第九十六話 妙案
「俺は今回の王都で何かしてくる必要あんのか?」
いつの間にか役職が決められていたスグルは不貞腐れながらそう聞く。
ダンテはうーんと、考え言った。
「特にないわな」
「無いのかよ!じゃあ自由行動でいいんだな」
「別に構わんよ。むしろずっと縛ったりしたら逃げ出すやろ。
正味当分はやることないやろしほとんど自由で構わんよ」
「それを聞いて安心したよ。……あ、そうだった。一つ言い忘れてたことがあったんだ」
当面やることはないと聞いてようやく自由の時間が確保できるとやる気になる。
そしてここにくる前の出来事を思い出してそう言った。
「なんや、また面倒ごとやないやろな」
ダンテはめんどくさそうな目でスグルを見る。
「あのさ、前にクラーケン討伐やったじゃん」
「1ヶ月前のやつやな。それがどうしたんや?」
「あの時一つアイテムがあったの忘れてたんだよ。鍵だったんだけどミウ、覚えてるか?」
急に話を振られ、飲んでいた水で咽せる。
「ケホッケホッ。お兄急に話しかけないで。で鍵だっけ?……あ、そういえばもしかしたらそんなこと言ってたかも?」
そんなこともあったかと曖昧に返答する。
「で、最近になってようやく思い出した俺は鍵が使える場所を探してたのを見つけてな。中に入ったら運営側の人と出会ったんだ」
その時のことを簡単に話す。
全て話を聞いたあとそれぞれが黙っている中、ゆいが手をあげ
「あ、じゃあその願いっていうの一つ案があるんだけどどうかなー?」
「どうも何も内容を聞かなきゃダメだろ」
「えっとね。今考えたんだけどさ、建国じゃん?
建国祭とかやってもいいと思うんだけどさ、正直今からそんな準備とかできないと思うんだよ。
それならさ、どうせ運営もハロウィンイベント用意してるだろうからそれをこの国バージョンに変更してもらう、っていうのはどうかな?」
会議なんかは傍観者なゆいが珍しくやる気を出してそう言った。
ダンテはそれを聞いてハッとする。
「そや、その手があったか!建国祭は諦めとったけどそれなら行けるかもしれん」
「流石はゆいだな。俺は普通に国にバリアとかあったら良いなとかしか考えてなかったわ」
「よく分かんないけどイベント出来るの?前回は不参加だったから次は参加したいよねーお兄」
「ゆいってたまに凄くいい考えを出すんだよね」
意外すぎる、しかし妙案であるゆいの提案にそれぞれ思い思いの言葉を述べる。
「……ごめん、その運営ってのはなんだい?」
唯一話についていけてないリーシェは申し訳なさそうにそう聞いてきた。
それを聞いてスグルは思い出す。
(そう言えばリーシェはこっちの住人か。つうことは運営ってのがどんなのかもわかってるはずないわな。そもそも俺らん中での運営はリーシェにとってどんなふうに写るんだろうか)
一種の賭けだがそれなら、と
「じゃあ折角だし呼んでみるか」
そう言ってアイテムボックスから鈴を出し
チンッ
と短く鳴らした。
なぜでしょう、ゴールデンウィークの筈なのに時間が全然ない