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しがない鑑定眼の情報屋さん ~闇の聖女~  作者: もるるー
第四章 しがない聖女と世界の話
64/74

しがない聖女の間違った普通


 地下三階


地針アースニードル


 目の前に現れたアルマジロの様な魔物がルルの魔法に貫かれます。


 地面より出現した何本もの土の針、鉄の様に固い皮に包まれている筈のアイアンマジロですが、マシュマロさながらパスパスと針が刺さります。


 末恐ろしい子です……


 ルルの魔力の高さもありますが、大地や風、水といった自然物との相性が素晴らしいのでしょう、魔力が高いエルフ達の中で一番だったのも頷ける強さです。


「あらぁ、後ろは私がやるわぁ♪」


 モニカの声に振り返ると、そこにモニカの姿はなく、後方に現れたアイアンマジロの背後に飛んだ姿が映ります。


「二連突きぃ~」


 ドドスッ!


 私の目に映ったのは槍に貫かれた後のマジロでした。


 早すぎて全く見えませんね。


 二回突いたどころか、槍を突く動作も見えませんでした、腕と槍が消えたと思いましたし。


「私達出番ないな」

「そうですね」


 右手の平を上に向け、やる事のなさをアピールするプリシアに頷いて同意します。


 やる事ありません。


 通常なら魔法や剣を弾く硬度を持つアイアンマジロですが、私の仲間は優秀過ぎます。


「うみゅ~~~」


 ルルの前方から聞きなれた声がします。

「あ……うーたんだ……」

「うーたんだな……」


 ルルの声を肯定するプリシアですがそんな筈はありません。

 うーたんは宿でお留守番をしているのです、ラビットスライムと見間違えているのでしょう。


 プリシア、鑑定眼で調べればすぐに分かる筈ですよ。


 そう思いながら、洞窟の先を見ました。


 ラビットスライム(かおだけうーたん)にしては小さいですね……

「あらぁ♪ うーたんね♪」


 かおだけうーたんはスライムだけあって顔がうーたんより2.3倍でかかったのですが、このうーたんは本物のサイズに近い気がします、ちょっと大きい気がするんですが……?


 うーたんらしきものは私達を発見するとパタパタと耳をパタつかせます、喜んでいる様に見えます。


「う~みゅ~~~♪♪♪」


 そして宙を浮きました、ダランと垂れ下がる手足と体、私達があれを見間違える事はないでしょう。


「うーたんですね……」


 なぜ うーたんが ここに 


 パタパタと羽ばたき、腕を上げたり下げたりピコピコと動かしながら、うーたんは私の胸に飛び込みました。心成しか頬が膨らんでいます、というかかなりパンパンです。


 なぜうーたんがここにと思ったのですが、後を追いかけて来たのかもしれません。

 まぁそれなら何故私達の前にいるかが甚だ疑問ですがいいでしょう、どうせ説明できないでしょうし、間違いなくうーたんですしね。


「あの……うーたん? 私達の荷物は?」


 必要な物は持って来ています、最悪迷宮から戻れない事も考えての備えもしてあります、宿に残っている物といえば洗濯した着替えぐらいなのですが……


「ふみゅ? ふみゅ~~♪」


 任せてと言わんばかりにうーたんは口からデロンと干してあった着替えを一枚、舌を出す様に出しました。


「…………え?」


 唾液がベトベトのそれを引っ張ると、私の洋服でした。


 デロンデロンデロン。


「あらぁ♪ 私の洋服だわぁ♪」


 次に出てきたのはモニカの黒く薄い服でした。


「…………え?」←(混乱中)


 デロンデロンデロンデロン


 次々出る唾液で濡れた私達の着替え達、なにこれ? なんですかこれ? 全部口の中に入ってるんですか? どう考えても口の中じゃ収まりませんよ?


「うーたん妖精だからな、これぐらい出来るだろ」←?


 プリシアが鑑定眼で覗いているのでしょう、デロデロの洋服を手に取りながら言いました。


「いえ、出来てませんよ? 唾液でデロデロになってますよ?」←(正しい)


「うーたんすごい……うーたん出来てる……」←?


 ルルが自身の洋服を手に取りながら、私が両手で抱き上げるうーたんを背伸びしながら手を伸ばし、頭を撫でます。


「出来てませんから、これは完全にアウトですよ?」←(正解)


「これからぁ♪ 何かあったらうーたんに頼めば着替えも運べるわねぇ♪」←?


「モニカ? これ着れる? これはありなの? 私はなしだよ?」←(珍しく同意)


 おかしいのは私ですか? どう考えてもおかしいですよ


 そう考える私を余所に、みんなはもう一度うーたんに着替えを渡します。


 もぐもぐはむはむもぐもぐもぐもぐ


 食べられていく私達の着替え、パンパンになるうーたんのほっぺた。


 あるぇ? これ普通の事なのかなぁ?


「よし、先に進もう、不思議な通路はこの先なんだろ?」


「あ、はい。二手に分かれる通路を左に行けば右側に通路がある事があるみたいです」


 あれぇ? 妖精に着替え収納するのって一般的なのかなぁ……?←(違います)


 うーたんは私のローブの内ポケットに収まりました。


 そんなうーたんを見ながら私は小首を傾げます。


「ふみゅ? ふみゅ~~♪」


 うーたんは嬉しそうに私にポケット内から体をすり寄らせます。


 まぁ、普通の事なんでしょう←(洗脳)


 私達は不思議な通路へと歩を進めます。

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