第十四話 ボス戦をしよう
ついに夏が終わってしまった...
太らないように気をつけないとね
闇ギルドのメンバーになってから既に1週間が経過していた。
スグルの胸ポケットには鈍く光る銀色のギルド証が入っている。
この一週間で特筆すべきこととしては鍛冶師アオイに暗器を作ってもらえることになった。
会うことはできなかったけれど、リーシェさんが説得してくれたみたいだ。嬉しいね。
もちろん、この1週間何もしなかったわけではない。
スグルのフィールドの草原はあらかた調べ尽くし、森もモンスターに気をつけながらだがある程度は探索を進めていた。
そのおかげでスグルのレベルは既に30になっていた。
旅人ジョブは普段から移動することで経験値を得られるためレベルを上げやすかった。
そういえば、始まりの草原のエリアボスを倒したパーティーが2日ほど前に出たらしい。
それ以降は続々と倒しているとのこと。
エリアボスというのはそのフィールドごとにいる強力なボスモンスターでそれを倒すと次のエリアに進むことができる。
この手のモンスターはエリアの決まった場所に常駐している。
このフォーチュンではエリアごとの見えない壁はリアリティに反するということで存在しない。
ただし、その代わりにフィールドが切り替わるラインに霧が存在しエリアボスを倒さない限りその霧を突っ切ってももとの場所に戻ってくる仕様となっている。
なぜそんな話を今しているのか。
そろそろ探索は一旦やめて攻略の方も乗り出さないといけないと思っている。
他のランカーたちはもう次の町に行ってるようだし。
「だからこの依頼はちょうど良かったさ」
「そう言ってもらえるとわいも楽やわ。他の人らからも素材は売ってもらえるんやけどやっぱ己の手で仕入れんとな」
「もう既にダンテなら次の町に行ってると思ってたんだけどな」
「ちょいとはじまりの町でやることが残っててのお。先日開店したんや。是非うちに素材が余っとったら売ってくれや。高値で買うで?」
カラカラと声を出して笑う。
スグルは今ダンテから次の町に行くためにパーティーを組んでエリアボスを倒すという依頼を受けていた。
まあ、非戦闘職によくある寄生プレイというやつだ。
「じゃあ今回のエリアボスの情報のおさらいやな。ベータのビッグスライムじゃなくなってな。まず、ボスの名前は草原ウルフや。あとは取り巻きのウルフが最初5匹おって追加で更に1分で1匹出てくるんや。レベルはデカいのが15で固定。取り巻きは10〜12レベや。
ボスの攻撃は嚙みつきと体当たり。取り巻きが全部倒されたら狂化が発動して動きにキレが増すんや。まあスグルはんならすぐ片つくやろ」
「見てみなきゃわからないけどな」
そうして歩いているうちに草原の端にたどり着いた。
霧が広く広がっていて奥を見通すことができないほどに濃い。
そして、霧の前には通常の3倍ほどの大きさのウルフが佇んでいた。
『挑戦者よ、霧の先に行きたいのなら我を倒してからゆくのだな!』
そして頭の中に声が響き、草原ウルフがギャーンと雄叫びをあげた。
(side.ダンテ)
どうも皆さん元気にしてらっしゃるやろか。
見習い商人から駆けだし商人になったダンテっちゅうもんや。
今後ともよろしゅう。
というわけで挨拶も済んだことやし今の状況を簡単に説明してくで。
わいは第二の町に行くためにエリアボスをスグルはんとパーティーを組んで倒してもらいに行ったんや。
それでボス戦が開始したわけやねんけども。
まず取り巻き5匹がスグルはんを取り囲むようにして一斉に噛みつきに行ったわけやねんけども次にはポリゴンにされとったわ。
見えたのは首筋に3匹短刀を突き刺したくらいやった。
このゲームはリアリティを第一信条にしとるくらいあってHPバーなんちゅう無粋なもんは用意しとらん。
だから大抵の生物は首筋もしくは心臓にダメージくらったら一発御陀仏ちゅうことも普通にあるんや。
っと話が逸れてもうたな。
こうして10秒もせんうちに取り巻きのウルフどもは全部倒されてしもてんな。
