの周りに集まってきた。
そしてそこからルーの身体の中にポリゴンが吸い込まれていく。
「どういうことだ?」
スグルはルーをもう一度見る。
ポリゴンが吸い込まれていき、完全に吸収された。
すると、もう開かぬであろうルーの眼がパッチリと見開いた。
『む、すまぬな主君。再生するのに時間がかかってしまった』
「え、いや。どういうこと?」
ルーがそう言ってき、スグルは混乱しながら聞いた。
『ああ、主君の前で見せるのは初めてだったか。我の固有スキルに【不滅】があったのを覚えているだろうか?』
「ああ」
『それの効果でな、我は死んでも生き返るのだ。今さっき主君が見たようにな』
(何そのスキル、半分忘れかかってたけどチート一歩手前間違いないだろ。というか今回のイベントも死んだけどまだ参加できるって……イベント的にはありなのかね)
「そういうことか。ありがとうな」
『なに、礼を言うのはこちらの方だ。あのまま復活しても氷に阻まれた状態では抜け出すこともできなかっただろうからな』
「ああ、そこはどういたしまして。じゃあ、用も済んだしここで少し休憩していくか」
『了解した』
そうして一人と一匹は交代で見張りをしながら休憩に入った。
……………………………………
夜中の12時、動くものは少なくなり、静けさがあらゆるフィールドを包み込んだ頃。
森の拓けたスペース。
そこには何百ものプレイヤー達が集まっていた。
彼らの視線の先に立っているのは一人の男。
「てめえら、今日この場に集まってくれたこと感謝する。動くのは明日の10時、草原だ。ベータの上位でもあったランキング上位を打ち破り、俺達のコミュニティ『鈍色の銀剣』の名をこの世界に轟かせようじゃないか!!」
「「「うおおおおぉぉぉぉ!!!」」」
其はコミュニティ『鈍色の銀剣』、長。名をガウル。
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また、別の場所。
その女性は草の上に寝転がりながら星がたくさんの空を見上げる。
「今日はこれでおしまいかな。最後にえらくポイントが引き離されちゃったし、明日は本格的に狙いに行くよスグル。ミウちゃんとの戦いも楽しかったし、他にも色々と動いてるらしいし。明日は荒れるだろうなー。楽しみだよ!」
ゆいは明日の戦いを楽しく考えながら眠りにつく。
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「今日はゆいさんはあそこで寝るらしいッスね。不意打ちで倒せる可能性も高いッスけど、明日のラストスパートを見逃すわけにはいかないッス。今日はもう寝ることにするっスか。なにやらクランで集まってるところもあるみたいだし、必ず特集記事のネタを引っ張って来るッス記者。記者として、この世界のファンとして」
ゆいの後をつけていた記者はそう呟く。
そしてランキングを広げる。
相変わらず1位の名前の欄にはスグルの文字がある。
「二位のゆいさんを4000ポイント以上離しての一位スか。ジェイルチームが陥落しているところから見るにやられたようッスね。そして草原オオカミのルー氏は大きく下がってる。どうやらジェイルチームも爪痕は残せたっスか。どちらにしても明日のために今は寝るッス」
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二メートルは優に超えるだろう図体を持ち、背中には大きな出刃包丁を背負う中年の男性。その背後には無数のプレイヤー達が積まれていた。所々から「うぅ……」といううめき声が聞こえる。
「弱い。それにつまらねえ。1日無駄にしちまった。しかし、一応ランキングにも載ってるしこのまま終わってさっさと報酬もらってまた研鑽しなければ」
そして山積みにされた彼らに向かって彼の背丈以上もある出刃包丁を豪快に振り下ろした。
ポリゴンが無数の光とともに空中に消えて行く。
イベント終了の刻は近い。
書きたいことはもっと沢山、でも描写の表現が難しいです。
書いてるうちに上手くなればいいんだけど




