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しがない鑑定眼の情報屋さん ~闇の聖女~  作者: もるるー
第一章 闇の聖女 始動?
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しがない鑑定眼の情報屋さんのD級迷宮初攻略

「ダークアロー……(←通算10回目)」

 複数の矢がブラックゴブリンに襲いかかります。せめてもの嫌がらせをと、失敗した時に備えて鑑定眼の右目だけ開けています。度重なる失敗に心が折れそうです。いえ、もう折れています。オーバーキルもそろそろやめていいんではないですか?

 魔眼だけ開け見ているといっても、見るのは当然私です。私へのダメージは計り知れません。


 虚ろな目でブラックゴブリンを見ていると。


 ドドドスッ!!  ギャ…… パタリ


「え?」

 ゴブリンが原型を保ったまま倒れて動かなくなりました。

 恐る恐る近づいてみます。仰向けに倒れたゴブリンの顔が溶けていたらと思うとガクガクと足が震え、ブルブルと体が振動します。2回ありました。もう騙されたくないです。


 でも今までと違い溶ける様な音が聞こえませんでした。でも騙されたくないです。溶けて中身が半液状になってドロドロと流れ出る光景に私はその場で座り込み泣き続けたものです。


「う、うぅ……はぁ…ん、くぅ……」


 顔を見る為に近付いているだけなのに既に呼吸が乱れています。少しずつ歩を進めていますが、泣きそうです。結局どっちに転んでも泣きそうです。もう泣きたい。闇の聖女辞めたい。


「うぅ、ん……はぁっ!……ぁ…んっ!」


 ブラックゴブリンは目の前です。がんばれ私。がんばれっ! がんばれっ!

 ゴブリンの顔が確認出来る位置まで来ると目を閉じてしまいます。

 がんばれ、がんばれ私!


 チラッ


 ギュッと閉じた両目をチラリと開けます。黒い矢が頭に二本。胴体に一本刺さったままの形で残っています。


「はぁぁぁぁぁ」


 安堵の溜息と共にペタリと腰を下ろします。膝がガクガクしています。泣かずに済みました。

 うまく魔力を圧縮する事が出来たようです。これで魔物を倒す度に泣く事も少なくなりそうです。なくなるとは言いません。だって怖いですもん。


 この迷宮は地下3階までのはずなので、ここの最深部に生命力の宿った何かが出現しているはずです。上手くいけば魔道具。生命力が宿る装備が迷宮にない場合は生命力の宿った魔物の牙や角。魔石を形成しているはずです。

 それすらない時は生命力が強く宿った魔物が最深部にいるはずです。出来れば魔道具がほしいですが、物によっては魔物の牙や角。魔石も高く売れます。


 もう少しがんばろうと、足に力を入れて立ち上がります。闇同化を試していなかったで、何となく体全体を闇の魔力で覆ってみます。


 ズズズズズズッ


 黒い霧の様な魔力が形成され、私を包み込みます。闇同化と言うより闇に包まれた人っといった感じでしょうか?

 この状態で攻撃を受けたら無効化出来るのでしょうか? 全く試す気になりません。薄い透明な膜を被っている感じです。不安過ぎて仕方ありません。頼りなさ過ぎて攻撃を受ける気になりません。最下級のスライムで試して見る事に決定しました。


 でもこれから向かうのはDランク迷宮と言えど、最深部の魔物です。迷宮で一番強い魔物が出てきます。頼りなさ過ぎますが纏っておいていいでしょう。藁にもすがるという奴です。今の私の気持ちを的確に表現すれば、川で溺れている私に向かって鑑定眼がうすーい紙を投げて これにつかまれー っと叫んでいると言ったところでしょうか?


「できるかっこのすっとこどっこい!」


 思わず叫んでしまいました。日頃からひどい文字を浮かべる鑑定眼が悪いんです。私は知りません。


 テコテコと体の周りに闇を揺蕩わせながら、最深部に続くであろう道を進みます。体の周りの黒い霧。闇がまるで体に悪い空気を纏わせている様です。

 他の人がみたら確実に私を避けて通るはずです。 闇の聖女 はどれだけ私を泣かせれば気がすむのでしょう。


 最深部と思われる大きな空洞に到達すると奥に大きな祭壇が見受けられます。その前に立ちはだかる様に此方を見据える魔物に絶句します

 開眼しっぱなしの鑑定眼が対象を鑑定しました。


 グール

 属性 不死

 特徴 痛覚が無い為。攻撃を受けても怯まない。しかし一定以上のダメージを与えれば絶命する

 能力 相手を溶かす酸の排泄物を口から吐く。自らもドロドロだがその体に酸の力はない。口から吐く排泄物にだけ注意

 一言 これぐらいのドロドロへっちゃらだろ? お前がやってきたドロドロなんて…………おぞましい…………人の所業じゃない……末恐ろしいわぁ…………


「何正論ぶってんだこのやろぉ!!」

 私は行き場のない怒りを杖に乗せて放ちます。心なしか、今までで一番でかいダークボールが出来た気がします。ノンタイムで。


 ズドオオオオオオオオ!! オオオオオオオン!!!


 ダークボールが軽々とグールを飲み込むと、小さくなるのではなく弾ける様に黒い光を放ちました。グールが飛び散ったかと思い ビクリ と体を弾ませましたがグールは跡形もなく消滅した様で、生命力だけがふわふわと浮いていました。


 胸を撫で下ろします。両手で杖を持ちながら祭壇に向かいトコトコと歩いていきます。


 祭壇には乱雑に魔石や牙が転がっています。魔道具は無さそうです。鑑定眼で転がっている3つの魔石を覗いてみます。


 C級魔石

 属性 無

 能力 光を放つ(半永久)

 効果 魔石に生命力(魔力か気)を込めれば光を放つ魔石。生命力が無くなれば光を失うが込めればまた光る。


 E級魔石

 属性 無

 能力 光を放つ(一回限り)

 効果 魔石に生命力を込めれば光を放つ魔石。一度生命力を込めればあとは魔石に溜まる生命力が切れるまでは半自動で光続ける

 

 D級魔石

 属性 無

 能力 光を放つ(数回)

 効果 魔石に生命力を込めれば光を放つ魔石。込めた生命力の多さにより持続時間変化。少ない生命力で数回使うよりは。多い生命力で数回使う方が得。

 一言 なんで光を放つ魔石ばっかなん?


「しるかっ!!」


 もういいです。C級の半永久に使える魔石は高く売れるので目標は達成したと言えます。

 ついでに生命力が宿った牙を鑑定してみます。


 C級魔物牙

 属性 無

 能力 職人に加工してもらえば光る剣や杖が出来る。(半永久)

 効果 加工した杖や剣が光る……(半永久)

 一言 ・・・・・・・・・・・・


「なんか言えっ!!」

 

 闇を纏ってるせいでしょうか……光るものしか出てきませんでした(号泣)

 でもいいんです。私の初D級迷宮は光に溢れていたと思えばいいんです。私闇の聖女ですけど(よだれ)

 魔石と牙を袋につめてトコトコと来た道を戻ります。


 お世話になった冒険者ギルドで換金してもらおうと思います。

 そしてゆっくりお風呂に入って、ゆっくり眠ります。


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