第九十七話 創造神
鈴を鳴らしてから数分後、スグルにメールが届いた。
【すまない、寝てた。準備して行くから少し待っていてくれ】
と何とも現実味のあるメッセージが一つ。
鈴をアイテムボックスに戻しその事をリーシェ達に伝える。
みんなそれぞれ曖昧そうな顔をしながら待つことにした。
更に10分ほどが経ったとき、彼女は現れた。
壁の端に亀裂が入り、徐々に空間がひび割れて行く。
ある程度まで大きくなった時、ひび割れのガラスのように粉々に空間が砕け散りそこから先はどこまでも続いていそうな黒のみが広がっている。
その黒の中から彼女、上條 桜は姿を見せた。
「やあ、随分早く決めたんだね。それでどうする……ってあれ?リーシェ君もいるんだね」
「創造神様!?」
桜はゆっくりとリーシェの方を見て珍しげに目を細める。
そしてリーシェはリーシェはで桜の姿を目に入れた瞬間からいつもの眠たげな目をあらん限りに大きく見開き、そのまま自然に膝を床についていた。
「リーシェ君、随分と大きく成長したね。確か500年ぶりだったかな?」
「550年ほどだったかと」
「そうか。もうそんなになるんだね」
リーシェの、その普段からは考えられないような行動や姿にも慌てる姿勢はなく、むしろその対応に慣れている、と言った様子でリーシェに話している。
スグルは気になってリーシェに
「おいギルマス、この人がどうしたってんだ?」
リーシェは慌てたように、
「少年は神殿に行ったことが無いのかい?この人は創造神様じゃないか」
と言った。
逆に驚いたが、運営という立場を考えたら確かにそういうことになるのか、と考える。
「……さて、感動の再会というわけだが先に用事を済ませておこうか。ご褒美は何にするか決まったかい?」
スグルは一瞬ゆいと目を合わせ、先程話し合った内容を桜に伝えた。
桜は話を聞いてすぐ、
「よし、それなら十分許容範囲だよ。君にあげた世界だからワタシのチカラも十分に伝えることができるしね」
と即決した。
逆に他のスタッフに聞かなくていいのだろうか、という事を聞いてみると
「ん?言ってなかったかな。運営、つまる会社の運営全てワタシ一人で行なっているのさ。つまるところワタシが社長なのだから何でも決める権利は当然あるんだよ」
と驚きの事実が伝えられた。
よくよく考えてみるとこれまで公開されてきたのは全てネット上でのこと。
テレビなんかに取り上げられる時は普通スタッフやそれに連なる人がキャストとして出演する筈だが一度もそのようなことはなかった。
そんな驚き発言をした桜は関係なしに白衣のポケットからスグルと同じような鈴をここにいる人数分出した。
それを一人一人に放り投げる。
「じゃあ、ワタシは君たちの要望通りにイベントを変更してくるよ。その鈴でワタシに連絡が来るようになってるから気になることがあったら鳴らしてくれるといい」
そう言ってまた消えようとした桜にリーシェは思わず声をかける。
「お待ちください創造神様!」
「リーシェ君か。なんだい?」
桜は後ろを振り向きリーシェを見る。
「創造神様はこれまで何をしていらっしゃったのですか!貴方様が居なくならなければ使徒などというものが猛威を振るうこともなかったはずです!」
その口調は責め立てるもの。
しかし、桜はそれを我が責と受け止めるような声で
「それについては本当に悪かったと思っている。ワタシもワタシで準備して居たんだよ。この世界のためにね」
そう言って今度こそ彼女は消えていった。
スグルはその様子を見ながら考えた。
(やっぱこの世界を俺らは知らなすぎるな。……今度こそギルマスに詳しく聞いて見るか。もっと俺たちはこの世界について知らなきゃいけない気がする)
もうすぐ100話達成だなぁ。
少しずつ新作の構想を練ってます。この作品もまだまだ続けますので、引き続きよろしくお願いします。