第八十八話 集合まで
遂に総合5000ポイント突破しました!
久しぶりに新しく活動報告を書いたので、そちらも見てもらえると嬉しいです。
白色の世界から颯爽と戻ったスグルはその足でダンテの商館に向かった。
ダンテの商館には1ヶ月以上前、クラーケン戦以降顔を出していなかったがその間に店とその付近の景観は大きく変わっていた。
詳しく言うとダンテの商館の横には商業ギルドが建てられておりその付近に集中するように屋台や店が立ち並んでいる。
商業ギルドは外観から見たらダンテの商館とも同等の大きさだが出口はあまり大きくない。馬車が通るとしてもこの道は許可されておらず商業ギルドの倉庫につながっている裏口に行っているからだろう。
それでも、現在荷馬車や人がひっきりなしに出入りを繰り返している。
商業ギルドはダンテが言っていた通り、外部から来る行商や大手商会の横暴な侵入を見事に防いだらしい。
商業ギルドを通してからでないと商売はできないようにした事が大きかったようだ。
オンラインゲームの殆どで存在するシステムが、進んで行くごとにモンスターは強くなり、アイテムや装備のレベルも高くなって行くというもの。
確かに序盤から強敵が出ても倒せるわけもなく、また序盤で武器無双なんかをしてもすぐに飽きられてしまう。
そういう面で言えばこのシステムは順当なんだろうがこの世界のそんなシステムはない。
世界で進んで行くごとに強くなるモンスターは居るだろうか。モンスターも生きているのだ。
勝手に弱いのは喰われ強いものは生き続けるという単純な世界。
そこに人間が考えたシステムを組み込ませる余地などないと言って良いだろう。
素材なんかもそれにあたる。
薬草にしても確かに生えて来る場所によってレア度が違うということはあるだろう。
しかしそれもプレイヤーに合わせて生えて来るのではなく、勝手に生えて成長するようになっている。
実際、始まりの町付近でも需要の高い薬草が採れれば、上薬草、命の雫なんかの高級アイテムが森の奥地に行けば偶にだが採れる事もある。
モンスターも始まりの草原で出て来る種類は多くはないが特殊個体なんかが生まれてくる。
それがこの世界の常識だからこそ、外部の人間は500年もの間閉ざされていた土地のことを知りたい、何があるか把握したい、危険かどうか知りたい、これは大きな流れだ、などといった憶測やら感情やらが入り混じり外から一斉に押し寄せてきた事も理解できる。
あくまで主観だがダンテが商業ギルドを設立していなかった場合の対処はかなり困難を極めただろう。
そういう意味で商業ギルドはかなり役に立っているというのは今の商業ギルドへの出入りの数の多さが示している。
「だーれだ?」
横から声がかかりパッと目に手を当てられる。
既に自前の気配察知と【空間把握】で自分にまっすぐ向かってきたのを知っていたので、驚くことはしなかった。
「ゆいだろ」
「正解〜」
ゆいは手を外し、ふにゃりと笑う。
そしてスグルの横に腰かけた。
「で、何してたの?」
「商業ギルドって流行ってるんだなーって見てた」
「あぁ。ダンテくんのね」
ゆいもぼーっとして商業ギルドの方を眺める。
「確かにアレは作らないとダメだったんだろうね。まあダンテくんのことだから私欲6割ってところかな?自分の拠点もあるこの町に手は出させたく無かったんだろうけど。それでも凄いよね」
「何言ってんだ。今からそれよりずっと凄い国造りだぞ。そんな気の抜けた様子でどうするよ女王様」
「えー、わたしは女王なんて柄じゃないよ〜。どっちかと言ったら好きに動くタイプだし」
ダメダメ、と手を横に振る。
「このゲームでスグルと初めて出会ったときのこと、覚えてる?」
「それは言うなよ。恥ずかしい」
「イベントでわたしが一位で終わった後、いきなり『おい、勝負しろ』だったからね〜。あの時はびっくりしたなぁ」
「あれは悪かったって」
「あの頃はこんな風になるなんて思っても見なかったよ。ましてや建国なんてね」
「何言ってんだ。まだまだこれからだろ」
ゆいはスグルに顔を向けてじっと見つめる。
「な、なんだ?」
「……いや〜。スグルは可愛いなーと思ってね〜」
「なっ!?」
一瞬ドキッとしベンチから飛ぶようにして立つ。
気にした様子もなく、ゆいも「ん〜っ」と背伸びをして立ち上がった。
「そろそろ行こっか。時間ももうすぐだしね」
そう言われ時計を見る。
時計の針は2時50分を指していた。
偶にはこんな日常があっても良いんじゃない?