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しがない鑑定眼の情報屋さん ~闇の聖女~  作者: もるるー
第四章 しがない聖女と世界の話
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しがない聖女は迷宮へ


 町が見渡せる程の山の中腹、小さくなったグランフィアの町を見ると、かなり高い位置まで登って来たのだと分かります。


「何度も探索には来たくないな」

「うん……ここまで来るのも大変……」


 不死の魔族が町を作っていると言っていた迷宮は、気軽に行ける迷宮ではありませんでした。


「これで出現する魔物も強いというんですから、来る人も少ないで筈です」

「それにぃ最深部に魔石ない事が多いんじゃねぇ」


 この迷宮の最深部にはアイテムがない事が多いらしいです、私達は不死の魔族の存在を知っているので、そう言われれば魔族が取っているのかな? っと予想が出来ますが、不死の魔族を知らない人達にとってこの迷宮は割に合わないといわれてもおかしくないのです。


「それもきっと人があまり来ない様にする為に、不死の魔族がやっているのでしょう」

「そう考えるのが自然だな」


 振り返ると、そこにある迷宮の入り口、入り口の両端に立つ柱がなければただの洞窟に見えます。


「では行きましょうか」


準備は万全、何故か相変わらず私には治癒魔石は使用出来ませんでしたが、ルルやモニカに使う事は出来ます。


「闇同化は使えないの忘れるなよ?」


 プリシアが此方を向き、真剣な眼差しで言葉を掛けてくれます。

 不安で仕方ないと言っていた魔術ですが、度々助けられました、これからはマジックシールドやマジックウォールが間に合わない時は生身の体で避けていくしかありません。


 不安で仕方ないですね……


 そう思っても前に出ないわけにはいきません、私の後ろにはルルが控えているのです。

 ルルを危険な目に合わす訳にはいきません。

 いえ、ルルだけではないのです。


 プリシアもモニカも危険に合わせない為に、私の出来る事をやるんです。


「はい、大丈夫です」


 私は握る杖に力を込めます、逃げたりする気はないんです。


「ん、大丈夫そうだな」


 そんな私を見て、プリシアはふっと微笑みました。


「今度こそ、2000年の謎を解き明かしに行きましょう」


 私達は迷宮の入り口へと足を踏み入れました。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 地下一階


 迷宮内はまるで洞窟です。

 あまり広くない通路、高くない訳ではないですが、迷宮にしては低めの天井、どれだけ背が高くても頭をぶつける事はないと思いますが、それでも少し圧迫感があります。


「私が鑑定で見ながら進むよ」


 先頭にプリシア、その少し斜め後ろに私、私のすぐ後ろにルル、殿はモニカが務めます。


 魔術で遠距離攻撃が出来、防御も出来る私が殿を務めた方がいいと思いますよね?

 私もそう思ってましたよ?


 みんなに不安だからダメって言われました、どういう事でしょう? 何が不安なんでしょうね? 私にはちっとも分かりません。


 薄明りを放つ洞窟を程なく進むと分かれ道、闇属性の時は猫目なぐらいよく見えたのに今ではあまり奥が見えません。


 杖の先に付けた光る魔石でプリシアの先を照らします。


「何かわかりますか?」


「いや、目に映るものはないな。先に進もう」


 地下三階の現れる不思議な通路を目標に進んでいますが、そこが不死の魔族の町に繋がっている確証はありません。


 プリシアに調べて貰いながら道を進みます。


 さらに道を進むと……


 …………ゴゴゴゴゴゴゴ


 突如鳴り響く地鳴り、私達は立ち止まり辺りを見渡します。


「迷宮が揺れてるのかしらぁ?」


 モニカの言葉通り、軽い振動を感じます。

 その異変に最初に気付いたのはプリシア、闇の力で洞窟の奥まで鮮明に見えていたのでしょう。


「!? レティシア!! 前方から……っ!!」


 後ろを振り向いたプリシアは目を見開きます。

 その瞳は更に後方、私達が通って来た道を見ている様でした。


「前後からグラトニーワーム!! レティシア! お前をは前を頼む!!!」


 そのまま後ろに構えるプリシアと呼吸を合わせる様に背中合わせに立ち並びます。


 私は迷わず杖に魔力を込め、中空に出来るだけ特大の魔法の槍を作り出します。


 グラトニーワーム、巨大な人食い虫と言われる地中に住む魔物。

 プリシアの言葉で現状を理解するには十分でした。


 猛スピードで迫りくるグラトニーワームを私の目でも確認します。

 通路に体を擦らせながら、大きな口を開け、まるで口が迫って来ているかの様な状況。


 何もしなければ、確実に二匹の人食い虫に全員丸呑みにされるでしょう。


「プリシア! 後ろはお願いします!」

「任せろ! 行くぞ!」


 中空に浮かぶ魔法を槍を投げる様に、右手を大きく振りました。


「ダークランス!」「マジックランス!」


 きっとプリシアも同じ動きをしていたのでしょう、プリシアは杖を持ってはいませんけどね。


 ドッッッ キュン────ッッッッッ!!


 それは中空に一筋の線を描きました、それとほぼ同時です。


 ドォンッッッッッッ!!


 大きな口いっぱいに開く巨大な風穴、ゴゴォンっと迷宮が揺れました。

 パラパラと落ちる砂や石を見て思います。


 迷宮崩れたりしないよね?


「あらぁ♪ 二人とも流石だわぁ♪」


「……迷宮、崩れない? 私土魔術で補強する……?」


 ルルを庇う様に前に出たモニカが、ルルと共に体の外側だけを僅かに残すワームを見ながら言いました。


「だ、大丈夫ですよ……迷宮は魔力籠ってますし、そんなにヤワじゃないと……思います……よ?」


「まぁ、多少通路は長くなってると思うけどな、あっちも」


 そういってプリシアは自分が魔術を放った通路を指さしました。


 ま、まぁ迷宮ですから! 魔力籠ってるしなんとかなるでしょう!

 世界には形を変える迷宮だってありますしね!


「は、早く二階に下りましょう」


 私達は逃げる様に一階を後にします。

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