しがない聖女とマイル・フォレグラン
案内されたのは不死族の村の外れ。
そこに佇むメルヘンチックな小さな家はマイルさんの買い取った家みたいです。
このメルヘンチックでハロウィンな感じはマイルさんの趣味ではなく、元からこういう作りの家らしいです。
不死族の景観とかそういうのがあるんでしょうね。
小さなテーブルに四人で座り、マイルさんは備え付けのイスではなく、少し高く小さ目の丸イスを移動させ、逆向きにイスに座ります。
丁度背もたれ部分の上に腕を組む様に置き、ニコニコと笑いながら言いました。
「君達が来るのを待っていたんだ、もう僕だけじゃどうしようもね」
マイルさんは私達の事を知っている、それは彼の態度と雰囲気が物語っていました。
けれど私はここにマイルさんが居る事に疑問を抱きます。
マイルさんは不死族? 何故ここにいるの? 私達の事を知ってるんですか?
様々な疑問が頭を過ぎります、だって会ったのは私が情報屋さんをしている時で、それ以降私が何をしていたのか分かる訳がありません。
「どうして私達がここに来ると知っていたんですか? 私達の事を知っているんですか?」
敵とは全く思えませんが、疑問を投げかけずにはいられませんでした。
「あらあらぁ……素敵な殿方ねぇ……」
「モニカ、あいつヤバイぞ。今の私でもまだ鑑定不能だ、化け物だ、お化けだよお化け」
「お兄ちゃん、すごい力を感じる……」
ヒソヒソと話し出すプリシアにモニカとルル。
その言葉に何故か顔を染めるマイルさん、おかしな事だらけなのに、とても和やかな空気です。
「あはは、世界樹に教えて貰ってたんだ。だから君が闇の聖女になった時から知ってるよ、闇の力を失った事も、モニカさんやプリシアさん、ルルちゃんの事もね」
マイルさんがルルに微笑みかけます。
その微笑みルルが真っ赤になり私の袖口を握りました。
「お兄ちゃん……かっこいい……」
おぉ……マイルさん、貴方は罪な男です。
こんな幼気な少女の心を盗むなんて、ルルの保護者として、是非ともルルを幸せにしてほしいです。←?
貴方程素敵な男性はほかにいない事を知ってるんです。
あの金貨に私はどれだけ神を信じた事でしょう。←(貧乏時代の金貨の力は凄まじかったのです)
私のマイルさんに対する評価は正直にすっごい高いです。
金銭を要求をしても、お釣りはいらねぇぜ と言わんばかりに秘密の情報をくれた冒険者の方々。
何も言えない私は心でどれだけ泣いた事か分かりません。
そんな中で金貨をくれたマイルさん。
正直私が結婚してもいいと思うぐらいです、愛は後から育みます。
っといっていいぐらい無条件の信頼をしているぐらいです。←(すべて金貨の力です)
「ルル、ちょっと待ってね」
しかし私は冷静に考えます。
色々と話したい事はあるのですが、どうもそれどころではないです。
ルルの頭に手を数度置いて落ち着かせ、私は本題へと入ります。
「マイルさんは世界樹と繋がっているんですか?」
「んー、一方的ではあるけどね。ここは世界樹に近い分よく夢で話してくれるよ」
夢で話してくれる。
心当たりがあります、私も翼人族の街ティルノーグで同じ経験をした事があります。
マゥさんの家で見た夢、あれはやはり世界樹が問いかけていたんだと。
そして新たに出る疑問。
私はまがいなりにも闇の聖女になりました、それは世界樹が作り出した魔石の力を得たという事。
その私に世界樹が問いかけるのは分かります、世界の真実を知る様に言葉もくれました。
それはきっと世界の終わりに関わる事、それを世界樹もなんとかしたいと思っているであろう事。
それが世界樹が教えてくれたこの世界に初めて出来た可能性、きっと闇の聖女はその為の力。
私の中に生まれた疑問は、何故マイルさんに世界樹がコンタクトを取っているか だったのですが、その答えは自己門答で解決してしまいました。
「マイルさんも、この世界での可能性の一端という事ですか?」
「うん、頭の回転が速いね。そういう事だね」
「どういう事だ?」
「あらぁ……私達にも教えてほしいわぁ」
「お兄ちゃん……かっこいいね……」
ルルの心を奪ってしまったようですね。
いえ、今はそこは置いておきましょう。
「そうだなぁ、核心を言うとね。世界の境と世界の境目は別の出来事を表しているんだよ」
マイルさんの言葉に、三人が中空に ? を浮かべ首を傾けました。
「ん? 世界の境って竜王が人を淘汰する事じゃないのか?」
「どういう事かしらぁ? 世界の境と境目が違う出来事? 生命力が失われるって奴の事かしらぁ?」
「お兄ちゃん……お兄ちゃんがルルの人生の境目……」←(この子はもうダメだ)
ルルが少し壊れていますが本当にそれどころありません。
まだ分からない事だらけですが、私の中で一つの確信が出来ました。
それはもうずっと昔の話。
情報屋時代に聞いた話、そのほとんどは多分世界の境の事だったんだと思います。
けれどその中に混じっていた別の真実。
曰く 世界が2000年より先に進む事はない。
曰く 世界が2000年前から始まったのには理由がある。
曰く 世界の境目に世界中の生命力が失われる
曰く 生き残れるの極わずか。
曰く 世界中の生き物は エサ なのだと
私は、世界の境目の話を確かに聞いている。
「世界の境が竜王が行う破壊で、世界の境目が光の破壊者が行う世界の……」
「終わりだね」
光の破壊者は二人いた?
いえ、違います。
元々光の破壊者はやっぱり、あの人型の光だけだった?
「じゃぁ、僕が知ってる事を全て話そうか」