というかスグルはんベータより絶対動きにキレがでとるねんけど。
正直戦いとうないわ。
それで早速狂化が発動したボスと対峙しはってん。
狂化した草原ウルフは銀色だった毛がすっかり赤色に染まってまるでホラーやったな。
まあ、動きが増すゆうてもレベルは15。
大したことはあらんかった。
突進してきた草原ウルフを傍目に短刀をしまったスグルはんはスルリと横に体をそらし横っ腹に掌破を叩き込みはった。
掌破ちゅうのはスグルはんの体技やな。
で、横に吹き飛んだ草原ウルフに追い打ちをかけると思ったらスグルはんはこっちを向いたんや。
「おいダンテ!こいつのモフモフやばいんだが!」
……だからなんやちゅうねん。
しかも飛ばされたウルフの方もなんか仰向けに体を起こし降伏サイン出してるんやが。
というのが今の状況や。……誰かなんとかしてや。
……………………………
さて、ボス退治に来たスグルたちだったが今は既に戦闘を終え、一匹と一人で草原に横になっている。
ウルフの方も負けたと認めたのか毛色も白に戻っていた。
(やばい、こいつ柔らかすぎだろ!というか気持ちよすぎ)
「というわけでダンテ、俺こいつお持ち帰りしたいんだけど」
「何がというわけでや。というかわいに話振られても困るわ。そっちのモンスターも完全に懐いとるようやけど倒さん限りそこの霧は晴れへんようやしな」
実際、霧は晴れていない。
しかしこの草原ウルフを殺す気はもうスグルには無かった。
このモフモフを一回知ってしまったからには離すつもりはない。
『あーあー。聞こえているかそこな人間?』
(うん?何か聞こえた気がしたぞ。確かさっきのボス戦前に聞こえた、挑戦者よ〜とかいう声と同じだ。誰だろう)
『我だ、人間。今そなたがもたれかかっている草原ウルフだ』
草原ウルフが首だけをスグルの方に向け赤く光っている目を向ける。
(あれ?モンスターって喋れるんだ)
『今喋っているのは念話というものだ。あと、モンスターに基本知性はない。たまに知能あるモノが生まれてくるくらいだ。我は生まれつきあったがな』
(ほうほう、流石にモンスター全部には知能は存在しないと。で、話しかけてきたからには何か理由があるんじゃない?)
『その通りだ。我は不滅の存在であってだな。死んでも一定時間が経つと再生するのだ。そして霧を通りたくば我を倒せなどと言っては倒されの日々を続けてきたのだがもう我慢ならん。そんな時に丁度圧倒的な力を持った主君がきたわけだ。というわけで相談なのだが一緒についていっても良いだろうか?』
この提案はスグルにとって素晴らしい提案だった。
ただし一つだけ心配事が残っている。
(この霧はどうなるんだ?)
『仮にもこの霧の守護者だったのだ。霧を退かすぐらいわけはない』
そう言って草原ウルフがウオーンと吠えると見るからに霧が晴れていった。
この光景にダンテも驚いている。
『コレでどうだ?我を連れて行ってはくれないだろうか?』
「うん、霧も消してくれたし文句なしに採用だな。というわけでお前の名前はルーな」
『ルー、か。わかった。我の名はルーだ。これからよろしく頼むぞ、主君』
『主君?』
『我を負かせたのだ。そう呼ぶのが自然だろう』
「そういうものか?」
『そういうものだ』
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名前:ルー(Lv.15)
種族:草原ウルフ
スキル:狂化(Lv.6) 念話(Lv.6)
ユニークスキル:不滅
主:スグル
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(あれ?ボスモンスターいなくなったけどいいのかな。まあ気にしなくていいか)
ボス戦で1章取りたかったんですが、1週間も経ったらさすがにクリアする人も多いですよね。
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(改稿済み)