うーたんとグロウフィアの町
「うーたんうーたん、うーたんパンチ!」
「うみゅ!」
「うーたんキック!」
「ふみゅぅ!」
宿の一室で耳をパタつかせて飛ぶうーたんと戯れます、正直和みます。
馬車に乗ってるぐらいなら一日中こうしていたいものです。
「よし、うーたん食べていいですよ」
取り出した果実のヘタを持ち、うーたんの前へと差し出します。
「うみゅ~♪」
パタパタと宙に浮きながら、いつもの通り手を前に出して果実に触れると同時に手を降ろします。
そのまま大きく口を開けて……
ガブリュ、モキュモキュモキュ
うん、気持ち悪いですけど慣れたもんです。
心成しか可愛い気さえしてきた気がします、きも可愛いってやつです。
ガブリュ、ガブリュリュ、モキュモキュモキュ
「…………」
「うみゅ~うみゅみゅ~♪♪」
ガブリュ、ガブリュ、モキュモキュモキュモキュモキュ……
「やっぱり可愛くないです、嫌いになりそうです」←?
「ふみゅっ!?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
宿からみんなでギルドへと向かいます、目的はダンジョンの情報収集です。
グロウフィアの町はとても大きくルルは目を輝かせていましたが、ギルドに赴いた後で買い物に向かう事にします。
まずは情報収集、不死の魔族がダンジョンに町を作っているなんて話は聞いたことがありません、ギルドでも把握はしてないでしょうが、ダンジョンがどんな構造をしているか、どんな魔物が出るのか。
仮に不死族が住んでいるのなら、何か変わった事があったりするのか、それはすべて手掛かりに繋がります。
大きな道は一直線にキルドに続いていました。
何事も情報収集が大事です、ギルドに入ると私達は早速マスターに話を聞きました。
◇ ◇ ◇ ◇
ギルド内のテーブルで私は先程聞いたマスターの話を繰り返します。
「地下3階に現れる不思議な通路ですか」
「不死の魔族に続く手掛かりがあるとすればそこだろうな」
「でもぉ簡単に町を見つけられるとは思わえないわぁ」
「そこで鑑定すれば、何かしらの情報は得られると思う」
「それでも何か必要な魔石がいるのかもしれません」
簡単に入れればギルドや冒険者の間でその話が出ないわけがないのです。
何か仕掛けか、こちらからコンタクトをとらないとダメだとは思うのですが。
「おじいちゃん言ってたよ……?純血に現れる紋章が通行に必要だって」
「…………」←(そんな事村長から聞いていない人達)
「だから買い物にいこう……?みんなでお揃いのもの買いたいよ……?」
納得の通行方法と言わざるをえません、エルフや天神族の純血はほぼ自身の街から出る事がないからです。
天神族に至っては純血を守る為に街への入場に制限をかける程、自ら外部に行くことは少なく、これ程遠いダンジョンに来るわけがありません。
エルフにしてもこのダンジョンに来ることはないでしょう。
魔龍の事や知られたくない秘密、それを種族全体で共有してきたエルフが、このダンジョンに来ることも極めて珍しいといえる筈です。
かなり信憑性の高い話です、きっとルルがいればそこに入れるのでしょう。
まぁ私何も聞いてないですけどね!
「あの村長、大事な事孫にしか話さないってどうかしてるよ」
「そもそもぉ、その紋章をプリシアが鑑定してみれば何かわかったりしないのかしらぁ?」
「ルル? 紋章見せてもらっていい?」
プリシアが言うと、ルルは袖を捲り腕の裏側を見せてくれます。
「これみたら買い物に行こ……? お揃いの買お……?」
ルルはみんなで一緒の物が買いたくて仕方ない様です、とても可愛いです。
「どうかしらぁ?」
プリシアは軽く椅子にもたれ掛かります、私はプリシアの言葉を待ちました。
今までは見えていたものが見えなくなったのに少し不思議な感じがします。
まぁでもなんとなく、手掛かりになるものは見えなかった気がしますけど。
「純血に現れる紋章、世界樹の加護だそうだ、それ以外は分からない」
「手掛かりは不死の魔族に会わないとですね」
「行ってみるしかないわねぇ、準備をしたら迷宮探索に乗り出しましょう」
「私とプリシアの魔術も試して見ないといけませんね」
「そうだな、でもその前に……」
私達は合図もなしにルルに視線を移します。
瞳をわずかにうるわすルルが、私の袖をぎゅっと握ります。
「レティ姉……買い物……」
大きい町が初めてで、楽しみで仕方ないのでしょう。
私はルルの頭に優しく手を触れました。
「うん、買い物にいきましょう」
「あらぁ♪ 私も何か買っちゃおうかしらぁ♪」
「まぁいいんじゃん? ついでに迷宮探索の道具も買ってさ」
思い出した様にプリシアがポンと手を叩きます。
「このブラ小さいから私も新しいの買おう」
…………あれ? 貴方が着けてるのって私のブラじゃなかったでしたっけ……?
「あらぁ♪ それなら私も新しいの見てみようかしらぁ♪」
…………べ、別に悔しくなんてないですし? 私別に小さいわけじゃないですし?
「ルル? 別に私小さくないよねー?」
隣にいるルルに話しかけます。別に肯定されたかったわけじゃありません、自信がないわけじゃないんですからっ
「私も……ボンキュッボンになる……」
「…………(涙)」
なんか私が小さいみたいじゃないですか……し、知ってますよね!? ちゃんとありますからっ!!
「よしっ! 買い物に行こう!」
「は~い♪」「お~♪」「…………はい」
なぜか落ち込んだ私を連れて、グロウフィアの町を見て回ります。
プリシアとモニカといると、私はすごく貧相に見えます……おかしいなぁ……私すぐ吐いちゃいますし、女子力低い気がしてきました……私も可愛くなりたいです……