闇の聖女のエルフの町
エルフ族は耳がピンと長いのが特徴です。少し下向きだったり、上に向いていたりと個人差はあるみたいです。体系はスレンダーな人が多いですが、胸は小さな目な気がします。私も負けていませんっ
町としてはかなり小さい気がします。小さな露店を開いている人、道を歩く人はエルフ族の方ばかり。他の冒険者がいないのはかなり珍しいなと思います。町の中で見かけるエルフ族は女性の方が多く、男性は今の所見かける事はありませんでした。
森の中にあるエルフ族の町の家は木造、二階建ての家が多く作りはしっかりとしています。
私達は宿を探していたのですが、冒険者ギルドが視界に現れ自然とモニカと作戦会議が始まりました。
「どうする? いく? 今は引くべきかな?」
「難しいわぁ♪ 私達お風呂はいってないわよぉ? ちょっと恥ずかしいよねぇ?」
「でも私達は冒険者、ダンジョン帰りって事にすればおかしくはないかも。私は行きたくないけど……」
「あらぁ♪ 私もお風呂に入って着替えたいかもぉ? だってねぇ 私達女の子だもんねぇ♪」
と言う事で、私達は宿を探す事にします。
冒険者ギルドに顔を出したのは宿に部屋をとり女の子した後の事でした。
ここがターニングポイントだったと私達が気付く事はなかったです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それなら町長が詳しいが、丁度今出かけてしまったぞ? さっきまでいたんだがな」
冒険者ギルドのマスターはエルフ族の女性です。腰に剣を携えた、金髪の真っ直ぐな髪が印象的な女性です。
「そうですか……どこに行かれたんでしょう?」
昔話や伝説の噂に詳しいのは町長さんらしいのですが、丁度すれ違いになってしまった様です。私達が宿に向かわず冒険者ギルドに入っていれば会えたんでしょうか? きっと会えなかったでしょう、そう思う事が大事です。仕方なかったんです。
「…………分からない、数日で戻ると思うが……」
変な間がありましたね? なんでしょうか? 何かを言い淀んだ? 私は疑問に思いながらも、深く追及はしないでおこうと思います。何か事情があるのかもしれません。
「あらぁ? 何か言いにくい事でもあるのかしらぁ?」
っと思ったのは私だけでした。モニカにはどう見えているか分かりませんが、何かしら見える生命力に変化を感じたのかもしれません。
「いや……なんでもないんだ。まぁのんびりとしていってくれ」
言いにくい事なのかもしれません。モニカは微笑みながらも視線をマスターから外していませんでした。
「レティ♪ 行きましょうか」
「え? う、うん!」
立ち上がるモニカに促されるように私は席を立ち上がります。モニカは思い出した様に唇に手を当てて上半身だけ振り返りながらマスターに問いかけました。
「あらぁ? そう言えばここのエルフ族は女性が多いみたいだけどぉ それと関係あったりするのかしらぁ?」
「────ッ! …………いや、たまたまだ。何も問題はない」
私でも明らかに嘘と分かる反応。この町は何か隠し事をしている?
「そぉ♪ ありがとぉ♪」
私達は冒険者ギルドをあとにします。
冒険者ギルドを出ると丁度足元にぽんぽんと丸い毬が転がってきます。転がってきた方向を見ると、10代前半ぐらいに見える女の子が ちょこん と毬を見ながら立っていました。
薄いピンクの綺麗な髪色をした女の子。丸くなるように切られたショートの髪形、丸々とした大きな瞳。前髪は目の上で切り揃っている感じです。顔回りには顎の辺りまで左右の髪の毛が伸びています。耳も長めである事からエルフ族なのでしょう。とても可愛らしい女の子です。
髪色よりも濃いピンク色のリボン付きのカチューシャも可愛らしさを際立たせています。
あの子の毬かな? 私は毬を手に取り、女の子の元へと向かいます。女の子は驚いたように目を見開きました。
「はい、貴方の毬かな? 一人で遊んでるの?」
女の子の周りに友達の姿は見えません。遠くには子供達が遊んでいる姿が見えます。私はその時気付きました
このこっ!? 苛められてるっ!?
「うん、いつも一人だもん」
雷が落ちたような衝撃を受けました。こんな可愛い子が……いつも一人だなんて……世界は残酷です……。
「わ、私が一緒に遊んであげるぅ(だばぁ)」
私は手に持った毬をそっと女の子に投げました。私はそっと投げたんですよ? 女の子に向かってそっと投げたんです。
ヒュンッ! ベシッ!
私が投げたボールは何故か隣にいるモニカの顔面に直撃しました。
あっれぇ? なんでぇ?
「レティ……? どう考えてもその子にぃ 毬を投げ返す感じだったよねぇ? なんでぇ 私に毬が飛んでくるのかしらぁ?」
「え、と。なんでだろぉ……?」
「もぉ! どう投げれば私に飛んでくるのよぉ! 予想できなかったわ!」
モニカは毬を手に取り、女の子に毬を優しくふわりと投げ渡しました。
ドヒュンッ! ベッシィ!
「…………」
「あらぁ? 私魔術使えないしぃ 毬とか投げた事ないのぉ♪ 槍なら思った通りに投げられるんだけどねぇ♪」
「え? いやいや? おかしくない? なんで後ろにいる私の顔に毬がぶつかるの? 私より酷くない?」
斜め後ろにいた私の顔に毬がぶち当たりました。ぼんぼんと落ちる毬にポケットから抜け出したうーたんが乗っかります。
「うみゅー♪」
パタパタパタパタ
うーたんが毬を手足で抱えながら耳をパタつかせて飛び上がります。飛び上がった瞬間にクルンとうーたんの体が毬を中心にひっくり返り。毬が上、うーたんが下という訳の分からない状態になります。
「うみゅ? うみゅーー♪」
うーたんは自分が下を向く体勢であるにも関わらず、そのままパタパタとボールを上に乗せている様な体勢で飛び続けます。
「ちょっとまってちょっとまって!? それどうやって飛んでるのっ!? 毬が勝手に浮き上がってそれにうーたんがしがみ付いてるみたいになってるけどっ!? あぁなんて言えばいいのっ!? とりあえず気持ち悪いっ!」
「あらぁ♪ 器用ねぇ♪ 可愛い♪」
「可愛いデスカッ!?」
「うみゅ~♪」
うーたんはその気味が悪い体制のままクルクルと横回転を始めます。完全に未知の魔物です。頭おかしいです。
ビュンビュンビュンビュン グルグルグルグル
「みゅっふっふっふっふっふ」
鳴き声まで気持ち悪いです。これうーたんですか? これなんですか?
「うえぇぇぇん モニカぁ……うーたんがうーたんじゃなくなっちゃったよぉ(泣)」
「レティ、大丈夫ぅ♪ 私はぁ私のままよぉ♪ うーたんはぁ……これなにかしらぁ♪」
「ふふ、ふふふふ」
モニカに抱きつきながら涙を流す私と困った様にうーたんを見るモニカ。その中心で空を逆さになって飛びながら回転するうーたん。うーたんだけでも泣いてしまいそうな光景を見ながら、女の子がクスクスと笑います。
「クスクス、あはははは♪」
モニカにしがみつく私に トコトコ と女の子は嬉しそうに近寄ると。
「あはははっうふふふふ」
モニカに抱きつく私に抱きました。
「お姉ちゃん。ありがとー」
ありがとう? 何がですか?
それが私達と女の子の初めての出会いでした。