しがない聖女は難儀な性格
「だからさ、レティシアは闇属性が使えなくなってる筈なんだよ?」
プリシアが何かを言っています、勿論私に聞こえる訳がありません。
「ふぅうえぇぇぇぇ、ぎもぢわるいですぅぅぅぅぅ」
「でもぉ、魔力は強いままよぉ?」
モニカがプリシアと何かを話していますが、私はそれどころじゃありません。
「おふぅっ……おふぅっ……し、死んじゃう、死んじゃいたいですぅぅぅぅ」
「元々レティシアは魔力は強かったからな、鑑定眼の私に四六時中ずっと魔力を供給してたんだ、私が精霊化してレティシアの体から離れたて魔力の制限がなくなった事と、魔石で宿った魔力はそのままだからと思う」
何やら重要な話をしているっぽいですが、そんな事はどうでもいいのです。
「おぱぁぁぁ、ぶるぇえぇぇぇ」←(3回目)
「レティ姉強いままだよ? 何か困った事あるの……?」
「んーないな、私もしこたまレティシアに魔力を注ぎ込まれたせいか、かなり高い魔力値が基準になってるっぽいし、レティシアと変わらない力が出せる筈だし」
ポンポンと背中をさする手、みんな優しいのに優しくないです。
私が吐く事が当たり前の様になってるのがとても悲しいです。
「ダンジョンに行く前に試してみましょぉ♪」
「もぉ馬車下りたい……ですぅ……(泣)」
◇ ◇ ◇ ◇
5日、それから5日ですよ? 信じられませんよね? 途中で寄った村の数は2つ、たったの二つです。
どういう事か分かりますか? 馬車の中で何度も寝泊まりしたんです。
寝られるわけないですよね? 意味不明過ぎて時間の感覚がなくなったぐらいです。
不死の魔族がいるといわれるダンジョンに一番近い町に辿り着く頃には、
「もぉ……なんでも……します……から、どうか……馬車だけは……金貨10枚でもいいですから……馬車だけはどうか……いいものに……して頂ければ……私は何もいりません……」
限界を超えて金銭感覚がおかしくなったぐらいです。
いえ、馬車にはそれほどの価値があります、お金を節約し、染み付いた貧乏感覚はすべていい馬車を乗る為だったのでしょう。
「あらぁ♪ レティが危ないわぁ♪ すぐに宿に行きましょう♪」
「うん…………ちょっと見た事ないレティシアだね……」←(プリシアも驚きの状態)
「わぁ……おっきい町、すごいすごい♪」←(ルルはレティシア大好きっこです)
「うみゅ~」←(馬車中ずっとモニカの元に逃げ込んだうーたん)
満身創痍とはこの事でしょう、私の瞳からは自然となにかが流れます。
こみ上げた寂寞の思い、解き放たれた開放感、私は自由です。
「うぅ……ぐすっ……ぅっく……」
「レティ姉? 町を見るのはいいから、今日は一緒に寝よう?」
「うん、一緒に寝ます……(だばー)」←(滝の様に流れる涙)
何も出来ない私は、ルルに手を引かれ宿に案内されます。
「あらぁ♪ レティ可愛い♪」
「私には本気で泣いてる様に見えるけど……」
二人も気を遣ってくれたのでしょう、値段を気にせずに一番近くの宿へと向かう三人を横目に、涙でぼやける視界ながら料金をチラリと覗きます。
銀貨2枚
あらやだお高いです♪ ←(満身創痍でも蘇える思考)
「やだぁ……こんな宿……止まれないですぅ……」
私はまた泣いた、体は限界、今すぐにでも倒れてしまいたいんです。
そう思っていても、体は動くことを拒否します、こんな宿でゆっくり出来る訳がないんです。
「せめて……銅貨で泊まれる……宿がいいですぅ……(涙)」←(さっきよりも流れる涙が多い)
「お前さ……結構難儀な性格してるよな……」
プリシアはそう言いながら、銅貨で泊まれる宿を探してくれました。