第九十四話 納得と報告
「いや、狙いすぎだろ。どっかで隠れて聞いてたんじゃねーの?」
「実は少年が入る前から隠れててね」
「って冗談で言ったけどマジだったのかよ!」
あまりのタイミングの良さに思わず呟いたのが本当だったとわかり声を上げる。
横で記者さんが「わたしでも気付けないなんて相当ッス……これがギルドマスターッスか」と軽くショックを受けていた。
ナチュラルにどこからか椅子を出し座っている。
「ダンテくんが言っていた事だけどね。
私たち始まりの町もコミュニティに参加することにしたんだよ。
実は既に町のみんなにも伝達済みさ」
「前は避難用って言ってたけど考えが変わったのか?」
「そうだね。わたし達始まりの町も霧が晴れ、他国との関係も少しは出来た。
だけど閉ざされた世界から急に出たわたし達は注目の的、それに実際の反乱軍だから尚更。
おそらく遠く離れた使途がいるミザール教国にも知られているだろうね。
それならいっそのこと狙うことすらできないような土地に住む方が常に警戒する必要もなく安全だ。
それに実を言うと始まりの町も資源の枯渇が近年著しくてね。
遠くない内にあそこは離れることになっていたと思うよ。
むしろ数百年もの間ずっと保ってくれていたことに礼を言いたいくらいだよ」
リーシェはそう、言い聞かせた。
「……それで本当にいいのか?思い出なんかもあるだろうし」
「わたし達、始まりの町のみんなの意思で決定した事だよ。
この決定に悔いは残してないさ」
「そうか。なら良いんだけどな。
俺はてっきりダンテが無理矢理に脅迫なんかしたのかと思ったんだが」
「おい、わいのことなんやと思てるんや「国潰しの魔王様だろ?」……あれは事故や」
ダンテからの避難を即答で殺したスグルはリーシェの方を向く。
「じゃあ始まりの町の人も移動ってことだな。
何時頃から始めるんだ?」
「明日から早速順番に移動してもらう予定だよ。
既にみんなには準備を始めてもらってるし」
「通りで今日は屋台が少なかったのか。
そういえば居なくなった後の始まりの町はどうするんだ?
このまま放っておくのか?」
「折角だからリースティアにでもあげようかな?
ちょっと今聞いてみるね」
そう言ってリーシェはメニューからリースティアにコールした。
少ししてコールに出る。
『なんじゃ、リーシェ殿。現在少々忙しいのじゃが』
NPC同士でも普通に会話しているのを初めて見てこのようにプレイヤーの仕様がほとんどNPCにも適応されているゲームは無いだろうなと実感する。
コールに応じたリースティアは少々疲れているような口調でそう告げた。
「ああ、ごめんね。あまり時間はとらせないからさ」
『頼むのじゃ。それで、今回はどうしたんじゃ?』
「わたし達、始まりの町から拠点を移動することになったんだよ。それで始まりの町は空っぽになるんだけど、そこいる?」
リーシェはそう言うと暫く無言の状態になる。
そしてガタッと向こうの方で音がして、
『な、なんじゃと!?いや、少し待ってくれ。もう少し最初の方から説明してくれると助かるのじゃ』
そう言われ、リーシェは最初から今回の事を掻い摘んでだが全て話した。
リースティアは聞いた後、うぅむと唸っている。
「それでどうかな?」
リーシェが聞くと、
『スグルにそんな技能があったとは……いや、疑っとるわけでは無いのじゃがな。
一度その【次元の扉】とかいうのを見てみたいのじゃ。
ワシは今王都におるのじゃが、確か一度行った場所では無いと使えないのじゃったな。
折角じゃからその扉の行ける範囲を王都にも広げるという事でこっちに来んか?
リィースにならそれで来れるんじゃろうし、そこから王都行きの便も送ろうではないか』
リースティアは楽しそうな声でそう言った。
すいません、更新が遅れるかも知れないです。なるべく遅らさないようには頑張ります。