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しがない鑑定眼の情報屋さん ~闇の聖女~  作者: もるるー
第四章 しがない聖女と世界の話
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しがない聖女の羞恥心 と


「やぁ、体調はどうだい?」


 目を覚ました私に飛び込んで来たのは爽やかに微笑むマイルさんと深い赤色をした髪。

 その微笑みに私は何故かニコリと微笑みを返した後、ゆっくりと左右を見渡しました。


 あ、そうですよね、私は気を失ったんでしたっけ?

 …………あれ? これ膝枕されてませんか?


 ぼんやりとした思考が頭の中で繋がっていくのが分かります。


 そうです、確か私は吐きたくった挙句気を失い、世界樹にも吐き過ぎと怒られて……


 竜王の話は結局分からず、私は私のまま行動すれば、それでいいと言われて……


 そこで私は事の重大さに気付きます。


 吐きに吐きまくった挙句、そのままマイルさんに膝枕をされている!?

 ビクリ っと体が跳ねました。


 いえ、膝枕自体はありがたいのです、私だって女の子ですから、ちょっとときめいたりもしたりはするのですが、問題はそこじゃありません。

 私は吐きまくった後に気を失ったのです、吐いた後に倒れ、汚物にまみれているかもしれない顔をずっとマイルさんの見られていたという事ではないでしょうか?


 それは乙女としてどうなんでしょう? 責任を取ってくださいと言ってもいいんではないでしょうか?

 え? うそ? 嘘ですねよね?

 それって裸を見られるよりもなんか恥ずかしくないですか?


 とゆうか、そんな私なら膝枕しないでうつ伏せに放置して欲しかったです(涙)


「あ、ああ、あ、あ、あの……わわ、私吐き、吐きまくったまままままま」


 慌てて口元を押さえます、エチケットもくそもあったものじゃありません、羞恥プレイも裸足で逃げ出す辱め行為に等しいとさえ思いました。


 よく考えて下さい

 綺麗に身なりを整えたまま下着姿を見られるのと、服を着ているとはいえ、ゲボまみれの姿で膝枕をされているのはどちらが恥ずかしいですか?


 考える余地がありません、確実に後者です。


 けれど驚く事に、慌てて抑えた口元は汚物どころか、水気も感じない程サラリとしていました。

 私は口元を抑えたまま、小さく深呼吸をします。


 落ち着いて考えるんです、私の口元に汚物を吐いた気配はありません。

 顔を洗った様にツヤツヤです。


 もしかしてあれは夢で、私は吐いてなどいなかった?


「大丈夫だよ、綺麗に拭いておいたよ」


 ですよね! 吐いてない訳ないですよね! ちょっと夢見ちゃいましたっ!


 …………そ、そうですか、綺麗に拭いて頂いたんですね←(恥ずか死ぬ)


 私の顔は真っ赤になります、ならない訳ないです、ちょっと死にたくなったぐらいです。

 私は口元を抑えたまま体を起こし、袋の中から水の入った瓶を取り出します。


「あ、あの……歯磨きしてきます……」


 そりゃしますよ!! 私吐いたままですよ!! ふざけないでくださいよ!!←(なんか逆ギレた)

 

「全然気にしなくいいけど、いってらっしゃい」


 私は辺りを見渡し、すぐに見つかった小さな水路に恥ずかしさを隠す様に馳けました。


 来た時は全く周りを見る余裕は無く、世界樹に辛うじて目が行く程度だったのですが、

 世界樹がそびえる野原は、至る所に色取り取りな花弁の小さい花が咲き、周りは高い崖に囲まれた不思議な空間です。

 崖の上から流れる小さな滝は、端を沿う様に小さな水路を作っています。


 多分この小川を使ってマイルさんは濡らしたハンカチ等で私の口元を拭ってくれたのでしょう。


 うぅ……マイルさんは優しいなぁ……


 マイルさんがしてくれたであろう行動や、かけてくれた言葉に優しさはヒシヒシと感じます。

 私は口をゆすいだ後、持参の歯ブラシで歯を磨きます。

 え? 歯ブラシなんで持っているのかですか? よく吐くからに決まってるじゃないですか、私のお出かけ持ち物必須品の一つですよ?


 私は丹念に口を洗った後に、まだ火照る顔を隠す様に俯けながらマイルさんの元に戻ります。


「あの……ご迷惑をおかけしました……」


 恥ずかしさに俯いた顔を上げず、上目にマイルさんを見ます。

 マイルさんは全く気にしてない様に、柔らかい笑顔をでいてくれて、優しい口調でいいました。


「いっぱい吐いたね」


 ふふふ、いっぱい吐いたねっておかしくないですか?

 そんな事優しい口調で言われた人っているんですか? 泣いていいですか?


「はい……いっぱい吐きました……うぇぇ……(号泣)」


 女として、泣きました。

 涙は止まりませんでした。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ─世界樹─


 闇の聖女が私の元に来た夜の事、何千年も姿を見せなかった来訪者が、私の前に舞い降りました。


 昔は白く煌いた体も、今は鈍い白に変わっています。


 それほど大きな体躯ではありません、竜種として少しばかり小さいかもしれない体。

 けれど、その力は他の追随を許さず、他種の魔獣を含めても世界で随一。

 世界を壊せるほどの力です。


「世界樹よ……聞きたい事がある……」


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