第九話 メニュー機能
パーティーが終わった翌日の朝、スグルとミウ、ゆいにダンテの四人はスグルがβテスト攻略貢献度ランキング2位の特典で貰ったフィールドの下見に来ていた。
「おお、これはかなり広いね」
「こないでかいフィールド貰っとったんか。何がおるかわからんけどとりあえず見えてる土地だけなら十分合格やな」
「まだこの草原は一部でしか無いと思うぞ。向こうの森のさらに奥も広がっていそうだ」
皆一様にフィールドの広さに驚き、ダンテは既にこの地の運用を考えている。
「それはそうと、俺の土地も確保しといてもらうぞ」
「ほい?元からここはスグルのもんやで。それを今回は国として借りるっちゅうだけや。それにゆいに聞いてみたがそこまで大きな国は必要無いよねっちゅうこっちゃ。勿論土地は自由に使ってもろて構わんよ」
「うん?てっきり土地は国として取り上げると思ったんだがな」
「そんなことしたら不満が出るやんけ。流石にスグルを敵に回す気はないで。それに現状ここに来る方法はあんさんの門しかないからなぁ。それやったらスグルに土地は持ってもらっておいてスグルを国に置く、その方がこっちも楽でええわ」
「そんなのでいいのか?まあ俺はこっちでのんびりできたらそれでいいが」
「こっちはこれからの仕事で目眩がしそうや。じゃあ土地も見れたし、わいは一旦向こうに帰るわ。あんさんらはどうしますん?」
目と目の間を親指で抑えながらこちらに聞いてくる。
「じゃあゆい姉さんも戻るとするかな。向こうの攻略の方も進めないといけないからね。それにスグル、この国づくりは正直そこまで大きなものとして見てないんだよ。だって本格的に国になったら政治とかしなくちゃになるしだるいじゃん」
(なるほどな、確かにゲームの中で仕事をする気にはならないし当然か)
「了解、ゆいさん。それと、俺はこのまま探索を続けるわ」
「じゃあわたしもー!」
「そか。じゃあまた後で、詳しい計画書やらを書いとくで。ほなまた何かあったら連絡よろってことで」
ダンテとゆいは通称悪魔の門を通って向こうに戻っていった。その姿を見送った後、スグルは妹に向き直る。
「で、ミウ。お前はどうするんだ?」
「とりあえずは1人で探索してみるね!わたしのセンサーが向こうの森に何かあるってビンビン囁いてくるんだよ!お兄は反対側よろしくね」
「あいよ〜じゃあまた後で連絡するわ。一応パーティー組んどくぞ」
パーティーを組むことのメリットはパーティーチャットが使えることと、メンバーの状態の確認、マップを持っているのなら仲間の位置情報確認もできる
。このゲームはジョブごとに経験値の入り方や入手方法が異なるため、パーティーによる経験値の配分などは行われない。
スグルとミウはパーティーを組んで反対方向に向かって進んでいった。
…………………………
昨日、スキルポイントの都合で取らなかった【地図作製】のパッシブスキルを取った後、草原を通過し森の探索を進めていく。
地図作製のスキルの効果は通った場所付近の情報を集めていくものだ。
それらの情報はアイテムボックスに無地の白紙を入れておけば勝手に書き込まれていく。
勿論複製も可能だ。
もともと、このフォーチュンでのメニューウィンドウには7つの項目がある。
一つはたまに使っているメール機能。
ここで主なメッセージのやり取りを行うことができる。
二つ目はフレンド機能。
互いにフレンド申請をしてフレンドになったなら、その人とボイスチャットが可能。
ログインしているかの確認も出来るようになっている。
三つ目はパーティー機能。
ソロの時は押せないが、パーティーを組んでる時は選択できる。
主にメンバーのいる場所の確認、メンバーの状態の確認、パーティー専用のチャットが使える。
四つ目はステータス。
ここで主にスキルの取得や編成、後はレベルの確認などが行える。
ついでに言っておくと、スキルは編成できる最大数が初期値で10個と決まっており、ジョブのレベルが10上がるごとに1つずつ枠が増えていく仕組みになっている。
ちなみに、レベルが上がるごとにもらえるスキルポイントは2だ。
五つ目はさっきも言ったアイテムボックス。
この世界に存在するアイテムには手をかざすとウィンドウが表示される。
それを操作して収納ボタンを押すとこのアイテムボックスにしまわれるというわけだ。
収納数は八十の枠があり、それぞれ最大99個まで収納可能だ。
現在は実装されていないが課金機能が搭載されるようになったら当然上限の変更も可能になるはずだ。
六つ目はスレッド。
スグルはあまり見ないが、ここで掲示板の閲覧や、情報の共有をすることができる。
七つ目はこの世界で最も大切と言ってもいい機能、ログアウトだ。
これを押すことでフォーチュンから現実に戻ることができる。
以上、七つがメニュー項目だ。
(っと、それにしてもゴブリンが多いな。森に入ってからまだ30分程しか歩いてないのにもう6回もエンカウントしている。この分だと上位種も居るのかもしれないな)
そう思いながら、さらに少し歩いていると、ミシ、ミシと枝が折れる音が聞こえた。
スグルは様子を見るために木の上に登り、身を隠す。茂みの中から出てきたのは、体長3メートルはありそうな虎だった。
すぐさま鑑定をかける。
――――――――――――――――――――――――
種名:フォレストタイガー(Lv.72)
【スキル】
不明
【ユニークスキル】
不明
――――――――――――――――――――――――
(ふっざけんなよ運営!こんな高レベル勝てるわけねえだろ!)
この世界ではジョブレベルよりもプレイヤースキルが重要視される。
確かに、ジョブレベルが上がることによる恩恵は存在する。
高レベルになることで解放されるスキルもあるし、10上がるごとにスキル枠が一つずつ増えていくことも事実だ。
それに、見落とせないのがレベルが1上がるごとに身体能力が1%ずつ上昇していく。
これらの恩恵は大きいものだ。
しかし、いくらレベルが高くともプレイヤースキルがなければ高レベル帯のスキルも無駄打ちになってしまったりする。
まあ、プレイヤースキルが低い人はなかなかレベルが上げられないということもあるのだが。
そのため、レベルが高いプレイヤーが格下プレイヤーに負けることもあるにはある。
しかし、これはモンスターには当てはまらない。
モンスターにも住民と同じようにAIが搭載されているということは前にも言ったが、モンスターにはジョブレベルなどというものは存在しない代わりに個体レベルというものが設定されている。
個体レベルが高いほど強いのはわかると思うが、今回問題なのはいきなり72という高レベルがこんな近隣の森に存在することだった。
むしろ、先ほどまで倒していたレベル4,5程度のゴブリンがよくこんな森で生きていたなとスグルは感心すら覚える。
(気づくなよ〜頼むから)
スグルはそう念じながら枝の上でフォレストタイガーが過ぎ去っていくのを身を潜めて見守っていた。
製品概要の時間の加速の制度と1日の可動制限を廃止しました。
ブクマや評価、感想などよろしくお願いします〜
(改稿済み)