第九十八話 国の名前
桜が部屋から消え去り、部屋に静寂が戻って来る。
膝をついて顔を上げないリーシェだったが、少しして「騒がしてしまってすまなかったね」と言いながら席に戻った。
その姿からなにも聞くなと言っているように錯覚し、そのことに触れようとする人はいなかった。
「少年、創造神様とはどんな関係なんだい?」
いつもの調子とはちょっと違いハキハキと喋ってスグルにそう聞いて来る。
「どんなって言われてもな、会ったのは数時間前が初めてだったんだよ。あ、ただ俺が貰ったあの世界は創造神様?桜さんからなんだ」
「そう、だったんだね」
再び部屋に静寂が訪れる。
周りにいるメンバーも、余計なことを言える雰囲気ではないと察して黙っている。
「うん。色々と創造神様に言いたいことはあったんだけどまた今度じっくり話してもらうことにするよ。まだまだ話す機会はあるだろうしね」
彼女の中で折り合いがついたんだろう、いつのも眠たげな垂れ目に戻った。
それと同時に部屋にざわつきが帰って来る。
「リーシェはん、次の話進めてええか?」
「勿論だよ」
恐る恐る聞くダンテにリーシェは軽く笑って答える。
そこには先ほどのきつい表情はもうなかった。
「んじゃ、次言うても最後の話や。ほれ、みんな静聴」
パンパン、と手を叩き意識をそちらに集中させる。
ダンテはじぶんにきが向いたのを感じ、これが途切れる前に早速、
「最後の議題やけどな。……国の名前とあの世界の名前そろそろ決めんか?」
(……確かにずっと俺の世界なんて言うのも面倒だったからそれはいい考えなんだが……誰が付けるんだ?)
事実これまで明確な名前は設定されていなかったしそれでもなんとかやってはきたがこれからそれでは通用しない。
そもそも名前がない国など国と呼ぶものではないからだ。
「で、なんか良い名前ないか?」
もう一度ダンテはぐるっとメンバーを見回す。
先ほどとは違い今度は誰も手をあげないのにやれやれと頭をかきながらゆいに視線を送り、ダンテに顔を向ける。
はぁ、と溜息をつき
「お前らのその厄介ごと避けようとする連携は凄いがこんなとこで発揮してんじゃねえよ。元は俺の世界だしゆいの国だ。俺とゆいで決めさせてもらうぞ」
そう言った瞬間まわりから拍手が起こる。
ダンテはいい具合にグーサインを出していた。
絶対後で締め上げる、と決意を固めたスグルにゆいは
「え、ちょっとスグル、そんなの聞いてないよー」
「言ってない。ほれ、元はお前の建国だ。さっさと良い国の名前考えろよ」
ゆいの非難を軽くいなし、さっさと考えようと思考を集中させる。
(この世界の名前がフォーチュン、幸運だったか?だとしても不運だと嫌だしかと言って前みたいなアツクナイ砂漠なんて名前は付けられんし……)
しばらく考え、一つだけ名前が浮かんだ。
ゆいはまだ悩んでいるようだったので先に言わせてもらう。
「ラインなんてどうだ?俺たちの世界とフォーチュンを繋ぐから思いついたんだが」
一瞬間を置いて、
「……なんてまともなネーミングや。もっと奇抜なのが来ると思とったで。わいはいい名前やと思うな」
「お兄にしてはいいと思うよ!」
「スグルもたまには出来るんだねぇ」
「ボクは最初から信じてたよ」
「ラインか……いいんじゃないかな?」
それぞれが好意的な意思を見せてくれた。
よかった、どうやらお眼鏡に叶ったらしい。
そう安堵してまだうーんと悩んでいるゆいを見る。
「ゆいさん、そんなに悩んで良いのが出ないなら私に一つ良い方法があるッス」
「何かな記者さん!」
一瞬で記者さんの方に顔を向ける。
記者さんは人差し指を立てて、
「せっかくスグルさんが良い名前付けてくれたんだからどうせなら国にも同じ名前をつけると良いッス。幸い国の名前としても十分適用できるかと」
「記者さん最高!そうしようよ!」
目を輝かせてこちらを見る。
そんなに考えるのが苦手だったのか、と思いながらもスグルはそれで良いならと了承した。
「やったー!じゃああの国の名前はラインだね!」
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『チートに成り損ねた僕は異世界でレベルアップする』
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本日11時投稿予定です!そちらの方の応援もよろしくお願いします!
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