しがない聖女の大好きな仲間
私達は不死の魔族がいるダンジョンに向かう為、重大な決断を迫られています。
「よし、馬車で移動しよう」
「絶対嫌です」
「今回の馬車だとぉ、レティシアが危ないかもぉ?」
「流石モニカです、奴は魔竜より危険です」
「ルルね、ダンジョンも馬車も冒険も初めて……嬉しい」
「馬車はちっとも嬉しくありません。それなら私の冒険はここで終わりです」
徒歩で行ける距離ではありません、そんな事は地図を見れば一目瞭然です。
しかし私達には生まれついての二本の足があるのです、この足は自らの体で、まだ見ぬ場所に進むことの出来る力強い足。
それを何が馬車ですか、みんな頭おかしいですよ、そんな努力もせず目的を達成しても人間は成長しません。
目的の為に手段は選ばない? それもいいでしょう、プロフェッショナルだと思います、否定をすることはありません。だが私は断ります。
『…………』
テーブルで四人で向かい合っています、向かい合ってる筈なんですが、何故かプリシアとモニカとルルは私に目を合わせる事なく三人で目配りを繰り返します。
仲間外れですか? いいでしょう、その挑戦受けて立ちます、私が乗れる馬車は設備の整ったモニカ手配の高い馬車しか無理なんです。
それ以外はノーセンキューです、慎まなくてもお断りします。
「モニカ、馬車の用意を」
「は~い♪ レティ? ごめんねぇ♪」
「ちょっ!? モニモニ!? 裏切っちゃいやですぅ!!」
「ルル、レティお姉ちゃんに体当たりだ、なに、レティシアは優しい許してくれるさ」
「レティお姉ちゃん? ごめんね……?」
ズコン──ッッ!
「はうぅ!? る、ルル……そこ超痛いですぅ……(涎)」
傷口に飛び掛かるルルに、私の動きは止まります、魔竜にやられた傷はまだ万全ではない様です。
もうモニカとルルを手懐けたというのですか? 私が寝ている間に一体何が……!?←(皆馬車じゃないと無理だと分かっているだけです)
「さぁ一緒に行こうかレティシア、楽しい楽しい……」
「馬車の旅だ」
そう言ってプリシアはイヤらしい笑みを浮かべます。
それが私にとってどれほどの苦痛か知っている筈なのにです、信じられません。
悪魔の所業、鬼畜の考え、プロの殺し屋と言ったところでしょうか、奴は私は殺る気に違いありません。
「ぷ、プリシア……やめるんです。神はそれを……望んではいません」←(切実)
「うん、レティシア。私も望んでないよ? ただね、これしか方法がないんだ」
プリシアは蹲る私の肩に手を置きます。
「ざーんねんだなー☆☆☆」←(超楽しいそう)
「このゲス野郎……っ!!」←(超エキサイティン)
私はプリシアにひょいと担がれます。
「や、やだやだ! 行きたくない乗りたくない! 私……いやっ! 吐いちゃうっ!!」
お、女の子が吐いちゃうって言ってるのです、プリシアも女の子なら分かってくれる筈です、お嫁に行けなくなります!
「レティシア…………超エキサイティン☆☆」
「ふざけんなてめぇ! 超エキサイティンだっつってんだろっ!」←(意味不明)
私の怒りも虚しく、私はモニカが素早く用意した馬車に連れ込まれます。
「ルルをよろしく頼んだぞ、その子は自然に愛された自然術師じゃわい」
「さっき私に物理攻撃したけどなっ!」
モニカと共に手際よく場所を用意してくれた村長にお礼をの言葉を伝えます。
「レティ? 後でいっぱい甘えていいからね?」
地獄の旅が幕を開けました。